RWC2023フランスへの準備 プールAの見どころ(開幕まで80日)

今日は6月20日 開幕まで80日となりました
第二回目はプールAの事前予習です。

開幕戦はフランス対オールブラックスという因縁の大一番になりました。

1,心的外傷(PTSD)は癒やされたのか?

ニュージーランド人にとってオールブラックスとは何か?
答えは「全てである」(フランス革命シェイエスの言葉のもじり?)

ニュージーランド人は概ね素朴で優しい、そして控え目で小心者である。そんな国民性のニュージーランド人が世界に誇れる唯一のもの、それがオールブラックスなのである。他には国民の数を超える羊の数ぐらいしか無い、ワールドカップでオールブラックスが世界一になること、 それこそ存在の証なのだ。

20世紀初頭にラグビーの国際試合が始まってこのかた80年に渡り連戦連勝、ライオンズの遠征もらくらくと退ける、この常勝軍団となっても、長らく世界一の自信は持てないでいた。それがワールドカップという舞台が出来たことでやっとその場ができたのだ。1987年の第一回の栄光の優勝(決勝相手はフランス)はそんな重要な出来事だったのであった。ところがどっこい、それ以来ワールドカップでの優勝はなかなか実現できなかった。その間24年である。なぜなら、今回こそ優勝というときに限って、必ずフランスに足元をすくわれたからだ。

1999年ウェールズ大会の準決勝、トゥイッケナムでのフランスの逆転劇は衝撃的であった。https://www.world.rugby/match/1891

しかし、2007年フランス大会のカーディフでの準々決勝の敗戦は、悲劇的であった。https://web.archive.org/web/20090324025712/http://www.rwc2007.irb.com/home/fixtures/round%3D101/match%3D10114/report.html

この敗戦は多くのニュージーランド人に心的外傷(PTSD)を引き起こしてしまった。その影響は大きく経済や政治にも影響を及ぼした。次の大会2011年は自国開催となるが、その4年間は傷を癒やすには短すぎた。大会が近づけば近づくほど不安がまた頭をよぎり始める。プール戦ででジャパンやフランスを破るなど順調に勝ち進んでも、なんのめぐりあわせか、決勝戦はそのフランスが相手になってしまう。この大会フランスはトンガに敗れるなどガタガタだったが、急に息を吹き替えしてきたのだ。しかも不吉なことにオールブラックスの要であるスタンドオフが次々に負傷していく。ニュージランド国民が癒やしかけていた心的外傷を再発させてしまうことになってしまった。結果はほんの僅差でオールブラックスが勝利し優勝をかざったが、これだけだとまだ完全に傷が癒やされたとは言い難い。http://www.rugbyworldcup.com/home/matches/match%3D11235/report.html

心的外傷(PTSD)がほとんどなくなったのは、さらに4年後の2015イングランド大会での連覇達成まで待たねばならなかった。

2、我が辞書にトラウマはない?

一方のフランスにもワールドカップでは忌まわしき敗戦の記憶がある。
しかし、フランス人の国民性からいって、ニュージーランド人と違ってそれがトラウマになってるなんてことは全く表面にさえでてこないのだ。

事件が起こったのは、2007年前回の自国開催の開幕戦である。対戦相手はアルゼンチン。自国開催フランスの屈辱の敗戦である。アルゼンチンのコンテポーミ、ピショット、エルナンデスが大活躍し、アルゼンチンに完全にやられてしまい、主役の座をうばわれてしまった。

この大会、さらに進んでいくとフランスは前記のようにオールブラックスを破り、すわ優勝かと思いきや、こんどはイングランドにやぶれ、さらに3位決定戦でまたもやパリでアルゼンチン2度めの敗北をしてしまうというのだった。

普通の国民性ならば、これはトラウマになってしまうところである

しかしフランス人はニュージーランド人とは違う。個人主義的で、自己主張が強く、少しばかし気位が高い。もしもその様な心配が心の隅に微かにあったにしても、外面には決して表しはしない。

そのフランスがアルゼンチンに借りを返す機会が回ってきた、舞台は2019年の東京である。この大会のフランスは若手中心で前評判が良くなかった。見ている私達はフランスが負けたらどうしようと気をもんでいた。しかしそんな気をもんでいたのは私達日本人のファンだけだった。フランスはロペスのドロップゴールが決まって、鮮やかにアルゼンチンを退けた。

ワールドカップの舞台のフランスだけは、毎回予測がつかない。やってみなければわからない。不思議なチームである。最強と思われても調子を落とせばトンガに破れたりしたりする。そして、そんなチームがいきなりオールブラックスを破るのだ。個人主義で自己主張が強くチームがバラバラなることがあっても、あるきっかけでチーム一丸となれるのだ。一丸となったフランスは強い。

そんな2国が開幕戦で対戦する。このゲームは重要である。ここで1位に抜けか2位抜けが決まってしまうからであある。どちらにしてもサンドニの準々決勝対戦相手はアイルランドか南アになる(アイルランドと南アのゲームは9月27日サンドニ)。これを突破できれば、両国が決勝戦で再戦する可能性が高い。


3,ナミビア、ウルグアイの挑戦

もう一つの興味は3位争いである。現在イタリアは敗戦続きで完全に6ネイションのお荷物に成り下がっている。しかし腐ってもティア1である。このイタリアにウルグアイとナミビアが挑むのである。ウルグアイとナミビアといえば、両チームとも2019WCの釜石で名を上げ、しっかり日本人の心を掴みとったチームなのだ。

最初にイタリアに挑むのがナミビアだ(9月9日サンテティエンヌ)。

 

 

 

 

ナミビアは1999年以来7大会連続出場。しかし、まだワールドカップでの勝利がない。2019日本大会では釜石でのカナダ戦も台風で流れてしまった。しかしナミビアは宮古市での交流会をひらいて見せた。地元の心を確実に動かし、対戦を実現させようとした市民運動が盛り上がったが、それはコロナで実現ははさせなかった。それ以来のワールドカップの本番だのだ。ナミビアの試合は、釜石、宮古では盛り上がるに違いない。

次にはフランス戦を終えたあとのウルグアイがイタリアに挑戦する(9月22日)。

ウルグアイは2019年は釜石でのフィジー戦に勝利を果たし世界中を感動の渦に巻き込んだ。一生懸命ウルグアイの国歌を覚えた子供達はもちろん、その後のスタジアムでも行く先々で日本人の心をがっちり獲得してしまった。スカイブルーのウルグアイのジャージは飛ぶように売れて、オフィシャルショップでは相次いで品ぎれとなった(私も欲しかった)。そんな中スポーツライターの藤島大さんはどこにいくのも自慢げに嬉しそうにウルグアイのジャージを着ていたのを思い出す。

 

 

 

 

そして、ウルグアイとイタリアの対戦は特別だ。両国には共通の独立の英雄が居る。ガリバルディだ。しかも試合が行われるニースはガリバルディの出身地でああり、フランスとイタリアで何度も領有権が移動した街なのである。ぜひともガリバリディの「赤シャツ隊」にちなんで赤シャツを着て両国を応援したい。もしかしたらファーストジャージの色が似ている両チームなのでどちらかもしくは両方がセカンドジャージになるかもしれない。セカンドジャージは赤かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

この両国はイタリアとの対戦を終えたあと、9月27日にリヨンで直接対決する。このゲームはどちらも負けられない。

そしてもちろん、ウルグアイもナミビアも王者オールブラックスに挑戦する貴重な機会があるのだ。このゲームは勝敗ではない。オールブラックスに対して最後まで闘志を見せられるか、トライを何本あげられるかである。オールブラックスの方にも同様に最後まで手を抜くことのないラグビーが見せられるかが問われるだろう。ナミビアには日本の145点の悪夢を上回る142得失点差(相手はオーストラリア)という忌まわしき記録がある。ウルグアイ、ナミビアはどこまで存在を見せられるのか注目である。

ニュージーランド ナビビア 9月15日トゥールーズ
ニュージーランド ウルグアイ 10月5日 リヨン

4,フランス対イタリア、深い両国関係の歴史

当然だが6ネイションでは何度も対戦してるフランスとイタリアのゲームもわすれてはならない。10月7日のリヨンでのゲームである。

この両国の戦いは、事前に両国の歴史の勉強をしておくとより楽しめる。

世界史的には、両国の間にはさまざまな紛争や事件があった。そもそもは、カエサルガリア遠征がある。そしてフランク王国。中世にはアナーニ事件教皇庁のアビニョン捕囚ルイ12世、フランソワ1世がイタリアに攻め入ったイタリア戦争を起こすが、その結果イタリアのルネッサンスがフランスで開花した。レオナルドアンボワーズに招かれ、アンリ2世の王妃となったメディチ家のカトリーヌがフランス料理や文化をもたらした。しかし、そのメディチのカトリーヌはサンバルテルミの大虐殺をやらかす。コルシカ島出身のナポレオンはイタリア遠征でジェノバなどから大量の略奪品をパリに持って帰ってきた。さらにはナポレオン3世のフランス軍はいつまでもローマに居座っていた。

最近の両国の関係も芳しくない。2006年にはサッカーワールドカップ決勝で「ジダンの頭突事件」が発生する。さらにEU内ではブレグジッドや移民問題で両国の意見の食い違いがああった。現在のイタリア極右メローニ首相マクロン大統領は都度あるごとに批判的な発言をやり合っている。

そんなフランスとイタリアであるが、舞台はラグビーのワールドカップである。10月7日は勝敗に関わらずファン同士での友好を深めわかり会える夜にしたいものだ。

 

 

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