JAPANXV-マオリ戦 その2 (勝敗を分けるもの)

疲れているのは一緒だった。
いやマオリオールブラックスのほうが肉体的疲労度は高いはずだった。
それでも最後はマオリの圧勝に終わった。

昨年のジャパン。「超速ラグビー」のコンセプト強すぎて、誤解と空回りをする結果になった。そのなかでも7月13日の豊田スタジアムでは、山沢がキックをうまく使い、相手の同じマオリを疲労を引き出し貴重な勝利を得ることに成功した。しかし、その後のジャパンはまた「超速」一辺倒にもどってしまった。

人間にとってはスピードは絶対値でなく、相対値である。どんな剛速球ピッチャーでも回をかさねれば、目がなれバットのタイミングは合ってくる。
さらに、初回から剛速球ばかり投げ込めば、ちょうど6回くらいの勝負どころに疲労が出てくる。コントロール甘くなり、失投が出始める。野球で変化球や見せ球が必要なように、ラグビーでもキックでエリアを確保することが必要なのである。フェイズを重ねるだけでは、結果的にミスで終わってしまい。疲労を無駄に蓄積するだけになってしまう。

昨年のジャパンはその繰り返しであった。勝負どころで肝心のスタミナが残っていない。とくにディフェンスの連携、危険の察知能力。そのための最初の一歩が遅くなる。穴が開く、外が経ちなくなる。終盤にトライを量産される。

今年のジャパンにはキックをうまくつかってゲーム強度をコントロールできるSOを固定することにあったはずだ。その点経験豊富なサムグリーンには期待があった。前半はキックの精度はイマイチの部分もあったが、ランも含め相手をもう少しのところまで追い詰めることには成功した。

もう一つが、昨年によくあったようなメンバー交代の際に連携が乱れてしまうことである。昨年ジョージア戦では下川がシンビンで勝利を逃し、その後の遠征では相次ぐSOの離脱、最後は立川の怪我などでチームの弱点がさらけ出されたのであった。

昨日も、フォフィタの負傷交代、江良のシンビンで青木を下げざるを得なくなるなどの事態が発生した。フィフィタの交代は痛かった。強いセンターを並べるために実績のある そしてSOとしての中楠もためしたいという布陣だった中、フィフィタの離脱で竹之下をWTBにまわすなどを大幅なポジションチェンジを強いられることになった。

こんなことは想定内のはずであるが、そこで連携のミスなどがこると、一度狂ったリズムがもとに戻らない。個人的に踏ん張ろうとすればするほど、連携ミスがでる。経験の浅いメンバー構成ではなおさらである。ジャパンの当落線上のメンバーということで、元気いっぱいでフィールドにでれば、自己のアピールにフォーカスしたいという気持ちは理解できるし、そこも重要である。

実際昨年の豊田スタジアムでも途中出場の竹内は空回りしてシンビンを食らってしまう。(しかし、正式に交代になった時には密集から決め手となるトライをしている)

組織ディフェンスはそうはいかない。先日はタックルに行ってもボールは活かされ、マオリ得意のオフロードを連発された。

そこを統制するのが、ゲームキャプテンの仕事になるはずで、下川に期待していた。残念ながら課題は残った、ゲーム後のインタビューでも下川は「疲労によりチームの一貫性に欠けた」と答えている。自覚はあるようだ。

SH、SO、さらにはキャプテンの役割は、ゲームの流れのなかで勝負どころにチーム全員が力を発揮できるように、プレーの選択を間違わないことにある。

たとえば前半最後の2点差でのゲームの切り方はの選択はどうだろう。マオリはそうとう疲れていたので継続すればよかったのかもしれないし、自分たちも柄れているのでプレーを継続すればミスが起こり逆転される可能性もあった。

後半のPGの選択はいががだろう。シンビンで一人少ない中、PGの選択で時間を使うなどは間違ってはいない。

願わくは、連続トライを奪われ始めた時点でリズムをもどすための、何らかの手だてはなかったのだろうか。

ある程度拮抗した相手同士のゲームなら、ゲームの勝敗を決めるのはいつでも「勝負どころの見極め」と、その時点への「持てる力の集中」なのである。

疲労していたはずのマオリはオフロードの連発で、労ぜずにトライを連発した。そこにで「疲労感」はまったくない。チームも元気になる。

うまく行かないジャパンは疲労感が蓄積し、それは疲労度にも影響してしまった。

今回は、暑すぎる東京のど真ん中。「疲労度」と「疲労感」が勝負を分けたと言って良い。

暑い秩父の宮。1万9千人の観客。マオリの鮮やかなオフロードには驚愕し、しばし勝敗も暑さもわすれさせてもらえた。ゲーム中はビールは欠かせなかったにせよ、家に帰ったあとに「疲労」と「疲労感」は残ってしまったではと思われる。(少なくとも私はその中の一人)

 

 

 

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