19世期パリ、ベルエポックな人たち(前半) ナダール

時代の変化の時には、個性的で奇想天外な人が現れるものです。まずは7月革命から7月王政、2月革命から第二帝政、パリコミューン、第三共和政の変革の時代を見てみましょう。これらの人達はポエーム(ボヘミアン)とも呼ばれますが、すぐに新しいことに飛びつき、自由気ままに、生き生きとした人生を送っています。一方マルクスからは「ルンペンプロレタリアート」と呼ばれた人たちです。

その第一回jはナダールです。

ナダール自撮り写真

ナダールは風刺画作家から国家の密偵、ジャーナリストで、写真家で気球乗り、共和主義者です。様々な顔を持つナダールですが、自分は写真家だと主張しています。その通りで特に新しいもの好きの写真家として、交友関係も広く、親友のジューヌベルヌから画家のドラクロア、詩人のボードレールからロシアの革命家クロポトキンまで、この時代のありとあらゆる奇才達のポートレートを残しています。世界初の航空写真や、真っ暗なはずのパリの地下のカタコンペを撮影します。さらには世界初の個人の写真スタジオは、「第一回印象派展の会場」になりました。

ナダールは医学部で学びましたが、社会の変革の波を肌で感じで、すぐにジャーナリストとして活動を始めます。

雑誌の編集、

 

風刺画家としてナダールの才能を発見したのは人気雑誌「カリカチュール」、「シャリヴァリ」のシャルルフィリポンでした。「ジャリバリ」に風刺画を残しています。ナダールの本名は、ガスパールペリックストゥールナションからこの時のペンネーム、ナダールをその後もずっと使い続けることになりました。

そして問題の年1848年には、ポーランドの革命に身を捧げ、ポーランドに重無kますが失敗し、帰り道で当局に逮捕されてしまいます。命からがら帰国したなダールですが、すぐに秘密組織の密偵として、2度目にロシア偵察に行っています。この2度目は、向こう見ずに革命に参加してしまうに違いないナダールの命の危険性を考えた友人達が、ナダールを騙して避難させるためでした。お人好しで疑うこと知らないナダールはそれとは知らずに先方の組織に侵入して、何もないレポートを真面目に送ってきました、革命で命を落とすことはありませんでした。

風刺画としての最大の問題作は「ナダールのパンテオン(1854)」です。時代の顔たる女性のジョルジュサンドの胸像(左下)の前に延々と列をなす250名の男性陣を描いたものです。よく見ると誰が誰だがわかってきます。

当時の写真という技術はまだ珍しいものでした。撮影もスタジオで何時間もかかりますので、モデルも緊張してさらに体力的にもまいってしまいます。人物し写真家としてのナダールの素晴らしいところは、何気ない会話術でや小道具でリラックスさせ、友達になり、その人となりが表情に現れた瞬間を逃さずにシャッターと押すという方法でした。今でも一流のカメラマンとして通じるところがあると思います。
彼はのちにこう言っています。
「気のしれた人を写真に撮るのは容易いことだ」


知人であるデュマ、ボードレール、ジューヌヴェルヌ


1963年の日本の使節団
(この写真は苦労したのではないでしょうか、中央はナダールの息子です。息子も被写体をリラックスさせる小道具に使っています。)

そして気球乗りとして、兄弟らと共にパリの空中撮影をしています。

ギュスターブドレ画

初めてのパリの空中写真

さらに世界最大の十三人のりの大気球「巨人号」建造し、何度も離陸に望みますが、成功するにはいたりませんでした。その気球は親友であるジューヌヴェルヌの「気球に乗って5週間」などの名作を生むヒントになりました。

普仏戦争の時には3機の大型軍事用飛行船を建造して、パリ包囲戦の中で閉鎖されたパリと外部との通信手段や、内務大臣ガンベダの脱出劇などに貢献しました。

ナダールは、世界で初めて、自分の写真スタジオをパリの一角に構えています。

ナダールのスタジオ

1874年、この時代にまだ無名でどこの馬の骨ともわからない連中のために、このスタジオを開放して絵画展を開いています。この絵画展は、他の絵画展では落選の憂き目になった作品ばかりなので「落選者展」とも呼ばれましたが、この絵画展こそ、のちの美術史を一変させることになる「第一回印象派展」なのです。この第一回印象派展に出展された作品はモネの「日の出」、ルノアールの「踊り子」、ドガ作品などのちに有名な絵ばかりとなります。

モネ「日の出」

ルノアール「踊り子」

 

 

 

命知らずの無鉄砲な性格のナダールですが、1910年、90歳まで長生きしました。エポックメイキングな「1900年パリ万博」では、「ナダール回顧展」が開かれ、万博の大賞を受賞しています。

晩年は自叙伝の執筆をしました。

 

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