ロックとギリシャ神話 その1 「英雄ユリシーズ」 クリーム

Tales of Brave Ulysses 1967 CREAM

英雄ユリシーズは、ギリシャ神話に出てくる英雄で、ラテン語でウリクセス、ギリス神話のオデュッセウスのことです。トロイア戦争でトロイの木馬のアイデアを発案し、ギリシャ連合軍を勝利に導きましたが、そのことよりもその後日談のほうが有名です。トロイアからギリシャのイタケ島の妻と息子の元に帰る時に航海が難航し、なんと10年もの長い間、地中海中をさまよって様々な苦難に遭遇します。英語でOdyssdyといえば、長い苦難に満ちた冒険のことを意味します。ホンダのオデッセイもここから命名されましたし、キューブリックの「2001年宇宙の旅」の原題はスペースオデッセイです。

1967年発表のクリームの有名曲 Tales of Brave Ulysses はこの苦難に満ちた航海を題材にしています。その中でも危険な海峡に住むという怪鳥セイレーンのことが中心になっています。怪鳥セイレーンは美しい女性の顔をもつ怪鳥で、その歌声には神経を麻痺させてしまう力があります。その魅惑的な歌声で船乗りたちを拐かし、海の中に引きづり混んでしまうという化け物です。セイレーンは危険を知らせるサイレンの語源でもあります。

オデュッセウスは自らマストに縛り付けてもらい、他の部下の船員に蠟の耳栓をつけさせて船をこがせることでこの難局を乗り越えます。

もともとは鳥だったのですが、クラプトン達の暮らすイングランドでは人魚伝説と混じり合って、人魚に変容していきます。そして人魚の姿のセイレーンが一般的になりました。この曲のセイレーンも人魚のセイレーンのイメージです。

ドレーパー

この絵の解説とセイレーンは山田五郎の「大人の教養講座」に詳しいです。

 

さてクリームのTales of Brave Ulyssesですが、作詞はカラフルクリームのサイケなジャケットデザインも担当したマイケルシャープで、作曲がクラプトンです。ベースのジャック・ブルースがボーカルを取っています。

 

You thought the leaden winter
Would bring you down forever
But you rode upon a steamer
To the violence of the sun

お前は凍てつく永久の冬を憂いていた
しかし乗り込んだ船こそは、アブナイ太陽行だったのさ


And the colors of the sea
Bind your eyes with trembling mermaids
And you touch the distant beaches
With tales of brave Ulysses
How his naked ears were tortured
By the sirens sweetly singing
For the sparkling waves are calling you
To kiss their white laced lips

目に鮮やかな海原
お前は人魚達のたわむれに目を奪われ
遠くの砂浜へと到達する
無防備のオデュッセイアがセイレーンの甘い歌声に苦しめられたところ
白いレースの波間にキスしてよと、お前を誘うのさ

And you see a girl’s brown body
Dancing through the turquoise
And her footprints make you follow
Where the sky loves the sea
And when your fingers find her
She drowns you in her body
Carving deep blue ripples
In the tissues of your mind

ターコイルブルーの海辺で踊る褐色の肌の女
そのステップはお前を誘惑する
大空が海原とまぐわうところで
お前の指先が彼女自身を見つけると
彼女はお前をその体にそっと添わせる
深く青いさざなみは弧を描き
神経組織を狂わせる

The tiny purple fishes
Run laughing through your fingers
And you want to take her with you
To the hard land of the winter

紫の稚魚は嘲るように
お前の指をすり抜ける
彼女を冬の祖国へと連れ出したいのに


Her name is Aphrodite
And she rides a crimson shell
And you know you cannot leave her
For you touched the distant sands
With tales of brave Ulysses
How his naked ears were tortured
By the sirens sweetly singing

彼女の名前はビーナスだ
真っ赤な貝殻に乗っかってる
もうお前は離れなれない
海辺についてしまったのだ
無防備のオデュッセイアが甘いセイレーンの歌声に苦しめられた


The tiny purple fishes
Run lauging through your fingers
And you want to take her with you
To the hard land of the winter

紫の稚魚は嘲るように
お前の指をすり抜ける
冬の祖国へ連れ帰りたいのに

セイレーンは人魚の姿で現れ、最後はアフロディーテ(=ビーナス)の姿も兼ねね合わされています。また真夏のアバンチュールの歌のようですが、実際の季節は真冬でセイレーンは神経を麻痺させてしまっています。ターコイルや紫や青や赤などカラフルな幻影の中におぼれて、まともな世界に戻れなくなってしまうドラックのことも重ね合わせているのではないかとも思われます。

コード進行は
基本はDにミの音などを加えたもので、ベースラインが、D、C、B、B♭と下がっていきます、

 

 

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