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1、ジャパンかNIHONかNIPPONか問題
1912年ストックホルムのオリンピックで、初参加した日本代表団の金栗四三は、海外からの「ジャパン」という呼び方に頑なに反対し、NIPPONというプラカードを持って行進したという話は有名である。
JAPANは日本の英語表記名であり、元々はマルコポーロの東方見聞録のジパングからきている。ただし、ジパングの語源については諸説ある。日本人が日本という国を意識したのは、ペリー来航の時からであり、その前までは日本という統一国家はなかった。徳川も自分の領地を持つ諸侯の一つでしかなかった。
日本はNIHONNなのかNIPPONなのかの問題がある。
これまでもなんども議論されており、戦前には一度ニッポンが正しいと決定されたこともあった。ただし、定着はしていない。現在ではどちらも正しいとされている。NHKでは、正式に使うときはNIPPONで、日本銀行はNIHONNなどを両方を使っている。若者の方がNIHONNを使う傾向にあるということである。
日本橋(ニホンバシ)は江戸東京、日本橋(ニッポンバシ)は大阪である。オリンピックなどでの日本選手への応援の仕方は、「NIPPON、チャチャチャ」である。
サッカーなどは日本代表というが、なぜかラグビーだけが昔から日本代表のチームのことを「JAPAN」と呼ぶ伝統がある。大西ジャパン、宿沢ジャパンなど。野球などがサムライジャパンと言い始めたのは最近のことである。ラグビーは日本代表に選ばれることを「JAPANに選ばれた」という。野球やサッカーでは「日本代表に選ばれた」と言っても「ジャパンに選ばれた」とはなかなか使わない。
2、大韓民国とコリア問題
日本では韓国と縮めて呼んでるが、大韓民国が正しい。現地の発言では大韓民国=テハンミングである、スポーツの応援で「テーハミング」というので馴染み深い。(客観的にみて自分の国の名に「大」などという大それた形容詞をつける国は少ない、日本も確かに昔は大日本帝国と言っていた時代があった。)
コリアは大韓民国の英語表記であり、これもマルコポーロの東方見聞録コウリャからからきている、コウリャは高麗のことであった。高麗は10世紀から14世紀に朝鮮半島を統一した国家であった。英語表記の正式名称はRepublic of Koreaである。
3、グルジアからジョージアへは問題解決
格闘技とワインの国、最近は元大関栃ノ心やラグビーでも有名なGeorgia(ジョージア)は、日本ではかつてグルジアと呼ばれた。グルジアはロシア語読みであり、1994年からは日本政府はジョージアという呼称に統一している。ジョージア政府から呼称変更の依頼があっての対応となった。旧ソ連時代の呼び名から脱却しようとする動きの一環である。
ジョージア州との混同という問題もあり、ビートルズの曲「バックインザUSSR」でジョークのネタにされたりもしたが、ジョージア国とジョージア州では話し合いが行われこの問題も解決済みとなっている
4、イギリスという国名問題
一般的日本人はこの国のことをイギリスとひとまとめに呼んでしまう。イギリスは完全な日本語である。正式には United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland=グレートブリテン及び北アイルランド連合王国である。長いので英語表記でもユナイテッドキングダム=UKと略されることが多い。日本人が親しみを持ってイギリスと呼んでしまっている事が、日本での誤解が生まれてしまう元になっている。イギリスとは元はエゲレス、イングランドが訛っものでしかないのに、それを一つの国と思ってしまい、スコットランドやウェールズや北アイルランドが違う文化を持った違う国であり、同一の王を持った連合国家であるということが日本ではなかなか一般に浸透しない。(一部のサッカーファンやラグビーファンだけは理解されている)
ブリテンとはケルト人の民族の一つブリトン人の住む土地という意味である。グレートは「偉大な国」という意味ではなく、ただ単に「大きな」という意味に過ぎない。それでは小さなブリテンが存在するのかあるのかというと、これが存在する。フランスの北西部ブルターニュ地方がそれに当たる。実はこちらの方が先であり、この地方よりも少し大きいブリタリアが海の向こうにあるということでグレートブリテンと名付けられただけである。インランド人が自分の国のことを威張って「グレート」と名乗っているわけでなない。
5、オランダからネーデルランドへ問題
オランダというのも完全な日本語である。ポルトガルでの呼び名Holland(ホーランド)が訛って日本に伝わりオランダになった。ホーランドは世界的にも通称として使われていたが、オランダ政府は2020年1月を持って国名としてホーランドを使うことを禁止する旨声明を出している。これは観光立国としてのブランディング=マーケティング戦略の一環である。正式名称は「The Nederland」ネーデルランドは単に低い土地であるという意味であり、Theがつかないと国名にはならない。Hollandは一部の州の名前を指すに過ぎない。オランダ政府は2020年1月から国を表す言葉としてあらゆる出版物、印刷物からHollandの名前を消した。
日本にとっては鎖国の江戸時代に唯一交易が認められた国であり、世界情勢ならび科学、医学などはオランダを通じて日本に入ってきた。蘭学と言って江戸時代の日本にとっては西洋=オランダだった。
オランダ人の漂流者ヤンヨーステンは江戸幕府に信任され大名待遇を受けた。日本名は「耶楊子」(やようす)と呼ばれ、江戸城近くに屋敷を持ち日本の妻をめとった。東京駅の八重洲口の名前はこのヤンヨーステンの日本語名から名付けられている。
また、南アフリカのケープ植民地にオランダ系移民が多く移り住んだ。そしてアフリカーナという集団となり、白人至上主義をとり、黒人を差別した。彼らが熱狂した娯楽がラグビーである。南アフリカのラグビー選手にオランダ系の名前が多いのはこのためである。今では多くのオランダ系ラグビー選手が日本でプレーしてる。
日本では馴染みの深いオランダであるが、このオランダという国名が日本語から消えてしまうのだろうか、ちょっと寂しい。
ちなみに、オランダ語やオランダのという時のDutch(ダッチ)という言葉には、幾分差別的なニュアンスがあるので、使用にあたっては注意されたい。
6、アメリカ合衆(合州)国問題
アメリカ合衆国の正式名称は United States of America. 略してUSA。アメリカは13の植民地がまとまって、イングランドから独立した国である。今でも州(States)はそれぞれが国として機能している。従っって州ごとに法制度は異なる。ただし、連邦政府に防衛権や外交などを任せている。
民(衆)が集まってできた国ではなく、国(州)が集まってできた国であり、厳密には「アメリカ合衆国」は誤訳であり、「アメリカ合州国」が本来の意味を伝える。
多民族国家ではある。理想は合衆であろう。しかし現在は移民問題や民族間、世代間の資本家、労働者などの分断が広がり、合衆国たる理想とはかけ離れた方向に向かってしまっている。
(アメリカ合衆国をアメリカ合州国としたのは、本田勝一の著書からである)