9月13日ラグビー界に衝撃が走った。
ウェリントンで南アにオールブラックスが大敗した。10−43。33点差。
この点差の敗戦は100年を超える長いオールブラックスの歴史のなかでもワーストという歴史的事件である。
なぜ、オールブラックスがこんな点数で南アに負けてしまったのかを考えたい。
試合経過は、先行はオールブラックスだった。その後も優位だったが、南アのコルビがインターセプトから80m独走のトライで同点、マッケンジーがPGを決め10−7で折り返す。
後半直後、南アキャプテンコリシがラインブレイクし、ウースストハイゼンが長いバスでコルビにつなげて逆転、10−14コルビが仕掛けるとたまらず反則。10−17。10−24。ゲームをきめたのがクワッガスミスのトライだった。
さらに70分過ぎてからも2トライを追加し結果、点差は33点に広がった。
オールブラックスの大敗の直接的原因は、後半点流れを変えられなかったリーダーシップ、キャプテンシーの欠如にあるのは明白だ。キャプテンのスコットバレットの個人の資質の問題ではなく、フォローワーシップなどふくめたチーム作り全体の問題である。もちろんリッチーマコウ、キアランリードのようなカリスマ的キャプテンがいれば話は簡単なのだが、そんな人材は早々現れない。長期的チーム作りという点でヘッドコーチ、協会の責任が大きい。
現在のオールブラックスにはスキルやテクニックでは人材は間違いなく揃っているが、チームの中に体を張ってチームを引っばっていくベテランが少ない。流れを引き戻せるのはそういった選手である。リタリック、アーロン・スミスやTJペネナラ、モウンガなどはチームから去っている。
そこで、NZ協会の代表資格規定の存在という問題が再浮上してきた。これは、海外のクラブに所属している選手は代表に選ばないという規定である。
一方の南アは海外のクラブプレーしている選手を集められれるので、選手層は厚くなる。海外のクラブといっても実はほとんど日本のリーグワンなのである。また、日本という良い環境の中でプレーできることと、成熟しきったはずのベテランプレヤーもまた違ったラグビーを吸収でき、さらに1段成長をとげることで選手生命も長くなっているのだ。
南アフリカのこの日23人のメンバーの中でリーグワン所属は
2番 マルコムマークス 31歳 スピアーズ6年目
4番 デヤハー パナソニック 32歳 4年目
6番 PSデュトイ 33歳 東芝 4年目
8番 Jウィーゼ 30歳 浦安2年目 その前は英国レスタータイガース
14番 コルビ 31歳 サントリー3年目
20番 Kスミス 32歳 静岡 8年目
22番 リボック 28歳 今年度から近鉄ライナーズ
さらにこの日は出てはいなかったが
CTB デアレンデ 33歳 戻ってからも4年目
CTB クリエル 31歳 キャノンで5年目その前はドコモ
SH デクラーク 31歳 キャノン3年目
そして過去に日本のラグビーを経験したメンバーとしては
SO ポラード
LO スナイマン
代表スコッドである。
一方同じような年齢で、日本で活躍する元オールブラックスの選手は下記のとおりである
リタリック 34歳 23年でAB引退 神戸3年目 キャプテン
モウンガ 31歳 23年でAB引退 東芝3年目 優勝に貢献
サムケイン 33歳 24年でAB引退 サントリー2年目
アーロンスミス36歳 23年でAB引退 トヨタ3年目
TJペネナラ 33歳 21年ドコモ 23年でAB引退 24年からブラックラムズ2年目
全員がワールドカップを機会とするなど、年齢の早い時点で人生の選択をせまられ、ニュージーランド代表の座を諦めて、日本に来ている。まだまだ本国で現役でできるはずなのにである
少なくとも、日本でチームの中心メンバーとして大活躍をしているリタリックや、モウンガがこの日のゲームに出場できていれば、こういった敗戦はしなかったはずである。
もちろん、ボーデンバレット(34歳)や、ダミアンマッケンジー(30歳)も日本でプレーしたが、サバディカルを利用しての期間の短いものだった。1年ではいわゆる「お客さん」にすぎない。クワッガスミス、マルコムマークス、クリエルなどが日本のラグビーに長期間真剣勝負で取り組んでいる姿とはわけが違う。
NZのような選手規定をもっているのは、イングランド、オーストラリアであるが、オーストラリアは、特別除外ケースというのを設けて、例外的に代表に復帰で居るいわゆる「ギタウルール」があったが、さらに緩和し、60CAP以上であれば代表資格を得ることができるようにした。
オールブラックスの2027年のワールドカップの優勝にはモウンガの復帰がマストだろう。
この日のメンバーにもし、モウンガがいればこんな負けにはならないだろう。
27日からプレディスローカップが行われる。好調のオーストラルアが相手である。オールブラックスはSHロイガードやクラーク、が戻ったようだ。コーデディテイラーは150キャップを迎えるが、キャプテンのスコットバレットが欠場で、アーディサベアがキャプテンを務める。
不敗神話のあるオークランドイーデンパークの魔法はまだとけるていないだろうか。