イングランド戦 観戦記 その2 

ゲームが終わり、エディさんは、インタビューでセットプレーの検討を自負した。リーチはいいプレーをしてもチャンスで取り切れないもどかしさを述べた。

たしかにそのとおりだ。

1)セットフレー

イングランドはその公式サイトで、全てのゲームのスタッツを明らかにしている。一昨日の国立のセットプレーのスタッツは下記である。(赤がジャパン)

ジャパンはマイボールのラインアウト、スクラムのすべてで100%確保できている。
しかもラインアウトでは1度イングランドのボールを奪っている。

相手をドミネートしたスクラムもあった。これは予想以上の結果である。ゲーム前に不安視していた経験不足のスクラムはとりこし苦労であった。まだ新コーチのオーエンフランクスの指導も徹底していないし、これから経験を踏むだろうことを考えると今後の伸びしろも期待できる。

 

2)超速ラグビー

序盤の20分間は明らかに、世界のドキモを抜く「超速ラグビー」であった。

3番竹内の前への推進力は素晴らしい。ボールを再度ピックアップしての突破など、これぞ「超速ラグビー」であるそして。斉藤のがテンポは凄まじい。ディアンズも長身を活かしたクイックパスなどの玉さばきはスリリングだが確実である。2つのトライはすべてディアンズのアシストから生まれている。愚直に繰り返すキックチャージの試みも相手へのプレッシャーになっている。
原田のスローイングも素晴らしい。

このような高速にイングランドはついていけず、序盤は完全に受けに回っていた。完全に動揺があった。欧州では経験したことのないようなラグビーだ。タラレバはないが、ここでトライを先行していればもっと違った展開になったにちがいない。

試合後リーチの言うように、超速ラグビーであってもトライに結びつかなければ意味がない。高速パスで左右に揺さぶり、攻撃を重ね徐々に前進しても、ゴールラインが近づけばちかづくほどディファンスは厚くなる。ゴール前での攻防に持ち込まれると「超速ラグビー」は機能できない。一発でディフェンスを突破するようなランが必要だ。後半の2つのトライはそのようなクリーンブレイクのランから生まれている。
また序盤のような超速ラグビーを80分間続けるのは、今までの常識から言えば体力的に不可能である。体力の消耗は、ミスを引き起こすとともに、頭脳の回転も送らせ、判断力も鈍らせる。さらに、超速にも相手のほうはスピードに慣れてくる。

野球なら時速150Kの剛速球を投げる投手がいても、それだけでは2回め3回目の打席には目が慣れ、タイミングが合ってくる。チェンチアップやフォークボールがあってこそ剛速球は活きてくるのである。緩急混ぜ合わせれば時速140Kの玉でも160Kに見えてしまうものだ。

また、80分間の駆け引きが必要である。マラソンで言えば、スプリントをかけるべき勝負どころは何度かくる。それが序盤の入りなのか、35Kを過ぎたちょっとした登坂なのか、はたして、スタジアムに入ってからのトラック勝負なのか。そのようなゲームコントロールができて、はじめて「超速ラグビー」はその完成の域になるとみなければならない。

今回は若手中心のスタートダッシュの作戦だったはずだ。相手を崩してゴール前までは進んでも、ミスで終わり、トライチャンスを逃し、3点しか得点はできなかった。

3)キックの攻防

3年前のトゥイッケナムでは、FBのスチワートにキックをことごとくとられ、キックで返され、ランでカウンターを許した。ニースでも警戒はしたが、フォードやSHの多彩なキックで後手に回った。今回も日本に対しキックを使ってくるとは予想できた。20歳の矢崎が絶好のターゲットになる。エディさんは対策は考えていた。矢崎は完全にランナーとして使い。キック処理や陣地挽回のロングキックは李君に任せるような布陣である。
これもイングランドのHPのスタッツだが、矢崎は一回もキックを蹴っていない。こんなフルバックはついぞ観たことない。李くんのキックもほとんどが矢崎に代わってのFBの位置からである。また斉藤も3回しかキックを蹴っていない。

 

 

 

 

イングランドアレックスミッチェルからのキックは10回もある。早いパス回しやランで仕掛けるのは良いが、キックを混ぜることで、ディフェンスの出足をとめることもできる。ディフェンスの裏へのゴロキックなど、ライリーや山沢ならもっと活用していただろうと思われる

4)矢崎の走り

ランに徹した矢崎はそれでもキレキレで2度のディフェンス突破を果たしている。メータメイドは36m。1人二人は躱せてもその後のコンタクトの衝撃でボールを落としてしまうという苦い洗礼をあびた。U20などの大学レベルとは衝撃度がかなり違っていることを体で覚えたことだろう。
後半もゴール前からラックサイドを駆け上がりあわやトライかと思われたが、これは老練なマーカススミスの故意とも思われるアーリータックル(イエローカード)に阻まれることになった。

マオリ戦では再度登場しFBとしてのさまざまなプレーを是非魅せてほしい。

5)マオリ戦の期待

そのマオリ戦の準備の福岡合宿のメンバーが発表になった。イングランド戦でのペテランは休ませ、若手や当落線上の選手に出場の機会をあたえるものになっている。その中で山沢はFBでなくSOで選出されているが、注目したいのは高本幹也のSOである。
フッカーは佐藤くん、SHは小山の先発が考えられる。

PR 岡部 崇人PR 為房 慶次朗PR 三浦 昌悟 森山 飛翔
HO 佐藤 健次 原田 衛
LO 秋山 大地 桑野 詠真 小瀧 尚弘 本橋 拓馬
FL 山本 凱 下川 甲嗣
FL/NO8 サナイラ・ワクァ サウマキ アマナキ ファカタヴァ アマト

SH 小山 大輝 齋藤 直人 藤原 忍
SO 高本 幹也  山沢 拓也
SO/FB 石田 一貴

WTB ヴィリアメ・ツイドラキ 根塚 洸雅 松永 貫汰
CTB 池田 悠希 長田 智希 サミソニ ・トゥア ニコラス・マクカラン

FB 矢崎 由高

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