ドンマクリーン「アメリカンパイ」を解釈し直す その5 5番

1,「ジャンピングジャック」

Oh, and there we were all in one place
A generation Lost in Space
With no time left to start again
So come on, Jack be nimble, Jack be quick
Jack Flash sat on a candlestick
'Cause fire is the Devil's only friend

そこに僕らは集まった
宇宙で迷子の世代だ
やり直しはきかない
さあ,ジャック,ぐずぐずするな,急げ,ジャック
ジャック・フラッシュくは蝋燭立ての上
火こそ悪魔の唯一友だから

「Oh, and there we were all in one place(僕らは一ヶ所に集まった)」67年のモンタレーを皮切りに、ウッドストックなど数十万人規模の音楽フェスティバルが盛んに開かれた。

A generation Lost in Space(宇宙のロストジェネレーション。失われた世代。日本でもそうだがアメリカでもロスエネ世代は何度か訪れている。最初は1920年代のジャズ・エイジ、最近では1990年ごろのピストル乱射事件が続いた時。日本ではバブル後の就職氷河時代に就職難で苦しんだ世代が失われた世代とされている。

ここでは宇宙j代でのロスエネということで、米国のアポロ計画などが進行していた宇宙開発の時代において、居場所を失った世代というこことを表している。ジャックケルアックやアレンキングバーグに影響を受けた、ビートジェレーション。ヒッピーやカウンターカルチャーの世代と考えられる

 

 

 

 

 

 

(私の持っているジャック・ケルアックの路上の文庫版(表紙が当時のFM雑誌のようでなんともアンバランスでいただけない))

So come on, Jack be nimble, Jack be quick(さあジャック急げ)」
ジャンピングジャックフラッシュは68年に発表された、ローリング・ストーンズを代表するヒット曲。一時のサイケデリック路線から原点に回帰したストレートな曲である。このヒットと続くアルバム「ベカーズバケット」では、古いブルースなど泥臭い曲が多く含まれていた。

 

 

 

 

 

ご存知「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」

「Jack be nimble, Jack be quick(ぐずるな、急げジャック)」とは、「古き良きアメリカの伝統に早く戻れ」という願いや期待がこもっていると考えられる。ジャックはミックジャガーのこととなる。

歌詞の一部も紹介する

I was born in a crossfire hurricane
And I howled at my ma in the driving rain
俺は激しい嵐の中の生まれだ
そして雨の中おっかあに吠え立てた

But it's all right now, in fact, it's a gas
But it's all right, I'm Jumpin' Jack Flash
It's a gas, gas, gas
でももう大丈夫さ 実際のところ笑い話しさ
だけどもう大丈夫 俺はジャンピン・ジャック”フラッシュ”
いまではすべて笑い話

一時は薬物でサイケ調になった、ストーンズが、自らのルーツを見つめ直し、「サイケ調な時は全て笑い話」として、笑い飛ばしているのである。

2,「悪魔を憐れむ歌」

このベカーズバンケットの1曲目は「悪魔を憐れむ歌」である。(原題はSympathy for the Devilなので、正式には悪魔に共感をが正しい)ニックホプキンスのピアノに乗せて、歌詞は唐突な自己紹介から始まる

Please allow me to introduce myself
I'm a man of wealth and taste
I've been around for a long, long year
Stole many a mans soul and faith

自己紹介をお許しください
わたくし、健啖家でありまして
随分と長くからこのあたりにいました者です
多くの人の魂や信頼を抜き取っておりました

And I was round when jesus christ
Had his moment of doubt and pain
Made damn sure that pilate
Washed his hands and sealed his fate
Pleased to meet you
Hope you guess my name
But what's puzzling you
Is the nature of my game

イエスキリスト様のお近くにいました
疑いと苦しみの瞬間に立ち会いました
ピラトを眼の前にしてました
彼が手を洗い、運命に封印する際もです

あなた方に会えて光栄です
わたくしの名前をご存知と願います
あなたがたを惑わせている事は
結局、わたくしが作ったゲームの成り行きなんです

聖書に寄れば処刑のあと、ピラトは民の前で手の血を洗う。それは、イエスの死に関連した血の原罪を晴らそうというアピールであった。

このあと、この者はロシア革命での幼女アナスタシアを含む最後の皇帝ニコライ二世の一家の殺害の現場や、ケネディ大統領殺害の現場などに居合わせたと言い出す。居合わせただけなく、すべてが惨劇が俺の仕掛けであると言っている。最後まで名前は証さないが、みんなその名は知っている。怖くて口に出せないだけだ。

「Jack Flash sat on a candlestick ’Cause fire is the Devil’s only friend
(ジャックフラッシュはろうそく立ての上 悪魔が唯一の友だから)」

しかし、ジャック(ミックジャガー)は蝋燭立てに載せられての明かり(=フラッシュ)でしかなかった。それも悪魔の仕業だったのだ。

この解釈ではサタン=ミックジャガーという説があるが、私はそうは解釈しない。ミックジャガーはジャックで、サタンはその友達という関係である。ミック自身もサタンにたぶらかされて担がれているに過ぎないというわけである。

(悪魔を哀れむ歌は、友達のサタンに成り代わって自己紹介をしていると解釈する)

全ての悪事や惨劇はサタンの仕業であり、次のエピソード「オルタモントの悲劇」に繋がっていく

3,オルタモントの悲劇

1969年12月6日、西海岸のスピードウェイでその悲劇は起こった。東海岸でのウッドストックの成功を横目に、この日は全米を回っていたストーンズの最終公演が他の出演者も含めて、フリーコンサートが開かれていた。ウッドストックを上回る50万人があつまり、ウッドストックと肩を並べる歴史的イベントになるはずだった。

 

Oh, and as I watched him on the stage
My hands were clenched in fists of rage
No angel born in hell
Could break that Satan's spell
And as the flames climbed high into the night
To light the sacrificial rite
I saw Satan laughing with delight
The day the music died


彼がステージに立つのを見てたら
両手は怒り握り拳になっていた
地獄に生まれた天使は
サタンの呪いをはらぜない
いけにえの儀式を果たすため
炎が夜空高く上ったとき
サタンが嬉しそうに笑うのを見た

音楽が死んだ日だ

Oh, and as I watched him on the stage、My hands were clenched in fists of rage(彼がステージに立つのを見てたら、両手は怒りで握り拳になっていた)

マクリーンはストーンズのこのステージを最初から好意的には捉えていないようである。

歌詞の「 angel born in hell(地獄で生まれた天使たち)は警護していた悪名高いバイク集団の「ヘルスエンジェルス」のことである。ストーンズとヘルスエンジェルスは交流があった。警護担当を彼らに任せたのはストーンズ側の意向だった。

 

 

 

 

 

しかし、コンサートの途中から雰囲気は徐々に悪くなっていく。そして、最後にストーンズがステージにあがった際に、混乱はピーク達し、ヘルス・エンジェルスのメンバーの一人が観客に銃を発射し、観客は死亡するというあり得ない事態になった。

まさに12月6日も音楽が死んだ日となった。これも悪魔の仕業なのか。

 

 



	

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