ラグビーと音楽 イングランド応援歌 SWING LOWの秘密 秘密結社地下鉄道の話

イングランドラグビーの応援歌としてすっかり定着したSWING LOW ですが、これが黒人霊歌であることはごご存知でしょうか、ただ単にスタジアムで歌って楽しむのも良いですすが、できればこの歌に秘められたアメリカ黒人の悲しい歴史を知っておくべきと思います。トイッケナムでもう8万人の大合唱であっても、ほんの一握りの人しかこの歌の本当の歴史をわかっている人はいないかと思います。

スタジアムで歌われるのは、だいたいが、コーラスの部分だけです。

Swing low, sweet chariot,
Coming for to carry me home,
Swing low, sweet chariot,
Coming for to carry me home.

本当はこの前に1番の歌詞があります。この部分は黒人霊歌やゴスペルソングによくあるコールアンドレスポンスで歌われます。

リード I looked over Jordan, and what did I see?
全員 (Coming for to carry me home)
リード A band of angels coming after me
全員 (Coming for to carry me home)

米国のオクラホマを流れるレッドリバーを、「ヨルダン川」に例えて歌ったものです。ヨルダン川は、ヘブライ語聖書に記された、神がイスラエルの民に与えると約束した土地「約束の地」の東を流れる川です。チャリオットは、旧約聖書に出てくる預言者エリヤが乗っている戦車のことです。宗教的な要素が多いです。

この曲は19世紀の中頃、今は米国オクラホマ州のあたり(当時はまだオクラホマ州はなかった)で、ウォリスウィルスによって書かれました。まだゴスペルが一般になる前から黒人霊歌として歌われました。

でもそれだけではありません。

ウィリスは北部の自由人です。

しかし当時、南部には奴隷制度が残っていました。川を渡りきってさえしまえばそこは自由の地、約束の地です。辛い労働と生活に疲れ果てた南部の黒人は夜の闇に紛れ、次々に川に飛び込みます。しかし、無事に北部に逃げられるものは少なかったと言います。

そこで、こういった南部からの逃亡者を支援する組織として、「地下鉄道」という秘密結社ができました。

秘密結社の「地下鉄道」は、南部の白人に見つからないように、合言葉や隠語使って活動していました。
例えば、鉄道=北部までの逃走路。駅、停車場=匿うための宿屋。乗客=逃亡する黒人。車掌=支援者 などなど。

この、Swing low, sweet chariotの歌も、「地下鉄道」の活動での秘密の歌として使われることになります。

川の向こうから、安全を確認した「車掌たち」がこの歌を歌い始めます。川のこちら側で身を潜めた「乗客」はその歌を頼りに川に飛び込むことで「車掌」と無事落ち合うことができました。そして無事に「停車場」をたどって遠くはカナダまで逃げおおせたということです。

 

いつの間にか、原曲とは全く関係ない、イングランドの応援歌になってしまいました。ノーテンキにスタジアムで歌って騒ぐのも良いけれど、時には歴史を知ることも重要です。

 

ちなみに、バンドオブエンジェルという一節もありますが、これは「天使の群れ」のことで、「エンジェル」といいうロックバンドのことでは全くありません。(ちなみにロックバンドのANGELは1970年代に活躍したアメリカのバンドです。先日活動停止を宣言したKISSのジーンシモンズが見出したバンドです。ロゴがイカしていましたが、ちょっとアイドル路線が気になったバンドです)

 

こちらも参照ください

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です