クルセイダーズ 十字軍についてその1

スーパーラグビーが2月1日に開幕する。

今年からスーパーラグビーにエンブレムを変えるチームがある。ニュージーランドは南島のクルセイダーズである。3月14日に秩父宮でサンウルヴス戦がある。昨年3月15日にNZ南島クライストチャーチで、イスラム過激思想による痛ましい銃乱射事件が発生してしまった。クルセイダーズというのは十字軍のことである。11世紀から13世紀に欧州でイスラムから聖地エルサレムを取り戻そうと遠征したのが十字軍である。感情面を配慮し刺激的すぎるクルセイダーズのという名前を変えようとする考えも起こったが、結局名前は変えずに今期はエンブレムの変更だけで進めるということになった。

十字軍は長くキリスト教にとっては聖戦とされたが、現在はその歴史的評価は違っている。無差別殺戮や略奪などそれは酷いものであったことがわかっている。参加した者は主にフランスの諸侯、王族、農民など、全く持って贖罪を得られるものではなかった。
2023年のW杯フランス大会では、フランスでの十字軍の活動に関わる町でラグビーのゲームが行われる。2023年フランスをおとづれるための予習も兼ねて、十字軍とはいかなる現象であったかを検証してみたい。

1、クレルモン公会議

ラグビーファンにとってはクレルモンと言えば、すぐにトップ14の強豪クレルモンーオーベルニュを思い出すはずだ。昨年度来日してトップリーグ選抜とゲームを行った。黄色いジャージは目に鮮烈な印象を残した。ここクレルモンは世界市上、特に十字軍には重要な場所の一つである。1095年の「クレルモン公会議」である。その会議の最終日、時のローマ教皇ウルバヌス3世は十字軍の宣戦布告を声高らかに宣言した。民衆は「Deus vult(デウス・ウルト:神の意のままに)」と叫んで熱狂し、こぞって我先に十字軍への参加をする。

クレルモンのラグビー場は残念ながらw杯の会場にはならないが、近くの町(山一つ越えたところ)サンティディエンヌのジャフロワスタールスタジアムで数試合が行われる。

2、隠者ピエール

十字軍は、諸侯や王様の軍隊だけでなく、民衆や農民も参加した。いやその数の方が多かったし、最初にエルサエムに到達したのも農民たちであり、そこで悲惨な狼藉を働いたのも彼達であった。彼らは「タフール」と呼ばれた。それを先導したのが「隠者ピエール」である。もはや伝説化し神格化されて正しいことはわかっていない。クレルモン公会議後に、その旗を掲げると、彼の元に農民たちはみるみる集まって膨れ上がる。その数は数万とも言われる。

この隠者ピエールの出身地はフランドル地方である。フランドル地方は北部フランスとベルギーを含んだ地域を指す。15世紀には毛織物の中心地で、イングランドとフランスがその領有権をめぐり何度となく戦争を行った。なぜか世界中で日本だけで有名な物語「フランダースの犬」の舞台でもある、2023年のW杯ではフランドルの中心地リールの近く、ヴィルヌーヴ・ダスクのピエール・モーロワ・スタジアムで数試合行われる。(同じピエールの名前だが、関係は全くない)

3、アルビジョア十字軍

十字軍は第一回から異教徒への弾圧の目的であった。イスラムだけでなく、ユダヤ教徒も対象になった。フランス国内のユダヤ教徒も十字軍の名の下に数千人が殺害された。さらに同じキリスト教内でも「カタリ派」と呼ばれる一派も異端とされ弾圧を受け皆殺しになった。カタリとは「清浄なもの」とう意味であり、イタリア北部で生まれ、フランス南部のピレネー山脈の麓に隠れその教えを守った。その地方の中心地はアルビという町であり、カタリ派弾圧へとアルビへ向けて十字軍が結成され進軍する。この軍隊はアルビへの十字軍なのでアルビジョア十字軍と呼ばれる。この地方全体で周辺の町は全て破壊され、無差別な殺戮が行われれる。逮捕されれば決まって宗教裁判となり死刑=火炙りとなる。殺しさえすれば本当のキリスト教徒ならば天国に行き、カタリ派ならば地獄に行くのだからというのがその理屈であった。実際はアルビの町でなく隣のトゥールーズがその最後の激戦地になった。地方の諸侯も加わって抵抗した。残った数千のカタリ派は城に立てこもり、何年もの間抵抗をしたが、子供も含め数千人が悲惨な最期を遂げた。(この経緯は堀田善衛の小説「路上の人」に描かれている)。

これをきっかけにオック語を話していたフランス南部の独自の文化は失われて、北部の文化で統一、スペインへ方面への

トゥールーズのクラブチーム、スタッドトゥルーザンはトップ14でトップの優勝回数を誇るラグビーチームである。2023年のW杯ではトゥールーズの本拠地ラヴィシテスタジアムで4試合行われることが決まっている。

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