6ネイションズ 第2節 レビュー

アイルランドーフランス  32−19(HT22−16)

 

世界ランク1位のアイルランドとフランスの一戦、凄まじくレベルの高い一進一退の戦いが繰り広げられた。

「力」と「スピード」、「知力」と「閃き」、「精神性」と「技能」、「冷静さ」と「熱さ」、「偶然性」と「必然性」、「個人技」と「組織プレー」、「ミリ単位の細かな攻防」と「グランド全体を使ったワイドな攻防」、「リズム」と「うねり」などなど、スリリングで、スペクタクルな様々なラグビーの魅力が凝縮されていた。

それらのすべてがレベルの高い次元で次から次へと繰り出される。息つく間がない。それらは、眩いばかりで、もはや神々しささえをも感じさせられる。

トライをゴールライン寸前で阻止されたアイルランドがその後のGLドロップアウトからのサインプレーを決めれば、フランスは自陣のアンストラクチャーからシャンパンラグビーを思い出す様な連携を見せ、プノーがトライを返す。今度は、アイルランドのWTBジェイムスロウがタッチランを激走。タックルをされながらも見事なボディバランスで左隅に紙一重のトライをあげる。さらに追い討ちをかけようとゴール前でSHデュポンが相手の体にしがみつき、体の自由を奪い取ってアイルランドの追撃トライを寸前で許さない。これは従来のスクラムハーフの概念を全く逸脱しているプレーである。

そんな一つひとつのプレーの行方に、満員のアビバの観衆が逐次敏感に反応する。

歓声をあげ、そして、次の瞬間には悲鳴をあげる。

アイルランドファンが、応援歌の「フィールドオブアセンライ」を大合唱すれば、ダブリンにはいつもより数多く駆けつけたフランスファンも微妙なプレーに判定に大ブーイングを浴びせかける。

フランスのアトニオのシンビンはあったが、全体で反則も少なく、ミスがないのでスクラムも少ない。両チームともインプレーが多く、ボールが動き、紙一重のプレーが続き目が離せない。あっという間に前半が終了してしまった。

後半は一転して、膠着状態が続いた。結果的にはベンチワークでこの状態をどの様に打破するのか、またはしないのかで勝敗が分かれたと思う。

セクストンはプレーもさることながら精神的な支柱である。私は、セクストンの交代の時間帯によって勝敗が左右されると戦前は予想していた。予感が当たり、予定より早いセクストンの交代となってしまった。しかしそのあとは予想に反し、その膠着状態は全く変わらなかった。全く心配はなかった。代わりのロスバーンも難なく効果的キックを蹴って見せ、パスを放って見せた。

アイルランドの鉄壁なディフェンスの前に攻めきれないフランス。FBのトマラモスは仕方なくDGを決める。しかし、その直後にそのトマラモスからジャリベールに交代になる。これは多分予定の交代だったのだろうが、そのタイミングが悪かった。

フランスにとっての唯一の誤算はこのメンバー交代のタイミングが効果的にならなかったことだ。ガルティエは、ジャリベールの使い方をどうするのかを探っているのではないだろうか?イタリア戦ではヌタマックからジャリベールに変えることで流れをとり戻し勝利に導いた。この日ヌタマックを残したまま、ジャリベールを投入したが、それだけではアビバスタジアムの大観衆も前では、流れを変えるまでにはいかなかった。

一方もはやアイルランドはセクストンの神通力だけではないチームになっている。アイルランドのディフェンスは落ち着きと自信に満ち合ふれ、たまさかタックルが外されることがあったとしても、全員で全力で次をカバーをすることで、相変わらず全く崩れない。

結局フランスは後半はドロップゴールの3点しか追加点をあげたに過ぎなたかった。一方、リングローズの個人技のトライで得点を重ねたアイルランドが勝利。フランスの連勝記録はついに途絶えた。

連勝はいつかは途絶えるのであり、余計な緊張感は逆にプレーを狭くする。W杯に向け、この時点での敗戦はむしろフランスによっては良かったのではないだろうか?

この後フランスは1週開けて絶好調のスコットランドをホームに迎える。ガルティエはどの様にこの1戦を迎えるのか大注目になる。

 

スコットランドーウェールズ 35−7(HT13−7)

 

ウェールズの低迷は深刻で傷が深い。ガットランドは若手のFW陣に大きくメンバーを変えて臨んだがこの日も勝利できなかった。

それよりも何よりも試合相手とタイミングが一番悪かった。イングランドに3連勝し、ノリに乗ったスコットランドが地元マレーフィールドに戻ってのゲームであっては、他のチームであっても勝つことは容易であるはずがない。

この日の、いやこの日も、スコットランドはノリに乗っている。中でもフィンラセルはノリに乗っている。針の目を通す様な、手品師の様なオロードパスが右に左に放たれ、次の瞬間にはトライが決定的になっている。

2連勝のスコットランドは次の対戦はパリへいきフランス戦となる。そしてアイルランドとのトリプルクラウンをかけた一戦が3月13日の本拠地マレーフィールドである。このままいけば、連勝も考えられると思う。

一方のガットランドによるウェールズの復活の道は険しいままである。

イングランド イタリア 31−14(HT19−0)

FBカプッツオの活躍だけでなくフランス戦でもフィジカルで互角の戦いを見せた急成長のイタリアが、調子のでないイングランドに対してどの様な戦いを見せるのか、ひょっとして初勝利はあるのかが注目された。もしくは調子の波のあるイングランドがその実力を爆発させイタリアを圧倒、最後まで引き締まったゲームができるのかが注目された。イングランドはSOに久々にファレルキャプテンを据えるという布陣を張ってきた。

しかし、私のそんな期待はすべて裏切られてしまった。このゲームは全くレベルの低いガッカリの一戦であったと言うしかない。

イタリアはスクラムでプレッシャーを受け、フィジカルでも劣勢、キックの精度でもイングランドに差を見せられて自陣に釘付けとなる。反則からラインアアウトモールであっさりトライを献上してしまう。イングランドはウィリスの先発起用が当たった形となった。

さらにフランカーのラマロキャプテンがイトジェの激しいあたりで太腿を痛め負傷退場となれば、ディシプリンの乱れを引き締める手立てもなく、続いてNO8のカローネがシンビンになってしまう。その10分間、開始28分には、あっさりと14−0、35分には19−0となる。イタリアにはゴール前のディフェンスに全く粘りが感じられない。攻撃でも単純にパスを回すだけなのでただ単に後退するだけの状態。

しかし、それがこの点差で住んでいるのは、イングランドも不用意な反則とミスがあるからである。どちらもどうも締まらない。

後半の興味はイングランドが引き締め、手を抜くことなく、得点をどこまで伸ばすのか、ディフェンスでも最後まで手をに抜かずにイタリアを無得点に抑えることができるのかを見たいと思った。

ところがどっこい、後半開始早々、単純にBKに回さずにFWで当ててきたイタリアに対し、イングランドのディフェンスが受けに回るとそのままあっさりとイタリアが得点をあげてしまう。私の期待は粉々に砕けた。

その後も両チームの反則が多く、キャッテンのファレルも自らイタリアのタックルにイラついてくんずほぐれずの取っ組み合いも始めてしまう始末。

その後は今度はイタリアがゴール前で反則してイングランドにペナルティートライを得たえ、2つ目のイエローカードも出てしまう。

全く散々なゲームであって、好調と思ったイタリアにもガッっかりしたし、チームの引き締めができていないイングランドには、もっとガッカリのゲームだった。

イタリアが後半開始早々のFWを前に出す攻撃を最初から80分続けられれば、初勝利もあったかもしれない。イングランドもチームが引き締まってひたむきなラグビーに徹すれば、76−3くらいでイタリアを圧倒していてもおかしくないゲームだった。イングランドはチーム全体に高慢さ、慢心が見え、謙虚さや一途さが見受けられない。

唯一見るべきものといえば、7番ウィリス、12番のローレンスや21番ミッチェルなどデビュー組の今後の希望が見えたことだけだった。

 

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