開幕明治戦の勝利につづき、帝京も撃破し、今季の筑波は躍進している。
昨年の筑波は、慶応には勝利したが、明治、帝京に0点におさえられ大敗し、青学にも破れて、6位と低迷、大学選手権を逃した。
その筑波が、初戦の明治、慶応に続き帝京にも勝利し、今季序盤の競合相手に3勝1敗(勝ち点16)で折返しだ。後に残すは今季まだ勝ち星のない日体、立教、青学戦を残すだけ。この時点で大学選手権出場をほぼ手中にし、それどころか、対抗戦1位の可能性さえ見えてきた。
昨日の帝京戦の勝利は感動ものだった。
4点差で迎えた筑波ー帝京戦のラスト80分を過ぎての攻防。意地のぶつかりあい。あとのない帝京の重ねる猛攻に全員で食らいつく筑波のディフェンス。じりじりと下げられる帝京のアタック。フェイズはついに36をカウントする。と、その刹那ぽっかりディフェンスに穴が空あいた。ここぞゴール前まで一気に攻め込む帝京。善戦の筑波もここまでか、、、、、。
まさに手に汗握るとはこのことだ。
毎年チームが変わる学生ラグビー。一期一会の対戦。4年生の秋は一生に一度しか巡ってこない。いや1年生の秋、2年生の秋も人生に一度しかないのだ。そこでどのような、プレーが出来、どういったラグビーのゲームを作り上げられるのか、それは強いライバルとなる相手校があってこそなのだ。そこで勝っても負けてもそれは貴重な宝物なのだ。
昨今色々批判もある大学ラグビーだが、だから大切なのだ。世界に誇れるラグビー文化として世界文化遺産にしてもいいくらいだと思う。
筑波の帝京戦の勝利は10年ぶりとのことだが、10年前、連勝中の帝京にストップをかけたのも筑波だった。
この日試合に負けた帝京も素晴らしかった。アタックは脅威敵だし、ディフェンスも穴がなく素晴らしい。悪いところはあまり見当たらない。筑波のエリアマネジメントがそれ以上だっただけだった。
帝京は昨年早稲田に対抗戦で負けてから、チームが変わり大学選手権優勝をとげている。負けた後の帝京は怖い。このゲーム落としたことで、この後の早稲田、明治戦で爆発するのではないかと思うと不気味になる。
ここまで一気に思わず熱く語ってしあったが
次には筑波躍進の要因をすこし冷静になって分析する
1)徹底した楢本のエリアマネージメント
4年生になったSO楢本の左のキックで、徹底して相手陣内の時間を多くするラグビーを展開していることが大きい。ハーフウェイはおろか、相手陣10mからもエリアをとるキックを使ってくる。キックもロングキックやハイパンや低い弾道のキックなど多彩である。楢本はこれまでプレースキックも安定している。(実はこの日だけはゴールキック3本とPGも外し、DGも狙うが外す、タッチキックもミスキックになるなどこれまでとちがって、非常に調子がわるかった。)
相手が自陣深くから逃れようとタッチキックを蹴ってくれば、相手陣内での筑波マイボールラインアウトからの攻撃になる。しかも今年の筑波はラインアウトが強力である。ラインアウトが安定していればこそ選択できる戦術なのだ。
これで、格上の明治、帝京は筑波の術中にはまり、前半に自陣の時間が多くなり、狙いのトライを量産することができず、僅差の勝負に持ち込まれてしまった。
(今のジャパンの格上とのテストマッチの戦術としては大いに参考にすべきだ)
しかし、早稲田戦だけはちがった。早稲田のインテリジェンス陣は早稲田は筑波のこの戦い方をすでに分析していた。コイントスで勝った早稲田が迷わず風上をとって、服部君のキックもあり、筑波のエリアマネジメント戦法を有効に機能させなかった。
2)ラインアウトの優位性
上記のとおり、徹底したエリアマネジメントを可能にしているのが、楢本のキックだけでなく、ラインアウトの優位性である。そこは2年生になった191cmの中森の存在が大きい。解説の野沢によれば、高校時代に3m15cmを超える脅威のジャンプ力だったという。3年生になった磯辺、白丸という高校代表クラスのロックコンビもいて、相手ボールのサインも研究されており、コンテストすればそのうち2−3本は確実にスチールもできる。結果、相手のラインアウトで確実に獲得されるのは半分以下となる。
3)スクラムの安定
ラインアウトだけでなく、今年の筑波はスクラムが安定してる。3番2年生の茨木弟が素晴らしいが、それ以上に8人全員のパックで一気に仕掛ける呼吸の一致がすばらしい、このスクラムで明治、帝京、慶応を圧倒した。帝京には森山という日本代表に呼ばれた逸材がいながら、筑波の術中にはまってPGをとられてしまっている。
実は筑波のスクラムは日本代表の竹内がコーチとして参加し指導している。今や武器の一つになった日本代表の世界のスクラムがそのまま筑波に伝授されているのだ。その指導の成果かと思えば、納得できるのである。
4)中森、内田のスター性
2年生になった中森は、ラインアウトだけでなく、ボールキャリーでも飛び抜けた瞬発力と運動量を発揮している。キャリーで前にでて、今度がタックルを決めたと思いきや、ライン際に残っていてWTBなみのステップと走力をもってトライと取り切る。筑波の先輩でパナソニックに行った谷山を彷彿させるが、その谷山をもう一回り大きくしたようなタイプである。一つ一つのプレーぶりだけでチームが元気になる。ペネナラのような存在でもある。
そして、中森と対照的に167cmと小柄なのに活躍してるのが、今年はいった内田である。相手を置き去りにするそのスピードは筑波の先輩の福岡堅樹のデビューのころを思いおこさせる。ボールを持っただけで何かが起きそうなワクワク感がある。小柄なからハイボールキャッチにも強い。本来はWTBなのだが、キック力もありFBとしてデビューした。右足のキックはどんな体制からも確実にコントロールされ距離も出る。佐賀工業では早稲田の服部の一学年後輩にあたる。佐賀工業恐るべし。
5,チーム全体の粘り強いディフェンス
これは冒頭に書いた通りであり、全員が体をはったタックルをみせる。これは感動的である。
6,その他
帝京戦では、増山が復帰して、内田がWTBに専念できたことや、この日12番に入った大内田のキャリー、ナンバーエイトに入った本来フッカーの浜浦、1年生のSHだがWTBとして途中出場し、いきなりトライを記録した深田など、この日変わった選手が期待通りの活躍をみせた。チームとしての充実度が見て取れる。



