首脳陣の無策さ、協会の無能と狡猾さ

首脳陣の無策さを嘆くべきだ。協会の狡猾さに怒るべきだ。

1,テストマッチ=練習試合でない

ふがいないとしか言いようがない国内最後のテストマッチ3連戦。テストマッチは練習試合ではない。残念だがテストマッチという言葉が誤解を招いている。
テストマッチは真剣勝負だ。ワールドカップだけが真剣勝負ではない。
負けていいテストマッチなどありはしない。テストマッチとは、己の総力を試す(=テスト)、手合わせ(=マッチ)である。

ラグビーのテストマッチは国の代表が総力をあげて、自らのもつすべての力を総動員して己の力を試すことにある。すべての力を出しきることの出来た先にだけ、勝ち負けを超えて、お互いに理解し合い、友好を深めることができるのだ。

すべての能力とは、
知性(状況認知認識力、分析力、理解力、想像力、構想力、創造力、決断力、など)
体力(体格・身体能力、瞬発力、持久力、スピード、巧緻性、テクニックなど)
マインド(倫理観、謙虚さ、ポジティブさ、冷静さ、情熱、集中力、耐久力、寛容さ、積極性、自信、リーダーシップ、フォローワーシップ、チームワーク、など)
であり、
それらの総合力、組織力(個性と多様性、組み合わせ、バランス、財力など)、さらにはファンの数やサポーターの質、ジャーナリズムの質、評価力などなのだ。

花園のビッチ状態など、テストマッチとは到底言い難い。

それらをお互いが全て出し合うことができなければ、わかり合うことも友好が深まることなどありはしない。なぜラグビーという複雑極まりないスポーツが存在しているのかといえば、友好のためであり、野暮な言葉だが「世界平和」のためである。戦争がおこならないようにするためにある。選手だけなく真剣に一緒に戦っているサポーター同士でも同じことだ。知力、体力、マインドのすべてをかけて応援することで、サポーター同士も友好の盃を酌み交わすことができるのだ。

ワールドカップだけが真剣勝負の場で、その直前の試合が単なる練習試合ならば、テストマッチなどの言葉は使わないでほしい。どこかの練習グランドで人知れずおこなえばよい。高額な観戦料など取るべきではない。そこへは物好きな一部のファンが足を運べば良い。

残念ながらオールブラックスXVのあとに来日した3つの代表チームは勝利のためにそれらすべての力を注いているとは言い難かった。蒸し暑く不快極まりない日本の気候をさけ、主力メンバーを自国にのこし、充分な準備をせずにゲーム直前に来日し、ゲーム後すぐに帰国していってしまった。それぞれのチーム事情で経験の少ない選手を試したりする目的を果たし、そそくさと日本を後にした。

そんな主力流を温存した3カ国にいいようにあしらわれたジャパン。全く不甲斐ない。完全に先方の練習試合、選手選考試合につきあわされてしまった。いや、3チームとも情報力、分析力に長けていて、主力がいなくても充分にジャパンと互角に戦えると的確に判断しての結果かもしれない。この時点ですでに負けている。レッドカードのせいでなない。

そんな単なる練習試合に高額な入場料を設定する協会に、純朴なファンは見事に乗せられてしまった。みごとなプロモーションによる宣伝文句にのせられ、協会が暴利をむさぼることに加担してしまった。詐欺行為に誓いプロモーションにもっと冷静にたいすることができたはずだ。4年前の興奮を期待する年月の浅いファンは過熱気味であった。ABXVXV戦の時点ではジェイミーからは「練習の一貫としての試合」「タフな練習の後でのゲーム」「テストマッチではない」とか「キャップ対象試合ではない」「エベレストを登る一歩」というような火消しの言葉(もしかしたらアリバイ作りのことば)が、ゲーム前やゲーム終了後に飛び出している。

もちろん選手たちは真剣である。3試合で出場できた選手は苦しい合宿を乗り越え、持てる力をすべて発揮した。怪我などで試合に選ばれなかった選手たちもチームに貢献できることはすべて行っている。手を抜いているなんてことは一ミリもない。非難することなどなにもないのはもちろんだ。むしろその姿に感動さえおぼえた。選手の責任は少ない。

2,成長できない不甲斐なさ

百歩譲って、今回の3つのテストマッチがテストマッチでなく単なる練習試合でワールドカップ前のウォームアップマッチ(=プロ野球で言うオープン戦)だとしたところで、初戦のABXVから同じような過ちを繰り返し、まったく成長が見えない結果に対する首脳陣の無策さには目を覆うばかりだ。

まず特点を取られるタイミング、トライを取りそこねるタイミングの不味さがある。ABXV 第一戦では40分にPG、80分にトライを取られている。第二戦でも35分にPG、37分にトライ、42分にトライを取られている。サモア戦では37分48分にトライを取られている。トンガ戦では42分と47分にPGを取られている。そして終了間際にトライを取りそこね、同点のトライを取られそうになった。フィジー戦では38分と80分にもトライを取られている。すなわち、すべてのゲームで、前半終了間際、後半開始早々、ノーサイドの前の大事な場面でトライを取られているのだ。さらに、JAPANが得点をあげたあとの相手のキックオフから自陣でミスを犯し、それを起点にトライを取られるケースがめだった。80分間高度な次元で集中を続けることは難しい。集中と弛緩のマネジメントを共有する必要があり。勝負どころででは決してミスをしてはいけない。

ABXV戦では、内側のディフェンスを厚くし、フィジカルで劣る部分は補強できたが、大外が甘くなるディフェンスシステムが露呈した。それは最後のフィジー戦までまったく課題を解決できないままであった。トンガ戦でダブルタックルが機能しても、外が薄くなるところは全く対応がとれていない。たまたまトンガ個人能力がABXVまでに判断するスキルがなかったことでトライにならなかっただけだ。ダブルタックルはよいのだが、後のブレイクダウンの見極めと次のプレーへの初動の遅れができていない。

また攻撃ではABAV戦ではノートライ。その後一発必勝の各種のムーブは披露し通用した部分があるが、攻撃の継続的前進ができていない。ボールを保持しながらの継続ができていない。決定的なチャンズでハンドリングエラーが必ず起こる、これが相手ボールスクラムになり、弱いスクラムはペナルティになる。

サモア戦でレッドカードよるチームの狼狽ぶりや対応策の想定不足が露呈した。しかもフィジー戦でも全く同じことが起こった。またもや狼狽している。全く薬になっていない。想定の甘さであろう。7人で組むスクラムでは勝ち目がない。サモア戦の戦評でも書いたが、劣勢なスクラムの対処のためにはBKを一人さげてFWを8人体制にすべきだ。ガンダーの投入や、堀江入れフラランカーで使うなど思い切ったも考えるべきだ。

3,スタッフと協会の無策さ

ラグビーがピッチ上の15人の戦いでなく、23人の戦いになってから、ゲーム中の戦略的選手交代が勝敗に影響する重要性が大きくなっている。スターターの15人を決めるのも重要だ。分析やスタッフを含めた組織の戦いになってきている。サモアやトンガ、フィジーの実力の評価はできていたのだろうか、選手の特性などは分析出来ていたのであろうか、それぞれ勝つための戦略はあったのであろうか、

いやもっと早くから危機感をもってもよかったのではないだろうか?
テストマッチでなく、練習試合?も含めて、昨年のウルグアイ戦に勝ってからオーストラリアA、と今回格下のトンガに勝利しただけで。3勝11敗である。他の国なら監督首脳陣は当然解任されるだろう。いや、今からでも遅くない。日本でもサッカー界ならそうなるはずだ。
監督スタップだけではない。33名の選出のなかに全く新しい人材を抜擢してもよい。一人で情況を一変できるような選手、例えば、ここはジェイミーの面子をすてて、山沢を呼ぶなんてことはどうだろうか?

ラグビー協会のバックアップ策も手詰まり感がある。
15年のW杯の際にはエディ・ジョーンズという「劇薬」を投入した。19年のW杯杯に向けては「サンウルブス」という「裏技」を採用した。今回のW杯にむけては、「リーグワン」という完全プロ化、地域の一体性、ラグビー文化の「浸透」を導入しようとして失敗し、それまでのトップリーグとそれほど変わらない国内リーグがスタートした。さらにそれにコロナ禍の追い打ちを食らった。

そんなのは言い訳にならない。
フィジーはフィジアンdoruaを結成し、サモアトンガは協力しモナパシフィカを結成し、スーパーラグビーに参戦し。質が高く激しい、ニュージーランド、オーストラリアのチームと毎週実践をつうじて自力を磨いてきている。サンウルブスと同じくをはずされたアルゼンチンは国内で選手を強化するの方針から、欧州へ選手を積極的におくりだして強化する方向に舵をきり、オールブラックスを倒したり南アにせまったりする実力をみがいてきた。

欧州ではイングランド、フランスが敗戦した。スコットランドは前半に日本と同じ21点を取られ、後半14人になりながらもフランスに逆転勝利した。どんなことがあったのかこれから検証する。

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