スコットランドラグビーと音楽 ロッホローモンド

最近エジンバラのマレーフィールドでは、フラワーズオブスコットランドとは別に応援に歌われる歌があります。

ロッホローモンド

これも古い歌です、スコットランドでは国民的な民謡
ロッホとはゲール語で湖のこと、ロッホローモンドとはローモンド湖のことになります。グラスゴーの北西に位置するスコットランドで一番大きな湖です。

Mike_Shuttleworth / Pixabay

メロディは日本では誰でも知っているメロディーです。
「汽笛一声新橋を」の「鉄道唱歌」といえばわかるでしょう。

 

しかし元歌はもっとゆっくりとした速さで歌われ、内容も非常に悲しいものです。

 

ジャコバイトの進軍と敗走

この歌詞は1745年のジャコバイトの事が歌われます。

時は1715年、プリンスチャーリーを先頭にした勇猛なるジャコバイトの一軍は、連戦連勝でダービーマッチで有名なダービーの近くまで進軍してきます。ロンドンまではもう少し。

ロンドンは大騒ぎです。国王のジョージは逃げ腰です。

ところがジャコバイト軍はダービーの近くで突然進軍を止めてハイランドに引き返し始めます。

軍内で議論があったとか、資材の援助が切れそうだとか、また、領地の農作業が心配だとか、いろいろな理由はあったようです。そもそも、ジャコバイトは本来の継承者の王様をアピールするのが狙いで、本気で王位を奪還できるなんて思ってもみなかった者もいたでしょう。

しかし、進軍して来る時は強いけれど、一旦引き出すとイングランド軍にいいようにやられ始めます、敗走につぐ敗走が始まってしまいます。

この時の悲惨なる敗走の歌が「ロッホローモンド」

歌詞の内容

By yon bonnie banks
And by yon bonnie braes,
Where the sun shines bright
On Loch Lomond
Oh we twa ha'e pass'd
sae mony blithesome days,
On the bonnie, bonnie banks
O' Loch Lomond.

愛らしき岸辺、愛らしき丘
ローモンド湖に陽炎注ぐ
喜びの日はすでに過ぎし
愛らしき美しき岸辺
ローモンド湖

Chorus
Oh ye'll tak' the high road,
and I'll tak' the low road
An' I'll be in Scotland before ye',
But wae is my heart until we meet again
On the Bonnie, bonnie banks
O' Loch Lomond.

君達は地上を行き 我は地底を行く
悲哀を胸中に
再び会う日までは
愛すべき美しき岸辺
ローモンド湖

ボニーバンクのボニーはボニーチャーリィーを暗示させます。
また、スコットランドには戦いに負けた兵士は、妖精が地底の道を案内し魂を故郷に返すという言い伝えがあります。

敗走する敗残兵と亡くなっや戦友がともにスコットランドでめぐり逢おうと歌っているのです。

この後ジャコバイト軍はインバネス近くのカローデンムーアで、カンバーランド率いるイングランド軍に壊滅させられ、スコットランドはその後何十年もイングランランドの圧政のもとに苦しむことになります。

あまりラグビーの応援歌としてはふさわしくないような気もしますが、その悔しき思い、悲しい思いを、今ここで晴らそう事なのでしょうか

 

ローモンドスチル

スコッチ好きにはローモンドには特別な思いがあります。スコッチは2つのスチル(釜)で蒸留して原酒を作るのですが、一部で特殊なスチルが採用された例があります。それがローモンドスチル。

カナダのハイラムウォーカー社が米国の禁酒法時代に密造酒で儲けた金をスコッチに投じたおかげで、スコットランドのウヰスキーづくりも維持発展できました。

そのハイラムウォーカー社が導入した画期的なスチルがこのローモンドスチルでした。

円筒形で中に仕切り板があり、アルコール蒸気の流れをコントロールできます。インバブーリンやグレンバーギ、ミルトンダフなどに次々に導入されましたが今ほ稼働していません。オークニー諸島メインランド島のスキャパ蒸留所にはその原型だけが残されています。

ローモンド湖の近くにある、ロッホローモンド蒸留所ではまだ旧来のローモンドスチルによく似た形のものを使用されています。

ローモンドスチルで蒸留されたスコッチ、ミルトンダフのモストウィー、グレンハーギのクレンバーギのグレンクレイグともに短年間しか販売されていない幻のウイスキーです。

筆者はまだお目にかかったことがありません

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