ジョージア戦 「想定内」と「想定外」

1,ラグビーは15人は常識?

「ラグビーは15人で行うもの」

こんな常識は既に過去のものである。

今や「23人で戦うもの」である。

たしかにそのとおりでもあるが、ピッチ上には15人が揃わない場合など、よくあるのだ。

事実、テストマッチやワールドカップの半数以上のゲームではほとんどのゲームでイエローカードやレッドカードが出されている。
(実際フランスワールドカップではプールステージ40試合のうち27試合にイエローやレッドのカードが出ている。)

つまり、ラグビーはピッチ上で14人対15人で戦うことが常識的にあるスポーツなのだ。

もはやこれはラグビーの常識である。

2,1人少ないことなど想定内

ジャパンはシンビンなどで人数が減ることなどはもちろん完全に想定内だった。スクラムを7人で組むこと、長田やナイカブラのWTBが入ることなど、普段の練習の際にも何度も練習している。
この日もマイボールで長田やナイカブラが入ったスクラムでは、ジョージアの反則を誘ってPKを得るなど、互角以上のスクラムであった。

しかし、相手ボールのスクラムとなると、BKのディフェンスに人を割くためにスクラムの人数は7人となる。ジョージアはそんな時は見流さない。確実にPKを獲得するスクラムを組んでくる。

それでも、ジャパンにとってはそのことも「想定内」であった。反則をとられながらも7人のスクラムで対応し続けた。

14人のときにどう対応するのかは、マオリ第二戦の竹内のシンビンの際の危機感の統一ができ、販促せずに、失点せずに守り切るというなようなすでに克服されているはずであった。

しかし、

ここに、想定外だったことが3つ有る

3,想定外のその1 13人

一つはFWが2人減ってしまい6人になってしまったときにどうするかである。これはさすがに想定しきれない。そんなことはあまり起きはしない。今のところそのようなシチュエーションを想定した練習をおこなうというような時間の余裕なってない。

しかし人数が少なくなったときに、残ったメンバーがどう対処すればよいかは、素人にさえももわかる。それは、相手ボールのスクラムを減らすことである。それには無理なプレーをしてハンドリングエラーなどもミスをしないことである。

この試合、終盤に23−25と逆転されたあとも5分ほどあり、その時もうジョージアの足も止まってきて、ジャパンにはまだまだ逆転のチャンスがあった。しかし、その直後のキックオフで、山沢はちょっと欲張ってしまった。マイボールを確保するためにタッチギリギリをねらったキックをしたのだ。それが直接タッチをまってしまい、相手ボールのセンタースクラムとなってしまうのだ。そのスクラムでジャパンは反則を犯してしまう。

このようなミスは、ボールを渡してしまうだけでなく、時間も渡してしままい、相手に最後の元気も渡してしまう。案の定、そのあとジャパンは一度も相手ボールを奪うことができずノーサイドとなるのであった。ジョージアこのキックのミスが最終的に勝敗を決定させるものになってしまった。

しかしその前にも、14人の状態でもそれを「想定内」としてやれることはたくさんあったはずである。

14人のときに絶対にやってはいけないことは、さらに反則を重ねてしまい、もう一人のシンビンや退場者を出さないことである。72分のワクアの反則とそれに対するイエローカードはそのタイミングが最悪だった。ジョージアの60分ごろにジョージアの12番のシンビンがあり、14人対14人となり、その間に長田のトライで逆転に成功し、そのイエローがあけジョージアが15人にもどったあとのイエローである。もう残り時間は10分を切っていて、ノーサイドまではもどれない。そしてのこる交代選手は為末しかしかいない。

(ただし今、なんどビデオを見返してもワクワに出されたイエローはTMOもなくなぜ一発シンビンなのか不明である。)

 

 

4,想定外のその2 7人スクラム

そして2つ目の想定外だったことは、長田やナイカブラを入れて組むスクラムが想定外にうまく機能して、ジョージアの反則を奪うほど強力過ぎだったことである。
結果的に、このことが一つの小さな判断ミスを誘うことになってしまった。それは、早い段階でFWを8人にしてBKを一人減らす体制にするという選択肢の存在と、そのタイミングを失ってしまったのだ。ワクワをロックに入れ、リーチを3列にし、長田かナイカブラを下げるということもできた。

イエローなら10分間はスクラムのタイミングも少なく、WTBをフランカーにつけたスクラムも機能する。ただし、それを長時間機能し続けるというのはさずがに、難しかった。

バンカーシステムで、下川の黄色が赤になったタイミングや後半のスクラムのタイミングで、選択肢をえらぶチャンスもあったはずだった。結果的に、そのタイミングとチャンスを見逃してしまった。

いや、流石にエディさんの頭の中にはそんな選択肢はあったかもしれない。エディさんは14人でジャパンがどう戦い抜き勝利するかという、レッスンをする絶好の機会を考え、FW7人体制を取り続けたのかもしれない。

 

5,想定外のその3 クロコダイルロール

 

ラグビーのルールは毎年必ず変わる。
クロコダイルロールはこの7月1日からペナライズの対処となった反則行為である。

この日のほとんどのラグビーファンにとっては「クロコダイルロール」という言葉を初めて聞く事となった。そこには想定できることなど全く無かった。

ラグビー関係者には6月に7月1日のルール改正の通達がきているが、それがレッドカード対象のとても重い対象になるなど、全くの想定できるものではなかった。

その対象となる行為の適用範囲や、認定方法、量刑の重さなど未知数であった。

しかし先週のマオリ戦でもマオリの山本へのクロコダイルロールがイエローになった。この日のアイルランド、南ア戦でもクロコダイルロールが適用された。にわかにクロコダイルロールへの重いペナライズの適用例が次々に報告されている。

下川にとっても、これまで反則の対象でなかった普段のなにげないプレーがとっさの時に出てしまっただけある。イエローやレッドの対象になるとは全くの想定外だったはずだ。

この週の世界のテストマッチで、ペナライズの重みなどレフリングの基準が示されたと行って善い。

ベンチを下がるときに涙をみせ、ゲーム終了後も放心状態の、下川のメンタリティが心配だが、ジャパンの面々のだれもが、ゲーム後、下川のことを気遣っていた

エディさんも、「下川は汚いプレーをするような選手でないことは誰もが知っている」とインタビューで答え、

リーチキャプテンも、「私も同じような状況になったことがあるの。今の下川のことはよく解る」とコメントしている。

リーチにしてもちょうど昨年の今頃、W杯本番直前の大事なサモア戦で一発レッドを受け、敗戦した時のことが思い出されたのであろう。どんな選手もつらい試練の時を経験して、偉大な選手になるのである。

下川にとっては想定外でかなりショックなのだろうが、エディさんや、リーチを始め、チームの中の全員や、正しいジャパンファン、正しいラグビーファンの間では、復活した下川の姿をを見ることは極めて想定内である。

辛抱だ、頑張れ、下川!!

 

 

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