強豪国を相手に4点差。 惜しかった。
ジャパンには数多くの感動のプレーが見られた。
江良君は目の覚めるようなタックルを連発。ガンターが体も体を張り続ける。リーチはフラフラになるまでオールアウトする気力のプレー(なんど21タックル、12キャリー、ゲイン37m)。ゴールを背にしても簡単にトライを取らせない全員での粘りのディフェンス。ジャパンのタックルは226回で失敗は6回だけ、実に成功率は98%(90%を超えれば優秀と言われる数字である)。相手を仰向けにするドミナントタックルも4,5回は見られた。
前半にシンビンを2人もだし、リードもされながら、精神的に最後までくずれない
昨年度の課題を克服して、タフなチームに成長している。
予想通りの接戦。
相手を3トライ以内に抑え込めた。
しかし、それでも4点差。届かなかった。
雨でなかったなら、パスが通っていたらなど、タラレバは言うまい。
ワラビーズもお互いに必死に力を出し尽くした結果であった。
このワラビーズ、たしかに主力の選手は出ていなかった。
3番のアラアラトゥア、トゥポウはじめ、スターの仲間入りをしたマックライト、スリワリ、ヨーゲンセン、という今年チャンピオシップで活躍した選手は、コンデションや欧州のクラブの事情などで出場していない。
しかし、ジャパンを相手にシュミットHCに慢心があったかといえばそうではない。このようにジャパン戦で主力を温存させざるをえないHCのシュミットには意図があった。
シュミットHCは、聡明な指導者でありジャパンの実力を身にしみて理解している。ジャパンには、アイルランド代表を率いた静岡で黒星をつけられた苦い経験があるのだ。そのときは体調の万全ではないセクストンをベンチから外したのだった。
シュミットはこの日本戦を前にジャパンのPNCのフィジー戦などを入念に分析していた。そして、下川がキーマンであることを結論づけている(当然だが、まさにラグビーを深くわかっていらっしゃる)。
ワラビーズは23年W杯ではベスト8を逃し、一時はユニオンラグビーの国内人気の低迷のなか、27年自国開催のW杯にむけて、ここまで順調にチームを成長させてきた。ライオンズ戦を経て、南アフリカに22点差をひっくり返すまで盛り返してきた。人気ももりかがってきている。このあと欧州へ遠征し、1日にはイングランド、つづいてイタリア、アイルランド、フランス戦が控えている。この秋で更に選手層を熱くしたいのだ。手強いジャパン相手ににチームとして成長する機会と捉えていた。
実際に主力が出せれば、この僅差の勝負になったかはわからない。しかし、今のジャパンはどんな相手にも接戦にもちこくだけの自信がみなぎっている。シュミットにとっては4点差の勝利というのは、意図通りの成果であったはずだ。
この日電撃的にキャプテンに抜擢された、クレスペグニーはキャプテンとしても素質を十分にはっきした。先制のトライはクレスペグニーのものだった。
ジャパンの武器をラインアウトと見極め、ラインアウトも対策してきたが、対策で、先週のオーストラリアAで活躍したジョジュキャラムを控えに据えた、そのキャラムもそうそうに怪我で本来のハリー・ウィルソンを投入、クレスペグニーは急遽ロックに上がるという布陣ながら、ラインアウトでも奮闘している。
このタフなゲームに結果をだしたことで、ワラビーズはさらなる成長を告げることになるだろう。
エディ・ジョーンズにとっては、母国との対戦であり、さらに23年W杯で若手を中心に戦ったが、エディ流の選手選出にも国内で批判が集中し、その座を追われる形でジャパンの監督に就任したのだった。その時、エデイさんに認められた選手や切り捨てられた選手などがたくさん残っているのが、いまのワラビーズである。エディさん自身もふくめ、そんな選手やコーチ達は複雑な思いもあったはずだ。
大さんのTV解説では、ジャパンのガンターとハリーウィリソンが幼友達だったことや、ライリー、ホッキングスのオーストラリア時代の逸話などがきかれた。ゲーム終了後には、仲良く談笑する姿もみられ、眩しく微笑ましかった。
日本とオーストラリアのラグビーを通じた深い関係が垣間見られて、このゲーム双方が視力を尽くした結果、接戦となった素晴らしいゲームであったことを感じ取れた。これぞラグビーのもつ「力」であると思う。この光景はもしもジャパンが少差勝ったとしても同じように繰り広げられたに違いない。
ジャパンに話をもどせば、今のジャパンは選手が固定してきており、チームとしての信頼関係が築けている。フィジー戦、ワラビーズ戦と引き続き、どんな相手にでも接戦を繰り広げられるチームになってきた。それが自信に繋がっている。課題のゴール前のディフェンスも粘り強くなってきた。連携ミスによる失トライもすくなくなっている。来週からの欧州遠征が楽しみでならない。
しかし、不安材料が無いわけではない。先週のオーストラリアA戦で大敗したジャオンXVと比較すると、レギュラー陣の成長はすばらしさがめだつのだが、その分、その下の選手のレベル差が開いているように思われてしかたがない。このゲームで活躍した江良選手、中野選手は怪我が心配だ、おそらく南ア戦には間に合わないだろう。矢崎も欧州遠征には参加しないはずだ。オールアウトしたリーチもリカバリーが間に合うのかなどなど、、、。松永、ローレンズ、サムグリーンは計算できるとしても、その後は誰がその穴を埋められるのか?
思えば昨年の欧州遠征では、相次く激しい戦いで、主力の怪我による離脱があり、最後には人材不足になり窮地におちいってしまった。
今回の欧州遠征は 南ア、アイルランド、ウェールズ、ジョージアと順に対戦する。今日のこのゲームの結果で、南ア、アイルランドは、もてる主力級を出してくるに違いない。南ア、アイルランドで多くのけが人がでてしまうと、ランキングの近いウェールズ、ジョージアとの戦いで経験の浅いジャパンXVの選手を急遽よびだして使うことになりかねない。南ア、アイルランドとウェールズ、ジョージアでは明らかに強度が違うのだが、12月3日の抽選会時点で12位以内を確保するには、ランキングの近い、ウェールズ、ジョージア戦のほうがゲームの重要度は高いのである。
昨年のような人材不足による敗戦とならないように、27年大会を想定し、3番手4番手の選手層のレベルアップを期待したい。
最後に
雨の中4万人を超える動員を記録した。彬子女王も両国選手レフリーを祝福した。国歌斉唱も有名歌手が登場した。いくぶん世界のテストマッチらしい水準に近づいてきたように思われる。しかし、応援を煽るアナウンスは見苦しいし、陸上トラックの茶色い姿が見られるグランドは情けない。横浜でのテストマッチように緑の人工芝で覆ってほしかった。






