12月22日秩父宮
ちょっと前になりますが、12月22日の秩父宮の大学選手権第1試合のことです。
当日は小雨が降っていて、メインスタンドの屋根のある観客席は満席になっていました。
私の斜め後ろの席に、私と同じぐらいの年配のラグビーファンが、初めてラグビー場に来たと思われる何人か(女性)を連れて観戦に来ていました。
おじさんの得意げな名解説
プレーが止まるたびに、そのおじさんはわかりやすくルール解説をしており、一緒に観戦している女性達はその解説で理解できるようでした。
一緒の女性達もその年配のおじさんのことを次第に尊敬する様子で、おじさんもまずます、解説に調子が出て熱がこもって来ます。ゲームも白熱して来ました。前の席の私にはちょっとうるさく鼻につくくらいだったのですが、まあ微笑ましいので許せるかなという感じでした。
ゲームは最後まで拮抗し、4点差のままゲームが終わるところでした。終了直前でスクラムが崩れ、慶応がコラプシングの反則を取られます。
そして、その直後試合終了のホーンがなります。
ルール変更を知らない悲劇
その時、おじさんの大声がします。「蹴るな、出せば終わりだ、早く攻めろよ」
しかし、早稲田の 岸岡くんは冷静にタッチに蹴り出します。
おじさんは今度は小さく叫びました「バカヤロー、ルール知ってんのか」
早稲田はその後ラインアウトからゴール前に攻め込み、その後の3分以上も続く連続攻撃で、早稲田が逆転のトライをとって勝利を収めたのです。
おじさんは、終わってからも
「レフリーが笛を吹かなくてよかった、よかった助かった」と周りに説明していました。
それまで、試合中は得意げだった声も今度はちょっと自信なさげでした。
(この後一緒に観戦していた女性達との関係がどうなったかはわかりません。)せっかく女性達の尊敬の眼差しを勝ち取ったのに冷めてしまっては悲劇です。
タイムキーパー制
このおじさんは多分昔のラグビーのファンで久しぶり観戦にきたのでしょう。もしくは学生ラグビーしか観戦したことがなかったのでしょうか、トップリーグなどで採用されている「タイムキーパー制」のことを理解していなかったのです。
タイムキーパー制では、 ケガや注意の時にレフリーが時計を止めて80分になった時点で会場にホーンがなり、その後プレーが切れた時にノーサイドの笛がなることになるます。しかし 1)ペナルティーではゲームが終わらずペナルティーキックで継続する。 2)ペナルティーキックで蹴り出しても、蹴り出したチームのラインアウトで継続する 3)ゲームを終わらすためには、いわゆるチョンげりしてから蹴り出せは、(もしくはボールを持ってタッチラインを踏めば)タッチとなりノーサイド 最近の攻撃側有利のルール変更の流れの一環です
このおじさん早稲田のファンのようだったのですが、せっかくの早慶戦の歴史的逆転劇なのに、ルール変更を知らなかったばっかりに、(いやなまじ昔のルールを知っていたがために)素直に感動できないという非常に残念なことになってしまったということです。
教訓
この現象からは色々と考えなければならないことがあります
1)知ったかぶりで過剰に得意げになるのはやめましょう
2)久しぶりの観戦で、ルール解説を頼まれたら、最近のルール変更は勉強しましょう
3)自身がなかったら、実は最近は知らないことをカミングアウトしておきましょう
4)秩父宮ではルール解説のFMラジオがあります。レフリーチャンネルも解放されています。自信がなければ聴きながらの解説をお願いします。
問題はルール変更が頻繁にありすぎること
しかし本当の問題はルール変更が毎年のようにあることです。
またルールが同じでも笛の傾向が変わります
ワールドカップも近くなって盛りがってくれば、昔のラグビーファンもスタジアムに戻ってきます。また新しいファンも一緒についてきます。ラグビーはルールが難しいとされるので、昔ラグビー部だった人などは、解説できたりするので重宝されたりするかもしれません。
私としては、昔のファンやプレーヤーにスタジアムに戻ってきて欲しいし、得意げに仲間にルールの説明してもらいたいし、初めての人をスタジアムに連れてきてほしいです。
最近のルールがわからなくても、是非ともエスコートをやめないでください。ラグビーの面白さを伝えてほしいです。
現在の花園の高校生大会のこと
一昨日から始まった、高校ラグビー1回戦では、今年から下記のルールでペナルティの笛が吹かれるケースが多くなっています。
ボールキャリアは頭を下げてのアタックは禁止、相手にペナルティーが与えられる。
確かに、何年も前から競技規則にはルールとして掲載されていますが、これまでは、このケースで笛が吹かれることはあまりありませんでした。
今年から安全対策上、厳格にとるようになっているようです。
花園ではレフリーも進行上選手とコミュニケーションをとって、頭を下げすぎないように注意しているようで、それでも腰よりも頭が下がった状態でのアタックに笛を吹いているようです。しかし、地方の予選のレフリングとは違った笛に高校生が対応するのは難しいかもしれません。
逆転を狙ってゴール前まで攻め込み、何度も継続してサイドアタックをして、最後に頭が下がってペナルティーで相手ボールでは悲しすぎます。
オールドファンも「なんで今のが反則なんだよ」とストレスもたまることになってしまっては、こちらも悲しいです。
国際基準のレフリングの傾向
国際基準のレフリングをレフリーも選手も観客も早く知って対応することが重要なのでしょう。
国際標準の笛ではもう数年前から安全重視になってきて、下記のプレーに厳しく笛が吹かれています。TMOで確認され、イエローや一発レッドの対象になります。
厳しく吹かれすぎるので少し緩和したほうが良いのではと議論され始めているくらいです。
空中での接触プレー(タックルインジエアー) 故意のノックオン(インターセプトを狙ったか不明確) ブレークダウンでのタックラーのキャリアへの働きかけ ノーバインドのタックル ノーバインドのスイーププレー 足を刎ねあげるタックル(スピア) ブレイクダウンでの首を持ってのはがし(ネックロール) また 脳震盪の疑いのある場合の処置が厳格です トップリーグ以上ではHIA制度が採用 それ以下のカテゴリーでは疑いがある時点ですぐの交代 倒れている選手をすぐには動かさない 首の固定の処置
オールドファンは、激しいプレーにナイスと声をあげていましたが、いまはペナルティーの対象です。
「やかんの魔法の水」はもうありません。
スクラムの組み方も厳しくなっています。
声に合わせて組む
ボールが入るまで押さない(引かない)
真っ直ぐに押す
SHはボールを真っ直ぐに入れる
落ちれば笛が吹かれ、どちらかにペナルティー
ファンに常に最新情報の勉強を強いるのはあまり好ましくありません。ルールなんてわからなくても楽しめるのがラグビーです。久々の観戦なのにその都度ルールを確認しなければならないのは、客足が遠のきます。
FMラジオか、スマホのFMアプリでルール簡単なルール解説だけがあると良いです。あまり余計なことは入りません。