花園準々決勝結果 凄まじきは高校ラグビー (その2)

東福岡ー東海大仰星

 

その問題の第四試合です。両校は86回大会、91大会、96回大会とほぼ5年おきに、何度も決勝で顔を合わせている両校です。しかし、福岡東はこのところ定位置だった決勝まで駒を運ぶことなく、この仰星や桐蔭などに阻まれてます。

キックオフ直後から「鍛えられたミスのない連続攻撃」対「反則をしないディフェンス」の我慢比べの緊張の連続です。お互いに15フェイズ、20フェイズは常に当たり前に継続します。そしてその結集としての苦労してゴールラインを割ることができた時にやっと得点がされます。しかし、それだけではなくその間の隙を狙っての見事な独走トライなども見られ、見所たっぷりでした。力はまさに拮抗して、その中で才能あふれる各タレンドはその力を見事に発揮しました。(中でも仰星の大畑君の快速など素晴らしいものでした、ひょっとしてあのレジェンドの大畑選手に息子がいたのか?とネットを探って見てしまったくらいです。)

実はここに至るまでの「ヒガシ」の戦いぶりはなぜかいつもと違う様でした。連続攻撃の中でハンドリングのミスがあり、爆発的で圧倒的な自陣からのアタックがなかなかできていなく、どうしたのかと思っていました。しかし「ヒガシ」の中にはそのDNAがしっかり眠っていました。仰星の素晴らしいラグビーに触れることで、その眠っていた「ヒガシ」のDNAを揺り動かし、毎年花園で見せる「ヒガシ」の連続フェイズ攻撃そのものを、ついに目覚めさせてしまったと言って良いと思います。

その過程で勝負のアヤとなってもおかしくない様なアクシデントが双方にありました。引き離すトライの際に怪我をしエースのキッカーが退場、足への疲労が蓄積してつった足を引きずっての交代劇、脳震盪の安全性のための無念の交代劇、途中ピッチ上で二人のメンバーが負傷し蹲り、十三人での守りを強いられ守り抜いたた時間、そして代わりに出場した選手が活躍するなど、それだけでも1話のドラマになる様なプロットです。

双方とも全く停滞することのなく攻めに攻め守りに守りにく結果、気力や気迫はエスカレートしますが、高校生の体力はすでに限界を超えていました。怪我が多くなるのも必然です。

後半16分からは21−21で全く得点動かず、力が拮抗したままとなります。それが30分を過ぎても一向に止まることはありませんでした。ラグビーは反則では終わりません。結果的には後半だけで48分(前後半合わせで80分)のゲームになりました。

30分を過ぎてからも「ヒガシ」には何度も得点のチャンスは訪れました。仰星はゴール前でついに反則を犯してしまいました。「ヒガシ」がPGを決めればサヨナラですが、しかし「ヒガシ」の頼れるキッカーは肩の負傷でピッチにはいません。そこで「ヒガシ」は連続攻撃を仕掛けますが、ゴールライン手前で幾度となく仰星のディフェンスに阻まれます。今度はキックパスからコーナーフラッグ隅にボールを押さえホイッスルがなり、これでノーイドかと思いきやアシスタントレフリーはノーボールタックルの判定でノーゴール。さらにはノックオンなどが仮にあっても両チームは、ターンオーバーで連続攻撃がすぐさま始まり、その後アドバンテージはオーバーとなりゲームはさらに継続します。幾度となくミスなく連続攻撃でお互いのゴール前まで攻め込みながらゴールを割ることはかないませんでした。30分を過ぎからのち18分間もその緊張状態が続きました。

得点は後半途中の21−21のまま、トライゴールも一緒なので引き分けです。このゲームの敗者はいません。しかし、まだ抽選が行われたわけではないのに、試合後の両者の表情は対照的でした。止めようとしても涙が溢れる暁星に対し、出し切ったものだけが浮かべる特権たる明るさの少しうかがえる表情の「ヒガシ」のメンバーたち。

その後、両チームがピッチを去った後で事務局で抽選が行われた様でした。無言で再度タッチ際に現れた両キャプテンは、そのまま全く表情を変えずにそれぞれの監督と一緒にピッチを後にします。

まだ抽選の結果はわかりません。

しかし、突然、女性の場内アナウンスが無情にも無人の花園ラグビーに響きます。

「大会規定により、抽選の結果、5日の準決勝に進むのは東福岡高校と決定しました」

もちろん、無人のスタジアムですから、どよめきや歓声は一切起こりません。事務的なアナウンスが流れた後も、何も変わらないスタジアムがそこにありました。

こういう時、「延長戦をやっても決着をつけるべき」という意見をよく耳にします。しかし私は、力を出し切っって戦ったこの両者に、これ以上の続きのラグビーを続けさせるのは酷であり、周りのエゴではないかと思いました。引き分けでよかったのではないかと思います。終わった後すぐではなかなか難しいかも知れませが、この引き分けという結果をお互いに受け入れなければなりません。これからの人生で背負って生きていかなければなりません。

そのには敗者はいません。両チームとも勝者なのです。

 

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