昨年はラグビー日本代表が、ワンチームとして、国籍、肌の色、生まれた場所、文化、習慣の違う男達が集まり、結果を残し、ダイバーシティの一つの理想を実現しました。のほほんとしていた日本社会を感動と希望をもたらしました。しかし、現実アメリカや世界各地では民族や人種、世代の分断が進んでいます。「ブラックライブズマター」などの運動も盛んです。
60年代から70年代初頭、ダイバーシティの理想を掲げ活動したバンドがありました。Sly&family Stone です。
メンバー構成は男女混合、人種混合、兄弟や他人も同列に集まりファミリーを構成します。メインボーカルも何人もで分担します。
スライ自身は黒人ですが、人種は全く関係なく、メロディーラインもシンプルでR&Bだけでなく、童謡からヨーデルまであらゆるエッセンスを吸収昇華させて曲にしています。黒人のコミュニティだけでなく、あらゆる人種、世代にむけてストレーに、時にはシニカルに、時にはユーモラスに言葉を届けます。
当時はフラワームーブメントの真っ盛りで、若者の多くは、音楽で世の中が変えられると本気で信じていました。男女全員で歌うコーラス部分にその片鱗が感じられます。
ママス&パパス、ジェファーソンエアプレインなんかもそうです。フィフスディメンションもそうでした。
この時期TOGETHERやPEACEが合言葉でした。ベルボトムのジーンズを履き長髪で何かにつけピースサインをしました。ニューヨーク郊外のウッドストックでは愛と平和の3日間の音楽祭典に40万人の若者が集います。スライ&ファミリーストーンもそのハイライトとして登場して異彩を放つ存在感を残します。映画でウッドストックでは、WANA TAKE HAIGHERと高らかに歌いあげ40万人の心を一つにしてしまう場面がしっかりと残されています。
彼らの代表作にこの曲があります。「Everyday People」
シングルとして発売され全米1位になりました。このアルバムに収録されています
Everyday People Sometimes I'm right and I can be wrong My own beliefs are in my song The butcher, the banker, the drummer and then Makes no difference what group I'm in I am everyday people, yeah, yeah 俺も時には正しく、時には間違ってるかも。 信念はオレの歌の中にある 肉屋、銀行員、ドラマーも どのグルーブにいても違いはない オレは普通の人なんだ There is a blue one Who can't accept the green one For living with a fat one Trying to be a skinny one 落ち込んでいる奴は成功した奴を気に入らない 飽食家と住んでいる貧相な奴もいる Different strokes For different folks And so on and so on And scooby dooby dooby Oh sha sha We got to live together 民族が違えば風習も違う あれやこれや、いろいろさ そうだそうだよ 簡単さ 一緒に暮らしていかなくちゃ I am no better and neither are you We are the same, whatever we do You love me, you hate me, you know me and then You can't figure out the bag I'm in I am everyday people, yeah yeah オレはお前より上じゃない お前もそうさ 何をしようとおんなじだ 愛してくれても、憎んでくれても、知ってくれても オレがどこに居るのかわからないだろうよ オレは普通の人なんだ There is a long hair That doesn't like the short hair For being such a rich one That will not help the poor one 短髪が嫌いな長髪のやつらが居る 貧乏人に手をかさない金持ちのやつらも居る Different strokes For different folks And so on and so on And scooby dooby dooby Oh sha sha We got to live together 民族が違えば風習も違う あれやこれや、いろいろさ そうだそうだよ 簡単さ 一緒に暮らしていかなくちゃ There is a yellow one That won't accept the black one That won't accept the red one That won't accept the white one 黒い人を受け入れない黄色い人 赤い人を受けいらない黒い人 白い人を受け入れない赤い人 Different strokes For different folks And so on and so on And scooby dooby dooby Oh sha sha I am everyday people
歌詞の内容はまさにダイバーシティです。
メロディーラインも黒っぽくなく童謡みたいでシンプルで万人ストレートに伝わります。スライには、黒人も白人も世代も全く同等で意識にないことが感じ取れます。
エンパシーという言葉があります。
一昨年発売さて、ベストセラーになったプレディみかこ「僕はイエローでホワイトでちょっとブルー」で取り上げられて巷で話題です。シンパシーとは違います。シンパシーは同情で心の問題。エンパシーは知的作業で「相手の靴を履いて考える」こと。完全には理解はできなくても相手の立場になってみるということです。人種性別、世代に関係なく人はそもそもそれぞれ違います。相手の立場に立って考えてみることで、その関係はよくなるというものです。
今現在、SNSなどで、相手のことを省みない、心ない発言や非難が増えています。また、コロナ禍の中、「自粛警察」などと言って、正義という名の隠みので言葉の暴力をふるいまくる人たちも現れてきました。何かの不満やイライラが制御されずにそんな形で発散させられてしまうのでしょうけど、問題です。
Different strokes For different folks はエンパシー(当時はそんな言葉はありませんでしたが)の考えに基づいています。Different strokes For different folksは当時夢を描いて社会の理想を求める活動家達の間で合言葉になって広まりました。
ところが、夢と理想に満ちた60年代は、挫折と分断の問題の70年代に突入して行きます。そのへんを次回に書きます。