逃げるフランス人 

年末から正月のニュースを賑わした、元会長ゴーン氏の逃亡事件には唖然とした。世の中が中東問題などで緊張している中、あまりにもノー天気で非常に呆れてしまう。拘置所からの保釈の変装姿を思い出すが、全くギャクマンガそのものとか言いようがない。

フランス史上有名な逃亡事件として、3つ思い出した。三つとも非常に漫画的でノー天気で呆れてしまうのは同じである。

1、ヴァレンヌ逃亡事件

これは世界史上非常に有名な逃亡事件、フランス革命の最中、ヴェルサイユからパリに連行されていたルイ16世と王妃マリーアントワネットがオーストリアへの逃亡を企て失敗するという事件である。この事件をきっかけにフランス革命が激化し一気に共和制、恐怖政治に向かうかことになるのだが、お嬢様で世間知らずのマリーとぼけっとしたルイ16世の間にどんな会話があったかを想像するとどうしても笑えてくる。

マリー「こうなったらもうに逃げるわよ」
ルイ「どこに逃げるんだい」
マリー「どこってもう。私の実家よ。兄さんが途中まで迎えに来てくれるって」
ルイ「どこまで来てくれって、バレちゃうでしょ」
マリー「ヴァレンヌってとこよ、名前が「バレぬ」だから、だ・い・じょ・う・ぶ。」
ルイ「今日は遅いから明日にしようよ」
マリー「何言ってんのよ、もう準備はできてるわよ」
ルイ「いつの間に準備したんだい」
マリー「全部準備するのって、もう大変だったんだから」

マリーは家裁道具一式、お気に入りのドレス、宝石、さらに高級ワインの樽もすでに準備してました。名使いや道化も連れて、馬車の隊列は数十台になったと言います。荷物が重過ぎて馬車はゆっくりしか進めません。

しかも逃走の最中にあちこち寄り道します。

ルイ「あ、あそこの角曲がったとこは友達の家があるんだけど、ちょっとよってってもいーかな」
マリー「しょうがないわね、ワインがあるなら私も寄っていっていいかしら」
ルイ「そうしよー、そうしよーよ」

どんどん到着が遅くなる

そして、集合時間の午後4時を大幅に過ぎて、ヴァレンヌの村に到着。
オーストラリア軍はしびれを切らして、すでに自国に撤退した後であった。

ルイ「静かだね」
マリー「何かの手違いよ、どこかに隠れてるのよ」
ルイ「そうかもね」
マリー「あなた、ちょと私の兄さんが来ていないかみてきてよ』
ルイ「わかったよ、みてくる、待っててねー」

ルイ 「オーストラリアの人来てなかった」
村人A 「さっきまでは大勢おったがのう」
ルイ  オーストリア人 どこへ行ったか知らない?」
村人B 「知らねーよ(なんか怪しいやつらだ)」
ルイ 「オーストラリアの人なんだけど、こっちへ来てない?」
村人C「お、お前は国王でねーか。つ、捕まえろ」

そして捕まってしまいました

2、アンジュー公ルイ逃亡事件

100年戦争でフランスはクレンシー、ポアティエの戦いとイギリスに2連敗。ポアティエの戦いでは、フランス王ジャン2世がイングランド軍に捕まり、多額も身代金を要求されるという事態になってしまう。当時の戦争は王族が気晴らし程度のゲーム感覚で行なっていてようで、ジャン2世は囚われのロンドンでも客人扱いで快適に豪遊していたという。国内に残され革命も勃発し始め、真面目で戦後処理に奮闘する息子のシャルルと、のんきなジャン親父のやりとりがどうだったか、これも想像すると笑えてくる。こちらで逃げたのは見代わりになったシャルルの弟、アンジュー王ルイである。

囚われの身のジャンと息子のシャルルの会話

シャルル「お父上殿、身をして案じておりまする。何卒もうしばらくご辛抱を」
ジャン2世「わしゃ、大丈夫だがや」「ゆンベはよう綺麗なねーちゃんと一緒で楽しかっただが、しかしワインだけはまずくていけん、すぐに40樽ぐらい送っておいてや 「明日は、うさぎ狩りにもいくことになっとうと」
シャルル「…リーチャード王からの要求書を確認しましたところ、あまりにも傲慢、多大でとても呑めるものではなく、金も苦慮できず、やっと三部会を招集にこぎつけましたが、何しろマルセルというものも、この機に革命騒ぎを起こしまして。お父上どの、憎っくきリチャードの要求内容をご存知ですか?」
ジャン「あれなー、あれはわしがとうにサインしてもーたがな」
シャルル「ご、ご冗談を(まさか)」
ジャン「ワインだけは忘れんといてえ」

シャルル「イングランド国王リチャード殿、誠に恐縮ではありますが、先日の我が父の返事は取り消させていただきます。改めてわが弟アンジュー公ルイをはじめ代わりの人質40名を差し出しますので、お父上の身を引き渡しいただきたく存じます。身代金は一度にはお支払いしたすことはできませんが、数年のローンということで何卒、何卒ご勘弁を」

そしてやっとリチャードのOKが得られます

シャルル「お父上、やっと準備が整いました、迎えを遣わしますのですぐにお戻りを」
ジャン「そうさなー、昨日はついに若いベッピンにふられてもうたしなー。も、そろそろ帰るとするか」

そして、フランスにヒョコヒョコ帰ってきます。

その後代わりの人質だったルイが逃げます。
逃げ方は簡単、イングランドの特別の計らいで2年ぶりに身柄をロンドンからカレーに移されたその時。さらにブローニュまでの外出が許されます。若い(二十歳)のルイには結婚したばかりの妻がいました。ルイはこの時を待っていました。

ルイ「(のんきな親父に勝手な兄貴、もうやってられねー、俺は逃げる。そして勝手に生きる)」
そしてそのまま簡単に逃げました。国際事件にも発展しかねない行動です。

この後のジャンの行動が傑作です。

ジャン「わるいこととしてもーたなー、わしの息子のことで怒ってるんでねーかなー(どうすべーか、そうさなー、わしがまたロンドンに行けばよかっぺよ。他のベッピンもまだまだ何人も待ってるでよ)」

そうして
ジャンは反対を押し切って一人でまたロンドンに戻ってしまいましたとさ

シャルル「(絶句)」

 

 

3、アナーニ事件

 

登場人物は日本人にとっては事件の名前も実にコミカルだし、登場人物の名前もコミカルに聞こえます

教皇ボニファティウス8世:非常に傲慢で独りよがりでも気の小さい性格
シアーラ:ローマの氏族コロンナ家いつも一族のことをあっしらと言うのが口癖ギョームドノガレ:国王の官僚でいつも責任逃れを考えている

 

フランス国王は財政難で困っている。
これまで教皇の言うなりに何度となく十字軍を派遣したが、国内の金を使うばかりで国庫は空である。協会からも税金を取ろうとしすると、時のローマ教皇ボニファティウス8世の怒りを買います。

 

ボニファ 「フィリップは破門じゃ」

フリップ「破門だと、破門なんて痛くも痒くもないワイ。ノガレよ。教皇を捕らえよ」
ノガレ「は、はい、仰せの通りに」

ノガレ「(困ったな、えらいこと受けちゃったな。そうだ、ローマの転んだ家、いやコロンナ家を利用ししちゃおう)」

ノガレ「シアーラ、お前の家はボニファに仕返しをしたく思っているであろう」
シアーラ「あっしらね、こないだも実はやってやったんだ、フランス国王の手助けがあればこっちのものさ、あっしらにませてて下さんせ」

コンナ家の手助けでフランス軍がローマを包囲します。
これを察した、ボニファが逃亡します。逃亡先はボニファの生まれ故郷の穴に、いやアナーニに。

そこに、ノガレとシアーラが追いかけますそしてついに隠れ家を見つけ、ボニファを見つけ捉えます。

アナーニの穴の中で、ノガレとシアーラの言い争いになります。争いの元は、シアーラはすぐにここで殺すべきだと言います。責任逃れをしたいノガレは教皇は殺さずにフランスに連行し裁判にかけるべきだと言う意見です。この言い争いは2晩続きました。実はその隙に、ボニファはここからも逃亡し、ローマに逃げ帰帰るのですが。どんな口論になったのか想像して見たいと思います。

シアーラ「あっしらね、こいつのおかげでえらい目にあってんだ、一思いに殺させてくくれ」
ノガレ「それはできない、フランスに連行する」
シアーラ「あっしらね、もう我慢できねー、とりあえず殴らさせてくて、(ボコッ)」
ノガレ「見てないことにしておこう」
ボニファ「破門じゃ、地獄に落ちるぞ」
シアーラ「何をほざくか、あっしら我慢できなー(ボコ」
ノガレ「見てない、見てない」

次の日も

シアーラ「やっぱり一思いに」
ノガレ「待て待て待て」

シアーラ「やっぱり一思いに。(ボコ)」
ボニファ「地獄に落ちるぞ」
ノガレ「・・(見てない、見てない)」

こうして見てないスキにボニファは逃亡します。

ノガレ「困ったことに、なんとしてフィリップ王も言い逃れしよう」
シアーラ「あっしらのせいではありませんぜ、あんたが見てないのいけないので、やっぱり一思いにやっつけておけばよかったのに」
ノガレ「なんと言い逃れをすれば良いやら」

しかし、ボニファテレスはローマに逃げ戻った後、怒り心頭、頭に血が上って、そのまま死んでしまう。教科書にはこうある。ボニファティス8世憤死。
これで、胸をなでおろしたのはギョームドノガレ、無事に責任ノガレができたとさ。逃亡したのはイタリア人だったけど、責任ノガレをしたのがフランス人でした。

 

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