2023RWCフランスへの準備 JAPANーTONGA戦レビュー(あと40日)

 

1、まさに薄氷の勝利

まさに薄氷。薄氷の勝利。
何度も薄い氷を踏み抜きながら、なんとか運よく水の底までは落ちなかった。

とても危なっかしい、80分間。
それでも薄い薄い氷の上を向こう岸まで渡り切ることができた。
暑い暑い大阪の夜、氷は思ったよりも薄く薄くなっていた。
実際にはそこ彼処に亀裂が走り、すで大きく割れ始めている。そこにそのまま留まっていれば、冷たく厳しい氷水の中に落ちてしまう。猛スピードでとにかく足を動かし前へ進まねばならない。もちろん後ろを振り返る余裕などない。

薄い氷の下は冷たい冷たい水の中、這い上がることの出来ない奈落である。
そこまで落ちてしまったら最後、いかにスタジアムには2万のサポーターが居ても、歌姫ミーシャが応援のテーマ曲を歌って盛り上げようとしても、一般のファンはもう振り向きはしない。手の届くところは遥か彼方になる。声の届くところには何も見えもしない。

ともかく、薄い氷を踏み抜きながらも、JAPANはガムシャラに前に進むことで向こう岸にいけた。

最後は、松島幸太郎の両手のタックルが向こう岸の縁をしっかり掴んで、冷たい氷の水の中にずり落ちるところから、寸前でチームを救った。

2、35%と数字の意味

ラグビー で優勢度を測る指標の一つにテリトリーとポゼッションというものがある。テリトリーでもトンガ に大きく差をつけられたが、なんとこのゲームJAPANのポゼッションの数字が35%なのだ。

ポゼッションとはボールを確保している時間の割合いを言う。
ポゼッションが35%ということは65%ディフェンスをしているということを示す。これはラグビー界の常識の範囲内では普通なら勝てない。

それでも勝てると言うのは、相手のアタックがうまくいかなかったこととか、こちらが少ないチャンスを確実に得点に結びつけた結果であるのが普通である。

今回の勝利は、その2つとも違っている。ジャパンのアタックがとてもうまくいったとは言い切れない。課題である得点シーンでのミスの発生の問題は改善されていない。相変わらず得点力は低いままである。Gキックは外すし、ブレークの瞬間にそのボールがつながらない。

今回はディフェンスが奇跡的に機能したと言うことと、やはり相手のアタックが今一歩だったことの2つが微妙なバランスの上に成り立っているに過ぎない。(相手がオールブラックスXVだったらあと3本はトライを取られていただろう)

この日もフィジカルに長けている相手を1対1では止められない。対策のダブルタックルは奇跡的に最後までうまくいった。(うまくいかなかったとこもあったが致命傷にならなかった)。ダブルタックルは一歩間違えば赤いカードが待っている危険性が高い。先週リーチその落とし穴にハマってしまった。この日はその危険性から2人目のタックルが甘くなるのではと危惧していたが、その心配はなかった。JAPANが前に進むには他に選択肢がなかった。やるしかなかったのだ。そのタックルの回数はなんと154回、タックル成功率は90%。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タックル成功率は普通は80%程度。85%以上は及第点と言える。90%を超えれば素晴らしい。しかもそれを154回もしていると言うことはほとんど守っていると言うことが数字に現れている。驚異的な数字だ。

ファンとしては勝利は喜ばしい。素直に喜んで良いと思う。

しかし、喜んでばかりはいられない。
これまでは、課題が少しずつ解消して着実に成長しているように見えた。しかし、この日のゲームではまだまだ解消されない問題が山積みで残されたままである。

ディフェンスではまだ大外の穴を埋める手立てが見つかっていない。キックオフディフェンスでのミスが多く、点を取った後すぐに取られる症候群に陥っている。様々なサインプレーを惜しげもなく出しているが、成功率は50%以下である。精度が足りない。それに加え、この日の李君のキックはさえなかった。キックオフは10m届かないし、自陣からのキックは距離が出ない。簡単なGKも外してしまった。フル出場の長田もほろ苦かった。チョークタックルの洗礼を受け、また決定的なパスチャッチをミスしてしまった。

ヴァル、ガンター、タタフらが復帰し実戦経験が積めたことが微かな成果となるに過ぎなかった。

3、次週さらなる試練のフィジー戦

来週はさらに試練が待っている。

実はこの同じ日、遥か南の島のアピアのスタジアムでは、フィジーがあの札幌に現れた巨漢集団のサモアをフィジカルとスクラムで圧倒した(33−19 )のだ。フィジーのメンバーは体格、体重はサモア以上である。その上スピードもサモア以上である。サモアが巨漢なら、フィジーは重装車である。サモアのような巨漢でもそれが人間である以上は歯が立たなかった。ジャパンの来週はかなりの劣勢が予想される。
国内最終戦である。どのような手を使っても勝ちで締めくくり、欧州へ33人を気持ちよく送りたい。

もはやなりふり構わぬ全力抗戦が欲しい。

スクラムは押されるのを覚悟して、マイボールはダイレクトフッキングし、押されても反則を取られない押され方を練習し実践すべきだ。最新のスクラムマシンを有効に活用したい。しかし、その前にミスをしないことだ、ミスはスクラムになり、スクラムはペナルティにつながる。ペナルティは陣地をとられ、得点に繋がる。特に相手ボールのキックオフのボールをキャッチミス、パスミスはいけない、ある程度安全に敵陣深くに蹴り返すことを望みたい。

ラインアウトも劣勢になるだろう。マイボールの確保のための工夫が必要だ。前へのスローでも良しとすべきである。

タックルはレッドの危険を冒してでもダブルタックルを続行すべきだ。1対1で止め切れるのはガンターくらいであろう。フィジー は上背があるので、相手が低くならない限りハイタックルは避けられる。

 

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