1,はじめに
道は思ったよりも遠い。
サモアは、過去9大会連続出場。ベスト8は2回の実績である。ジャパンとは2019年のトヨタスタジアム、2023年のトゥールーズと2大会連続で、死闘を繰り広げたのも鮮明な記憶である。
そのサモアが今、27年のW杯への出場へ向けて思わぬ苦戦にもがいている。
2,パシフィック・ネーションズカップ
今年のパシフィックネーションカップはW杯予選も兼ねていた。最下位にならなければ予選はクリアできるので比較的ハードルは低いはずだった。大会前サモアはランキングでもジャパンの13位に迫る14位で、格下のトンガ、カナダ、USAよりも上に行きさえ行けばよかった。
まず初戦のトンガ戦をホームで落としてしまう。勝ちさえすれな4位以内は確実だっただけに、まず1回目のチャンズを逃したことになる。30−16完敗だった。しかもこここでキャプテンのマクファーランドが所属のフランスのクラブの関係でチームを去ってしまう。
続く2戦目。気合のこもったサモアは優勝候補のフィジーに対し序盤から気合のこもったラグビーを展開し先制のトライ。15−5とリードして前半を終える。
しかし後半フランカーのセウはイエロー、フィジーは盛り返して65分には逆転される。さらにトライを取られ、15−29で終了。しかも終了間際に戻ってきたセウに2枚めもイエローがでて、レッドになってしまう。
このゲームサモアのホームゲームなのだが、サモア協会の資金の問題で、開催地はニュージーランドのロトルアという中立地であったことも影響したかもしれない。
5位決定戦には、マクファーランド、セウという強力は2枚を書いた状態で望まなければならない。
5位決定戦はアメリカ高地のデンバーで行われた。相手は地元のUSA、USAもこのゲームに勝てば2大会ぶりのWI杯出場が決まるので鼻息はあらい。結果はホームのUSAが頑張って勝利し、サモアはこの大会3連敗となり最下位が決定してしまった。ここで2回めチャンスを逃したことになる。
翌週3位決定戦の前にソルトレイクで南米2位のチリと出場枠を争わなければならなくなった。しかも終了直前、今度はウィングのツイタマがイエロー、結局、レッドカードとなり、2試合の出場停止となる。
3,チリとのプレーオフ 第一戦
チリとの最終決定戦はソルトレイクとチリの首都サンチエゴの2連戦で決まる。まずは、ソルトレクのゲーム。このゲーム序盤からチリがゲームをキックや早いパス回しで圧倒する。だれの目にも力の差は歴然だった。あっという間に25−8と大差をつけられてしまった。
しかし後半サモアも盛り返して、ゲームは白熱してくる。トライを取り合い、32−20。そこから途中パパリがトライ、リアリーファののゴールが決まり32−27と5点差。時間もせまりここまでかとおいところでパパリが2本目トライ。しかし、右隅からのリアリーファノのキックは外れて32−32の同点で終了。
これで、泣いても笑っても27日(日本時間28日早朝)のゲームで勝ったほうが出場権をえることになる。ここで負けたチームは11月8日からドバイでの最終決定戦。(4チームが出場)で最終の一枠を決めることになる。
4、サモアの4つの不安材料
最終戦を前にサモアにとっては4つの不安要素があった。
1)最終戦がアウェー
最終戦は中立国のロトルアやUSAではなく、チリの中部の街、ビニャ・デル・マール。1万5千枚のチケットがすぐに売り切れて、5千枚を追加発売。2万人の大観衆の完全アウェーの中、戦わねばならない。ジャパンも2023年W杯でのチリ、アルゼンチン戦で体験した通り、南米の応援は凄まじい。一度流れを渡してしまうと元には戻れないだろう
2)キャプテンの不在
トンガ戦の敗戦のあとすぐに、キャプテンのマクファーランドはフランスのクラブ事情でチームを抜けてしまった。しかも、そのあとキャプテンを努めていたアラアトアもチリとの最終戦を前にクレルモンとのクラブ事情で欧州に帰ることになった。協会に金があれば、なんとか所属クラブと話し合いが可能だったと思われるので残念だ。
3)2名出場停止処分
レッドカードで出場停止処分中の第三列のサウ、ウィングというツイタマは、まだ処分が終わっていないので、最終チリ戦には出場できない。
4)財政難
最大の不安材料が協会の財政難である。
毎年秋には、南半球のチームは欧州へ遠征いき、チーム強化に務めるのだが、昨年サモアは協会の財政難のためツアーそのものが企画できなかった。チームとして強化が十分にできていない。さらに今回は、PNCのホームでの開催もできず、その上思った以上に南北アメリカ大陸での遠征が長くなり費用がかさむばかりである。
さまざまな不安を抱えながら、27日チリとの決戦を迎えることになった。
5,追記 チリとのプレーオフ 第二戦結果
不安はそのとおりになってしまった
チリの赤いジャージに埋め尽くされた2万のスタジアム。サモアは完全にアウェーであった。サモアはフィジカルで対抗したが、チリも真っ向から体を張りまくる。
激しいあたりでファンブルもおおく、ボールが暴れ、ターンオーバーがなんども起こる熱戦になった。
サモアは先行されたが拮抗した展開になり後半には18−12と4点差までせまるが、そこから反則が多くなり、サンチエゴビデアのPGで点差を広げられ、終了間際には独走のトライを決められ完敗。31−12
これで引き分けを挟んで今年5連敗。3度目のチャンスを逃すことになった。ランキングも1つ下がって16位。
チリは2大会連続の出場を決め、もうスタジアム中がお祭り騒ぎ。ランキングも3つ上がって17位に浮上した(W杯組み合わせ抽選のバンド3枠入も確保)
サモアにはまだ、チャンスは残っている。11月にドバイで行われる最終決定大会で優勝することで、最後に残された1枠の出場権を得ることができる。(出場は、ナミビア、ベルギー、ブラジルORパラグアイ)
しかし、ドバイまで遠征なければならない。そうなったらその費用はどう捻出するのか? そして、キャプテンのマクファーランドやアラアラトアは欧州クラブシーズン真っ只中なので出場できるかどうも怪しい。
また、その最終決定戦と同じ日程で今年は欧州遠征を予定(11月8日 ジョージア 11月15ルーマニア 22日イタリア)していたが、それはキャンセルにならざるえをえないのだろうか?
W杯では常にジャパンのライバルであるサモア。サモアのいないW杯など考えられない。W杯出場にむけて是非応援したい。