1,はじめに
「Carrickfergus」と「The Water Is Wide」
アイルランドの「Carrickfergus」スコットランド「The Water Is Wide」のどちらも川や海を渡れないという悲しいバラッドである。しかし、スコットランドの曲はピュアであるのに、アイルランドの曲はひねりがある。これは国民性が現れているといえる。その辺を比較
2,「The Water Is Wide」
この曲は日本でも古くから知られ、朝の連続TV小説 「花子とアン」 「マッサン」で取り上げられた。「マッサン」では、竹鶴の妻であるスコットランド人のリタの愛唱歌として歌う場面がよく出ててきた。日本でも「かなしみの水辺」として知られている。
スコットランドトラッドの「The Water Is Wide」は様々な歌詞があるが、一番ポピュラーな歌詞は、
The water is wide
I cannot swim over
And neither have I
The wings to fly
Give me a boat
That can carry two
And we both shall row
My true love and I
その水辺は広く
向こう岸へ渡れない
飛んでゆく翼もない
二人を運ぶボートがあれば
恋人と二人で漕いでゆくのに
A ship there is
And she sails the seas
She's laden deep
As deep can be
But not so deep
As the love I'm in
And I know not if
I sink or swim
船が一槽
海を航海する
船は深く荷物を積んでいる
それはどこまでも深いけど
私の愛ほど深くはない
そして私は 沈むのか泳ぐのか
I leaned my back
Against a young oak
Thinkin he was
A trusty tree
But first he bended
And then he broke
Thus did my love
Prove false to me
私は背を
若い樫の木に寄りかけた
彼は
誠実な木だと思っていた
しかし、彼はまず屈し
そして折れた
こうして私の愛は
偽りであることがわかった
Oh love is handsome
And love is kind
Bright as a jewl
When first it's new
But love grows old
And waxes cold
And fades away
Like the morning dew
ああ、愛は美しく
そして愛は優しく
宝石のように輝いている
最初は新しいけれど
でも愛は古びて
冷たくなり 消えていく
朝露のように
And fades away
Like the morning dew
女性目線で歌われる事が多い。その場合は叶わぬ恋心のピュアな心情が心を打つものがある。
3,Carrickfergus
日本ではあまり馴染みでないない。
「蛍の光」「故郷の空」「麦畑」これらはすべてスコットランド民謡で、明治時代に大量に紹介された。スコットランドは日本に近いが、そのすぐ隣のアイルランドは日本には遠い国になのだ。
この曲の主題は上記、スコットランドの「ウォーターイズワイド」と同じように海を渡れないということで同じであるが、アイッランドの主人公の身の上はより悲惨である。
Carrickfergus キャリックファーガスという発音しにくい題名のせいかもしれない
Carrickfergus(キャルクファーガス)は北アイルランド、ベルファストの北東の港町。主人公の故郷なのだろう。
そして、今は放浪先のBallygranで夜を過ごしている。Ballygran(ベリグリン)は、スコッチウイスキーで有名な、スコットランドのアイラ島にある、採石場であり、そこできつい仕事を強いられているのだ。そしてアイラ島とキャリクファーガス間は、深い海で隔てれれいる。
故郷への思いは、アイルランドの南部のキルケニーにも及んでる。(キルケニーはビール好きににはおなじみのアイルランドのレッドエールの発祥地である。)
今の採石場では高価な鉱石がなかなか見つからないのだろう。
最初の歌詞で「死」という言葉がでてくるが、最後に明かされるように主人公は病気で余命幾ばくもないのだ。しかし、最後の夜を大好きな酒をあおって酔っ払って、この歌を歌っているということなのだ。
I wish I was in Carrickfergus only for nights in Ballygran I would swim over the deepest ocean the deepest ocean for my love to find キャリクファーガスだったらなあ バリーグランドの夜だけでもな 一番深い海を泳ぎたいものだ 一番深い海 愛を見つけるための but the sea is wide and I cannot cross over nor do I have any wings to fly if I could find me a handsome boatman to ferry me over to my love and die でも海は広くて泳げない 飛ぶ翼もない 愛と死を超えて運んでくれる 素敵な船頭が見つかればなあ My childhood days bring back sad reflections of happy times I spent so long ago My childhood friends and my relations have all passed on now like the melting snow 子供の頃の悲しい思い出が蘇る 遠い昔の幸せな日々 幼なじみも、親しい人も 今は雪解けのように過ぎ去っていった so I'll spend my days in endless roving soft is the grass, my bed is free oh to be back now in Carrickfergus on that long road down by the sea そうさ、私は果てない放浪の日々さ 草は柔で、自由な寝床 ああ、海へと続く長い道を キャリクファーガスに戻るのならと And in Kilkenny, it is reported there are marble stones there as black as ink with gold and silver I would support her but I'll sing no more now 'till I get a drink キルケニーでは インクのように黒い大理石があるという 金銀で彼女を飾れたらと 今は飲むまではもう歌わない I'm drunk today and I'm seldom sober a handsome rover from town to town ah but I'm sick now, my days are numbered so come all you young men and lay me down 今日は酔ってる、滅多になく 街から街への粋な放浪者 ああ、でも病魔が、余命はわずか だかか若い人 みんなで私を 横たえてくれ