1、概要
スティープミラーバンドの「Fly Like an Eagle」です。
1977年に全米2位になっています。
なぜこの曲かというと、数週間前車に乗っていて、AMラジオでこの曲を耳にしたからです。爆笑問題の番組にゲストで出演したコメンテーターのモーリー・ロバートソンがリクエストしていました。リクエストの理由が、この曲は現代のことを見据えている歌詞だからということでした。当時私はスペーシーなイントロに惑わされて、SF的な曲かと勘違いしていました。確かにそうです。聞き直しでみると深い内容であることがわかります。
ところで、この曲とこの曲の入っているアルバムの日本語タイトルは「鷲(ワシ)の爪」です。私は当時から鷲(ワシ)と鷹(タカ)の区別がつかなくて、「鷲の爪」のことを「鷹の爪」と言い間違いしてしまうことが度々ありした。(今でもちょっちゅう間違えます)
いうまでもなく「鷹の爪」は、トンガラシのことになってしまいます。最近ではアニメの「秘密結社の鷹の爪」の方が有名になっています。
「能ある鷹は爪を隠す」ってことは言いますが、「能ある鷲は爪を隠す」とは言いません。
漢字で書くと鷹と鷲 (冠が付いているのが鷲です)
英語でいうと 鷹はHark、 鷲はEagle
プロ野球でいえば、楽天が鷲で、ソフトバンクが鷹(これは大きな違いです)
調べてみると、実は双方にあまり違いはなくて、猛禽類のタカ科に所属する鳥の大きなものを鷲、小型のものを鷹と呼ぶ様です。タカ科にはハヤブサなども所属します。
2、歌詞の内容解釈
さて話を曲の方に戻しましょう。
歌詞を確認します。
モーリーロバートソンが指摘したのは、2番の歌詞で「様々な社会問題に解決策がある」って言い切っているところが、今の事を歌っているというものでした。
Time keeps on slippin', slippin', slippin' Into the future Time keeps on slippin', slippin', slippin' Into the future 時は未来の中に滑って滑って滑り続ける 時は未来の中に滑って滑って滑り続ける I want to fly like an eagle into the sea I want to fly like an eagle Let my spirits carry me I want to fly like an eagle Till I'm free Oh, Lord, its a revolution 海まで飛んでいく鷲の様に飛びたい 鷲の様に飛びたい 魂を届けてくれ そうだ、それは革命だ Feed the babies Who don't have enough to eat Shoe the children With no shoes on their feet House the people Livin' in the street Oh, oh, there's a solution はらぺこな赤ん坊には食料を 裸足の子等には靴を ホームレスの人には家を そうだ 解決策はある I want to fly like an eagle To the sea Fly like an eagle Let my spirit carry me I want to fly like an eagle Till I'm free Fly through the revolution 海まで飛んでいく鷲の様に飛びたい 魂を私に届けてくれ 自由になるまで 革命の中を飛んで行け
英語もシンプルで簡単、訳も簡単です。
しかし、意味を考えるながら、今聞いてみるといろいろ考えさせられるところがあります。
論点1
「時間が未来へ滑る」ってどう意味なのか。
滑るには スリップとスライドがあります。
スライドには主体的に動かす(滑らす)様な感じもありますが、スリップは意図とは別にバランスを崩して滑る(スライドする)意味になってきます。
元のスライドには「株価などが悪くなっていく」という意味も持っていますので、この場合、「意図とは別に未来へとどんどん悪くなり続ける」という意味に捉えられると思います。
また TIMEには「時と時の間としての長さの時間」と「空間の反対語で抽象的な時間」の意味の他に「締め切り」「最後」という意味もありますので、「締め切りが先送りされる」という様にも捉えられます。したがって、「問題の解決が先送りされる」ということでしょう。
今聴くと当時の問題や課題が、40年以上もたった今でもまだ解決されずにいるという状況に驚きます。
論点2
「なぜ鷲になりたいのか」
鷲には象徴としての意味があります。
鷲はアメリカ合衆国の国鳥であります。ドル硬貨の裏にも描かれています。
古来から知性、気高さの象徴として用いられていました。古代ローマが鷲を紋章に使っています。宗教的意味があります。キリスト教では聖バウロのことが鷲で表現されます。聖パウロはキリストの12聖人の中でも別格です。
したがって、「鷲の様に知性、気高さ」を持ちたいと解釈できます。
論点3 Let my spirits carry me スピリッツとソウル、マインド、ハートの違い
スピリッツとソウル、マインド、ハート。これ等は日本では全て心とか魂という訳になってしまいます。使い分けられている様で曖昧になっています。
すでに日本語になっているものとして
スピリッツはファイティングスピリッツ=闘志
ソウルフード=郷土料理(もともとは黒人独自の豆などを煮た料理)
マインドコントロール=意識変革
ハートブレイク=感傷的
スピリッツは志
ソウルは霊魂、魂
マインドは意識
ハートは感情です
そうなると
「聖パウロの様に気高く、知性と精神性を持ちたい」その私の志を確かにしてくれ
何のためかというと、それは「革命を通じての問題解決のため」であります。
3、余談(おまけ)
元歌は1973年にすでに作られました。
こちらで視聴できます
当時の歌詞は少し違っています。
Time keeps on driftn,driftn,driftn,
day by day
などとも歌われていて、ここでは明確に問題提起をしています。
問題の「子供たちに食料を、靴を、家のない人に家を」 の部分はすべて、疑問形の形に終わっています。
また、鷲の飛び去る元の土地がインデアン居留地になっています。インディアンのホビ族には鷲の羽には霊的な力があると言い伝えられています。かなり具体的にマイノリティーの問題をとりあげた曲になっています。
スペーシーな雰囲気は、ギターのエコーチャンバーで表現されています。洗練された感じではなく、泥臭い雰囲気でした。スペーシーというか霊的なものを感じされるアレンジです。(そういえば、もともとスティーブミラーブルースバンドでした)
これはこれでカッコいーです。
1976年に改作してヒットしたのは、歌詞を普遍的にして、スペーシーな効果音を入れた事も多分に貢献していると思います。私の様に単純にSF的な魅力だけで曲を楽しんでいる人も多かったはずです。
ここで2006年のライプを確認できます。
この曲には実はさらに元歌があって、WARの72年のヒット曲「Slippin’ into Darkness」です。こちらも結構社会問題を取り上げています。
こちらで視聴ください
スティーブミラーは明らかにこの曲からイメージや着想を得たものと思われます。1976年の大ヒットしはバージョンには、WARへの敬意がクレジットされています。