PNC ジャパン カナダ戦 レビュー

2011年W杯、南半球は春

ニュージーランド北島、東南の端の町ネイピアの空は曇っていたという記憶がある。帰り道に聞こえてくる「上を向いて歩こう」が無情にも寂しかった。カナダのDHファンデルメルバのトライで引き分け。フランス大会のボルドーに続き、2大会連続の引き分け。またもやW杯での勝利をあげることなく帰国することになった。

思えばあの時がきっかけだった。

帰りの便の道中、言葉を失っていた田中史朗はハイランダーズの門を叩く決心を固めた。同じ時間にHCのカーワンは、帰りの便にも乗らずに現地の朝のワイドショーで談笑していた。まもなくエディ・ジョーンズ就任のニュースが飛び込んだ。

あれから13年。
その後のジャパンの躍進はご存知の通り。

その後のカナダのほうといえば、
15年の大会は、フランス、アイルランドに大敗し、イタリア、ルーマニア戦も落として全敗。
19年の日本大会の前は不調で出場が危ぶまれ、最終予選で最後にやっと出場権を得たものの、初戦のイタリア、NZ、南アに大敗。釜石のナミビアのゲームは台風で流れてしまった。それでも、台風の片付けのボランティアをかって出たカナダチームは日本に好印象を残して帰っていった。
しかし、23年のW杯は南北アメリカ予選、USA、ウルグアイ、チリとの接戦にやぶれ、初めて出場を逃してしまった。

そして今日のバンクーバー。
ここバンクーバーは昭和5年9月24日、ジャパンの初めてのテストマッチが行われた地でもある。

第二次エディ体制、なかなか勝ち星のないジャパンが今回こそスッキリ勝つのを観たいと思う反面、カナダの奮起を期待したいという複雑な気持ちもあった。

会場は5万人は収容できるという人工芝で大型モニター付きの最新のスタジアムだが、残念ながら客席はまばら。カナダ協会はルーマニア戦の中継でもチケット販促のバナーを出すなど大掛かりなキャンペーンをはったようだが、効果はいまいちだったようだ。でもスタンドにはカナダの赤いジャージの熱心なカナダサポーターが多い。そしてジャパンの応援にも新旧のジャパンのジャージ姿というコアなサポーターが多く駆けつけている。

キックオフからジャパンの高速ラグビーが炸裂した。カナダは初めて体験するスピードに面食らったようだった。ジャパンはパスでつなぎゲインを切り続ける。藤原の玉さばきが秀悦、ディアンズも力強く前にでる。ツイタマ、ディアンズ、下川、再びディアンズ、そしてライリーと5本の連続トライで、あっという間に大量得点差が付いてしまった。

カナダは戦半終了間際にジャパンのミスからボールを確保しキックをインゴールに蹴り込みTOKYO2020での7th代表のアンドリューコウが抑える。

前半は7−38で終了。

後半も、最初はジャパンの勢いはとまらず、下川のビックゲインから李くんのトライが生まれる。しかし、直後にキックオフからボールを確保したカナダがジャパンゴール前まで攻め込み、最後は50キャップ超えのキャプテンランボールがトライを決める。(12−45)
前に出続けるとカナダのラグビーである。こうなるとでっかいFWが活き活きとしてくる

先にカードを切ったのはジャパンだった。1列目3枚替え。
しかし、その後の生き返ったカナダのFWは構わすどんどん前にでる。そして、12番23番のマクファーレン兄弟(たぶん双子?)が揃ってトライ。

ナイカブラの独走トライも、小山、立川のハーフ陣交代もカナダの勢いの流れを止めることができなかった。

得点差があっても最後の最後まで攻めるカナダに、途中出場の長田が冷静にインターセプトしてトライしノーサイド。

結果的にジャパンは8トライを取りながらも4トライをとられて、28−55でノーサイド、後半だけななら21−17、長田のトライがなければ21−10という完敗であった。

このゲームどう評価すべきなのだろうか

まず、カードが出なかったのは非常に良かった。反則数は双方とも少なくなくななかったが、カードが出ないゲームは最近は貴重である。

カナダは前半は超速に面食らい、戻りが遅くミスを続けてしまった。レフリングとも合わななく、ブレークダウンで同じ反則をつづけてしまう。ここでカードが出でなくてよかった。
しかし、点数が開いても消沈することなくファイトする姿勢が素晴らしかった。カナダチームは好感度がもてる。イケメンの若きマクファーレン兄弟もスター性満点である。ベテランのランボール主将は19タックル、3つのジャッカル成功と流石であった。アイルランド出身のSOネルソンの左足の正確なプレースキックも魅力的である。SHの長身ヒギンズもキックやパスのモーションが大きいのが難点だがなかなかの二枚目である。

ジャパンはどうだったか
最初の高速ラグビーはたしかに効き目があった。ツイタマもデビュー戦でトライを挙げられたし、下川のフォローや独走もレッドの悔しさやを払拭させるに充分だった。このように今回はそれをトライにまで繋げられた。とここまではうまく行っている。
しかし贅沢を言えば、前半で5トライという大量得点に隠されているがつまらないミスが多い。李くんは3度のハンドリングエラーと、自陣からの危ないキックミス、ノットリリースを取られたりと残念。5トライにとどまらずに更にトライを取れたように思える。

今回超速ラグビーの弱点の一つもまた露呈した。それは、超速をつづけると相手ディフェンスもそのスピードに慣れてくるものだということだ。
前半を観ていて、藤原の玉さばきも素晴らしかったが、そればかり繰り返すと、相手はそのスピードに慣れてきてしまっていた。小山、立川の早い投入もあるかとおもったが、その投入は遅かった。しかも投入された小山、立川は流れを変えることができなかった。ゲームの組み立てをどうするのかや、先発メンバー選定などに課題は残る。

もうひとつが、巨体のパワーに屈したという点である。相手の大型選手達を勢いに乗せてしまってはもう誰もとめられない。ここでも明らかに前半に飛ばしすぎた弊害が出てきている。最初に超速がうまくいき大量得点になったから良かったもののそれがなかったら惨敗という結果であった。

まだまだ道は遠いというべきだ。
それを改めて思いし知らしめてくれたカナダチームには、やはりライバルとして感謝すべきである。
9月7日に対戦するアメリカも同じようなチームである。ジャパンとすれば、その後の準決勝や決勝で当たるだろうサモアやフィジーにどう対抗するかをターゲットにしなければならない。

ここまでずべて先発の矢崎はこの日もこれでいったん早稲田に戻るとの発表があった。早稲田に戻ってのゲームもどのようなパフォーマンスを繰り広げ成長をやめない姿なのかは見逃せない。

カナダチームは来週にアメリカ戦があり、9月14日に秩父宮に登場する。その相手はトンガになるのかフィジーになるか。いずれにしても2027を目指すカナダにとっては挑戦である。そのパワー対決は見逃せない。

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