ウィルチェアラグビー、ラグビーたる理由 (フランス戦)

15人でもない。楕円球ではない、ノックオンもない、スローフォワードがない、オフサイドがない。タイムアウトがある。ゴールポストがない、そもそもキックがない(当たり前か)、という意味でフットボールですらない。

それでも、そこに繰り広げられたのは、まさしくラグビー。
ラフビー独特の匂いを感じる。

なせなのか。激しいコンタクトがあるからなのか、確かにそれは一つであろう。しかしそれだけではない。それならば、その独特の匂いはどこから表出されているのか。

それは、ピッチの中の多様性の匂いであることに気づいた。

フランスチームにおける、TJペネレラに似ているフランスの21番イベルナ選手のステップ(チェアの動きはステップとしか見えない)とスピード。3番ナンカン選手の体格を生かしたプレー。(彼は両手が肘まで染まないが、その両手で小刻みにホイールを操作し、ロングパスをキャッチし、巧みにパスを放つ。15人制でも間違いなく3番のタイトプロップの体だ)
それらの個性がまさにオールフォアワン、ワンフォーオールとなって、(流行った言葉で言えば「ワンチーム」となって)、一人のため、、みんなのために、自分のできる最大限の力を発揮する。勇気を持って立ち向かい、自らの体を貼ったプレーを行う。これこそまさしくラグビーである。

JAPANはこのゲームこの個性豊かなフランスチームに苦戦を強いられた。
しかし、接戦の末、第四ピリオドに逆転し勝利した。

もちろん、池崎選手や池選手のようなスーパースターの活躍があった。しかしフランスに勝利したのは、JAPANチームの持つ多様性のおかげであった。
初めて女子で日本代表となった倉橋選手を含むユニットの活躍が、第四ピリオドに流れを変えたのだ。
JAPANチームの持つ多様性は、フランスチームの多様性を上回った。

15人制ラグビーももちろん多様性がある。冷蔵庫のごとき体をもつような巨体の選手、逆に小さいがすばしっこい選手。体の強い選手、足の速い選手。キックが上手い選手。ゲーム中ボールに一度も触らない選手もいる。生涯一度もトライしたことのない選手もいる。WC2019では、肌の色、国籍の多様性も話題になった。それらが「ワンチーム」となってその個性を発揮するのがまさしくラグビー。得点を取った選手がヒーローでなく、自分の持つ個性の力を発揮した選手全てがヒーローである。

ウィルチェアラグビーの選手の多様性は15人制のそれ以上である。障害の重さもまちまちである。そしてなんと男女混合である。さらにベテランから若手までが活躍できる。これが見た目での15人制以上の多様性を醸し出す。

さらに、ルールを知り尽くした知性を生かしたプレー。その個性をいかに組み合わせるのかのベンチの知恵比べ。流れの読み、時間配分。15人制にない要素が魅力が、ウィルチェアラグビーには詰まっている。

そこに繰り広げられるのはまさしくラグビーである。

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