7月8日 オールブラックスXV戦、観戦記  (開幕まであと2ヶ月)

1、お祭り騒ぎの温度差

加熱ぎみの殿様商売とそれに踊らされているファン、それと、代表チームの思惑との温度差が気になって仕方がない。

22228人。超満員で膨れ上がった秩父宮ラグビー場。ワールドカップイヤーのジャパンの初戦は多くのファンが詰めかけた。テストマッチでもないのにバックスタンドの端の方でさえ1万円という、高額のチケットでもである。キッオフ前から、代表グッズの販売テントには長蛇の列ができる。グッズは飛ぶように売れて、試合終了前にはほぼ完売した。6月に発表された新ジャージも13000円という高額であるが、こちらも予約をしないとなかなか手にはいらない。しかし、スタンドはすでに新ジャージを手に入れたファンたちの赤白で埋まっている。期待が非常に高く加熱気味である。その昔の人気低迷時を知るオールドファンにとっては目を疑うばかりであり。

集まったファンの多くは人気選手の活躍や、オールブラックスからの勝利を期待していたに違いない。人気は嬉しい限りだが、そのようなことを期待して集まったファンが満足して帰路に付けたのであろうか。そのことを目標に足を運んだファンは、果たしてそれだけの価値のあるゲームだったのであろうか、そこが気になって仕方がない。

ファンの期待した主要選手の多くはメンバー表に名がなかったし、出場した日本代表はファンが大枚を叩いて購入した赤白のジャージではなかった。対戦相手はオールブラッスですらない。もちろん事前に両チームのメンバーは発表されている。また、キャップ対象ゲームでないこともアナウンスされている。首脳陣からもゲームの目的に関して簡潔に発言もされている。しかし、その発表されている内容の示す意味がどのようにファンには伝わっているのだろう。

 

この日のゲームは、9月までに新チームを作り上げるため合宿中の1メニューでしかない。テストマッチでもなければ、キャップ対象ゲームでもない。したがって、当然赤白ジャージは着れない。本来ならば、国歌斉唱もなくても良いはずである。(オールブラックスXVもサービスで「カマテ」を披露したが、サービスであろう。)

また、ファンの中には、お祭り騒ぎで、イベント満載の雰囲気を楽しむためにだけ足を運んだ人たちもいたかもしれない。その人たちにとってはゲームの内容や意味など関係なく、相当な盛り上がりに満足して、財布の紐も緩んだことも気にせず、帰路についてしまっただろう。それだけでは非常にもったいない高い買い物である。

そしてその上この日のノートライに終わった。しかも点の取られ方やその時間帯がよくなかった。
ノートライに終わったことや、点の取られ方に関しては問題である。このようなゲーム内容が続くならば、加熱したファンの熱だけに、一挙に覚めてしまうのではないだろうか?それが心配になる。

2、このゲームの真の狙い

このゲームの価値や評価に関しては、冷静に、そしてちょっとマニアックな見方が必要である。ジェミーや日本代表のスタップには試したいことがたくさんあるのだ。今の時期、勝敗どうのこうのではない。その貴重なテストの機会、そこを確実に試して評価して次につなげることである。首脳陣の表現であれな「エベレスト登山への最初の一歩」のゲームである。そう考えると見どころたっぷりで、それらを見届けるつもりでこのゲームを観戦していれば、収穫の多かったゲームであり、1万円の入場料を払ってでも観戦する価値が確かにあった。

それは下記のようなことである。

1)フィジカルは通用するか、スクラムはどうか
浦安で3週間かけて鍛えたフィジカルの成果を測る

2)新規招集組がどこまで期待できる役目を果たせるか
福井翔太選手:フィジカルやタックルブレークダウン
ファカタバ選手:ラインアウト 控えのロックとしての運動量
ナイカブラ:WTGとしてのスピード、ディフェンス
長田選手:リーグワン同様の活躍が出せるのか

3)久々登場の選手の国際ゲームへの対応確認
松田選手:大怪我から復帰の肩慣らし
ムーア選手:4年ぶりの代表戦
小倉選手:FBとSOの控えという役割

4)新しい役割でのパフォーマンス
松島幸太郎選手:FBとしてどうか、有効なキックはけれるのか
リーチ選手:久々のゲームチャプテン
中野選手:12番起用とCTBのコンビネーション

したがって、稲垣、ディアンズ、中村、山中などパフォーマンスが安定してる常連の代表確定組の登場は次戦以降にセッテイングされている。

 

3、その狙いの評価

ジェイミーにとっては下記のような多くの収穫があったので、今回のゲームは「勝ち」と行ってもいい大成功であった。

1)フィジカルやスクラム

フィジカルは充分にいける。特に最初の20分では圧倒することもできた。
スクラムもオッケー、しかし、勝負どころでは反則も取られている面もある。(日曜朝の南半球チャンピオンシップでのアルゼンチンが本物のオールブラックスにスクラムでボコボコにされたことを考えると、オールブラックスXVに押し負けない、ジャパンのスクラムはそれなりに計算ができる。)

評価としては、減点部分を割り引くと80点はというところだろうか、最初の一歩としては大きな一歩だった。このまま歩み続けることに確信がもてたことは大きい。

2)新規招集選手のテスト

新規招集選手を試すことはそれなりにできた。しかもその中で、福井翔太がタックルにジャッカルに大活躍。最高のファフォーマンスであった。代表入りの大アピールを見ることができた。この活躍だけでも見る価値はあった。そしてその活躍の意味するものは、今後第三列の代表選考は非常に熾烈になるだろうということだ。ガンターも召集され、ラピースも復帰がまたれる。姫野、リーチなどもウカウカしてはいられない。

ファカタバはそれなりであった。ナイカブラは決定力はイマイチだったが経験はつめた。長田も一時出場した上に後半途中から登場でき経験は積めたが、時間が足りなかった。

この点に関しては、福井翔太の活躍という大収穫があったので90点以上の高得点はあげられる

3)久々登場選手に関して

松田は合格点、しかし、前半終了間際のノックオンは大きな原点。その後のスクラムが崩れ、3点につながってしまった。
ムーアはディアンズとのコンビで結構いけるのではないだろうか。最後出場の小倉選手のSOの仕事としてはイマイチ。キックも有効ではなかった。FBでも見たかった。

4)新しい役割に関して

4年前はWTBで輝いていた松島は、FBでは目立たなかった。フルバックとしてのキックも有効ではなかった。風の影響もあったかもしれない。松島が目立たないということは、周りがそれ以上に成長できていると評価しても良いかもしれない。
リーチの存在は他に変えがたい。キャプテンとしてはまさに最適である。ラインアウトでも大活躍、「リーチコール」も何度もわき起こった。キャプテンをどうす問題と第三列サバイバルレースがどうなるのか、今後が注目される。
中野選手の序盤のタックルは衝撃的。その後の福井のジャッカルと合わせて。この日1番の見せ所であった。しかし、CTBのライリーとのコンビネーションはまだまだ。やはり中村が見てみたい。

 

3、問題点と今後の課題

問題点はトライが取りきれなかった点に尽きる。特に、勝負所のモールで取りきれなかった。松田は合格点と書いたが、キックの使い方についてはもう少しうまくいかなけなならない。また、松島幸太郎を含めバック3のパフォーマンスに関してはイマイチで決定力が不足している。
バックスでのトライがないのは、トニーブラウンによるスペシャルなサインプレーは本番まで出せないので仕方がないが、単純に勝利を求めて会場に足を運んだファンは、足が遠のいてく可能性がある。

もう一つが点の取られ方である。点を取られるタイミングが悪すぎる。前半もーるででもトライを逃しており、僅差で迎えた終盤の陣地奥深くで、松田がノックオン、その後のスクラムで反則をとられ、3点を献上して前半6−11で終了する。後半は次々にメンバー交代を行うが、それが有効には働いていない。最後も立て続けにトライを取れれてしまい、最後の最後でもトライを顕教して、結果的に大差となってしまった。
このような取られ方は印象が悪い

日曜早朝には、アルゼンチンが本物のオールブラックスと対戦、秩父宮の倍の4万の大観衆で超満員。結果はオールブラックスにスクラムを含めボコボコにされたが、最後の最後に千両役者クレービーがトライをとって終わった。この終わり方はどんなに大差になっても印象が良い。ファンも応援しがいがある。

この日曜の朝のアルゼンチンオールブラックス戦を参考にして、今のアルゼンチンと日本の力関係を測って見ることができるのではないかと思う。また日曜夜のU20NO日本アルゼンチン 戦(結果45−20)も参考になる。

オールブラックスの力を10とすると、いわゆる2軍であるオールブラックスXVはぐらいではないかと思われる。(キックの精度やスクラムなどイマイチでキャップ保持者以外は期待ほどではなかったというのが個人的印象)

オールブラックス対アルゼンチンは結果43−12。スクラムはオールブラックス圧倒的だった。オールブラックスXV対ジャパンは38ー6。
以上から、スクラムに関してはジャパンとアルゼンチンは互角、アタック力はアルゼンチンが数段上ということになる。

ジャパンの今後も新戦力で出場機会がない選手は試すだろう、そのチャンスはあまり多くなるとは言えない。このゲームの福井くんのような活躍を期待したい。首脳陣は冷静に分析し、成果を確実に積み上げていくことに集中している。それはそれで重要である。それを信じて一歩一歩進んでいくことだ。しかし、勝利とはいかなくても、印象に残るトライが欲しい。それがないと加熱しているファンの熱も一気に覚めていく危険性がある。

 

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