高校ラグビーの魅力

不完全だから面白い。

挑戦する姿。

初めて経験する壁にぶつかる。そして自分の力を知る。できることとできないこと、通じることと通じないこと。これまでの密かな自信や慢心も新たな壁にあっさりと鼻を折られることもある。

それでも全てが経験になる。肥やしになる。成長の糧になる。
最後まで謙虚に戦う姿勢さえあれば、、、

その姿はその気概はバイブレーションを発する。その振動は共鳴する。そして増幅する。一緒に戦う仲間に、控えの仲間に、相手のチームに、応援する者に、目撃する者達に。

浦和は正月3回戦まで進んだ。3年生で経験者はキャプテンの松永1人しかいない。ラグビー部の門を叩いた時に同級生があまりにもラグビーを知らないという現実に唖然としたという。一つ一つ仲間にラグビーの基本から伝える毎日。そして毎日、毎日成長する。幸いメンバーの学習能力は高い。そして2年半が経った。激戦の埼玉予選を勝ち抜いた。そして花園でも一つのプレー毎にチーム全体が成長してみせた。桐蔭との元旦、大差のゲームとなったが、これが浦和の3試合の中で一番良いゲームでとなった。1回戦では自らの反則でチャンスを潰し、自慢もモールを使いこなせなかった。それでも5点を守りきって創部以来の初勝利。2回戦では、チームでやってはいけないキックミスや飛ばしパスなどをしてしまい、勝てるゲームもヒヤヒヤモノだった。そして迎えた王者桐蔭戦。経験、体格差、技術力、チーム力など力の差は歴然。最初はファーストタックルが決まらなかった。アンストラクチャーから簡単にゴールを割られた。インサイドも簡単に突破される。ラインアウトからのモール形成も阻止された。しかし、浦和は最後まで挑戦者として謙虚であった。戦う姿勢を崩さなかった。ゲームの中でチームで話し合い、工夫をして様々な事を試してみた。ダブルタックル、トリプルタックルで止めることができた。キックの蹴り方も変えてみた。モールの形成方法もゲーム中に修正、いい形を形成し30m以上もドライブしついにトライを奪取する。まさに全員でのトライである。この5点の価値はこれまでの普通のトライの数十倍の価値がある。ゲーム中にメンバーで修正し、最後まで成長せきた。清々しい挑戦であった。

國學院栃木の藤倉君。1年時からその存在は知られた。体重125kg、もちろん高校代表にも選ばれている。プロップとして典型的な愛すべきキャラそのものの存在。その恵まれた体格を使い、腕力もあり、スクラムワークも自信を持っている。かつての新日鉄釜石のプロップ、今はブルーズシンガーでもある長山さんのコーチングも受け、テクニックも磨きに磨いてきた。しかし夏には怪我に泣いた。リハビリに励んだ。そして高校最後の花園を迎える。初戦では圧倒的な力で全てのスクラムを高校生の制限である1.5mを必ず前進させる。安定した球出しはもちろん、時より相手ボールを奪った。スクラムが組みたくて楽しくて仕方なないというオーラがひしひしと漂ってくる。
しかし、3回戦では、その表情から笑みが消えた。これまでの自信はことごとくレフリーの判断に阻まれる。どうしても何度もスクラムの反則を取られてしまう。ラグビーではスクラムはまっすぐに押さなければならいと定められているのだ。レフリーマイクからはまっすぐに押していないという注意が聞こえる。特に高校生は勝敗よりも安全性が重視され、スクラムもプレー再開も手段との意味合いが大きい。あまりにも力の差があるスクラムをレフリーは危険と判断したものと思われる。レフリーの判断をどうこういうつもりはない。それでも藤倉君は最後までくさることもなく、謙虚に様々に探りながら淡々と最後までスクラムを組み続けた。ゲームは接戦であったがチームは残念ながら準決勝に進むことは叶わなかった。特に前半にスクラムでことごとく反則を取られ相手に5回も6回もボールを簡単にプレゼントしてしまっては勝てるはずがない。彼のそして高校生のラグビーは終わった。高校生としては早熟すぎた彼は、進学先では思い切り大好きなスクラムを組んでほしい。

 

 

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