タルカスはエマーソン、レイク&パーマーの2枚目のアルバムで、A面前面がタルカスでした。
タルカスとタルカスに出てくる怪物をLEGOで作ってみました。
難解な歌詞ですが、ネットでの英語の歌詞を見つけましたので、新しい解釈で訳詞をやってみました。
Eruption 噴火 火山が噴火して、火山奥そこに眠っていたタルカスを目覚めさせます。 キャタピラの振動は4分の5拍子です。 タルカスは進軍を続けて、ジェットエンジンをつけたプテラノドンなど出会った怪物は次々にやっつけて、つど高らかな雄叫びをあげます。
Stones of Years 歴史の石畳 Has the dawn ever seen your eyes? Have the days made you so unwise? Realise, you are 夜明けを目にしていたとでも? 月日が愚かにさせたのだとでも? 覚醒だ Had you talked to the winds of time Then you'd know how the waters rhyme Taste of wine 時の風に話しかけたのだとでも? そして、流れの調べを知るのだ ワインの豊潤さの如きを How can you know where you've been? In time, you'll see the sign And realise your sin (Ah-ah-ah-ah) 居場所を如何に知り得たのか? 間も無く 兆しは現れる そして罪は現実となるのだ Will you know how the seed is sown? All your time has been overgrown Never known 種がどうやって撒かれるのかを判るとでも? 持ち時間はすでに過ぎ去ったのだ 忘却の中で Have you walked on the stones of years? When you speak, is it you that hears? Are your ears full? (full) You can't hear anything at all 歴史の石畳の上の歩いたとでも? 弁ずる時、聴衆は自分では? 耳が詰まっているのか? 一切聞かぬとは
the stones of yearsは、年月の石石=歴史の石畳としました。
タルカスは、昔々の歴史の中で活躍したことがあるのででしょうが
今回は目覚めても民衆のためには動きません。
民衆からの嘆きが語られます。
この歌詞には明らかにキングクリムゾン「21世紀の精神異常者ーエピタフ」からの流れです。
下記のように同じような歌詞が出てきます。
the seed is sown
talked to the winds of time
クリムソンキングの宮殿ではドラゴンが出てきますが、同じような怪物として今回はタルカスです。
今回のタルカスの作詞は全てグレッグレイクなのですが、明らかに2年前に在籍していたキングクリムゾンと、そのメンバーで作詞家のピートシンフィールドへのリスペクトがみられ、及び同じ世界観からできているのだと思います。
Iconoclast 聖像破壊 タルカスが目覚めたので街は、ズタズタになります 大切な宗教的建造物が破壊されていきます。 この偶像破壊行為が、タルカスの仕業なのか、そのほかの怪物の仕業なのかはっきりしませんが、タルカスのキャタピラの音が入っているのでタルカスによる破壊も行われたとみるべきでしょう。(キャタピラの振動は火山から誕生の時と微妙に変化しています。その後も少しずつ変化していきます) この曲は全体に宗教用語が多いのですが、イコンは聖像であり、 Iconoclastは製造を壊す者です。次のNassでさらに宗教用語が炸裂します。
Mass ミサ The preacher said a prayer Save every single hair on his head He's dead... The minister of hate Had just arrived too late to be spared Who cared? The weaver in the web that he made! 伝道師は説教をした 「髪の毛1本まで守りたもう」 そして死んだ 憎しみの牧師が到着した時は もう手遅れだった 誰が救えるのだ? 自分の糸に絡まった紡ぎ人に The pilgrim wandered in Committing every sin that he could So good... The cardinal of grief Was set in the belief he'd be saved From the grave The weaver in the web that he made! 巡礼者は彷徨い なすべき罪の粋を犯した そんなもんだ 悲痛な枢機卿は 救済を信じていた それは(すでに)墓場からだ 自分の糸に絡まった紡ぎ人よ The high priest took a blade To bless the ones that prayed And all obeyed The messenger of fear Is slowly growing, nearer to the time A sign The weaver in the web that he made! 高位の聖職者は剣をとった 祈った者の聖人化のために そして皆がそれに続いた 恐怖の使者がゆっくり増えていく 終末の時は近い 兆しだ 自分の糸に絡まった紡ぎ人なのだ A bishop rings a bell A cloak of darkness fell across the ground Without a sound! The silent choir sing And in their silence Bring jaded sound Harmonic ground The weaver in the web that he made! 司教は警鐘を鳴らす (一方)暗い影は大地を埋めていく 音もなく! 無言の聖歌隊は歌う 静寂の中で すさんだ叫びで 響きは粉々に 自分の糸に絡まった紡ぎ人よ
日本人には馴染みのない宗教用語が多数出てきます。
MASS ミサです。プロテスタントにミサはありませんので、ローマカソリックか正教会、国教会をイメージしているのでしょう
preacher 伝道師
minister プロテスタントでは聖職者・牧師ですが、ローマカソリックでは「修道会の総長」です。
pilgrim 巡礼者 プロテスタントでは巡礼始祖=ピルグリムファーザーズのことになりますが、カソリック的に巡礼者で良いでしょう
bishop 正教会では「主教」 ローマカソリックでは「司教」
cardinal 枢機卿
The high priest 高位の司祭 高位の神父
ローマカソリックでは序列があります
ローマ教皇 Pope コンクラーベで選ばれます
枢機卿 cardinal 司教の中から任命され、コンクラーベの選挙権をもつ
司教 bishop 司祭や助祭の任命権があります
修道会の総長 minister イエズズ会、などの宗派の総長です
(地域にある協会とは別に組織され教皇に認められた会派です)
司祭 prlest 地域の教会の長
bless 磨くことですが、宗教上は、宗教的に磨くこと=聖人化としました
the time 時間ですが、締め切りの時間のことです。宗教的には「最後の審判」ハルマゲドン=「終末の時」を指します。
Harmonic ground は調和の取れた大地ではありません。Harmonicは名詞で倍音の響きの意味、ground は石臼などで粉を挽くなどのグラインド=grind=挽くと言う動詞の過去形です。つまり調和が粉々になったと言うことです。
主題のThe weaver in the web that he made! ですか
weaver は機織りをする人で、WEBはクモの巣、つまり自分が編み上げたクモの巣に引っかかって抜けられなくなっている状況を示しているのでしょう。特に中世のカソリックは欺瞞や方便など色々と取り繕って、その権威を守ってきた歴史があります。そのような綾の中でニッチもサッチもいかなくなっている。そして宗教的な救済が全く効き目がないことがこれでもかと歌われます。
紡績の工程はまず、糸を紡いでからその糸を染色し、縦糸と横糸を組み合わせて布にします。英語では物語や歴史を作ったり、何かを作り上げる人の例えでThe weaver=機織り人が使われるようです。同じような意味で、日本では「紡ぎ人」にあたるかもしれません。欧米では後工程、日本では前工程であることろが面白いです。
直訳は 「自分で織ったクモの巣にいる織り手」ですが、だいぶ意訳させていただいて、「自分の糸に絡まってしまった紡ぎ人」とさせていただきました。
まちがズタズタで宗教が全く意味をなさない状況の原因は、本当は教団の腐敗にあるようです。
結局自分で作った蜘蛛の巣に引っかかってしまって、動きが取れなくなっているのです。
終末の時は近いです
Manticore マンティコア マンティコアは、想像上の動物で、顔は人間なのですが、姿はライオン、その尻尾はサソリです。しっぽの毒で相手をやっつけます。鬼滅の鬼と同様に人を喰らいます。 しかし、アルバムの中表紙に描かれたマンティコアはちょっとユーモラスであまりかっこよくありません。 ELPはこの後自分たちのレーベルを作ります。その名がマンティコアレーベルです。マンティコアには思い入れがあるのでしょう。ちなみにマンティコアレーベルのマークはカッコいいデザインに修正されています。 いよいよタルカスはボスキャラのマンティコアと対決します。 (21世紀の精神異常者に出てくる「猫の爪」はひょっとしてマンティコアの爪なのかも、なんて思いました。)
Battlefield 戦場 Clear the battlefield and let me see All the profit from our victory You talk of freedom, starving children fall Are you deaf when you hear the season's call? 戦場を掃除して 我らの戦利品を見せてみろ 飢えた子が倒れているのに自由を語るのか クリスマスが近いというのに Were you there to watch the earth be scorched? Did you stand beside the spectral torch? Know the leaves of sorrow turned their face Scattered on the ashes of disgrace 大地が焦土と化すのを観るために そこに居たのか 幻の松明の傍につっ立っていたのか 悲しむ木の葉は顔色を変え 恥辱の灰に散らばるを知れ Every blade is sharp, the arrows fly Where the victims of your armies lie Where the blades of grass and arrows rain Then there'd be no sorrow, be no pain 全ての剣は振り下ろされ 全ての弓矢は放たれた 軍隊の死屍累々たるところ 草木の如くかざされた刃、雨のような矢の下には もはや、悲しみすらなく、苦しみさえも無い
悲惨な戦闘の後の戦場の様子が描写されます。全く無駄死です。
軍隊も剣と弓矢で全力で戦買いましたが、全滅したようです。
戦利品は全くなく、自由だけは勝ち得たと言っても全く意味はありません
Aquatarkus アクアタルカス=海のタルカス どうやら、タルカスは目をやられて海に帰っていったようです。火山から生まれて海に帰っていくとは辻褄があいませんが、それだけスケールのでかい怪物だということかもしれません。
街は民衆はどうなるのでしょう。結局、宗教の威厳は地に落ち、軍隊は全滅、こうしてまた新しい歴史が積み上がっていくのででしょう。マンティコアもまだ生き残っています。
大地が火山の噴火によって破壊され、やがて新しいい地面を自然を再生するように、タルカスはその時代の矛盾や病理を全て壊してしまい、新しい歴史を作り出すきっかけのような存在なのでしょう。
この物語では、腐敗した協会や軍隊をものの見事に全滅させてくれました。
またいつか海からタルカスが蘇って、歴史の転換点を作っていくと思われます。
参考資料