ここはブルースの聖地で伝説の場所だ。「ロバート・ジョンソンがギターの腕前を上げるために、悪魔と取引をして魂を売り渡した」と言われている交差点である。映画にもなった。
ミネソタからニューオリンズにぬける61号線(ボブ・ディランの歌でも有名 )とと49号線が、ミシシッピー州北部のデルタ地帯のクラークスデールという町で交わるところに当たる。
324 Dr M.L.K. Jr. Blvd, Clarksdale, MS 38614 アメリカ合衆国
曲はもちろんロバート・ジョンソンのオリジナル。クリーム時代からのクラプトンの十八番(おはこ)でもある。コンサートの終盤の盛り上がりには欠かせない。先日のクラプトンの来日コンサートでも聴かれた方も多いだろう。古今東西老若男女、ブルース系のギタリストなら誰でも1回は演奏したことが在るはずだ。 歌詞の一部を紹介する。
I went down to the crossroads Fell down on my knees Down to the crossroads Fell down on my knees Asked the Lord above for mercy Take me, if you please 交差点へいいったんだ そこで膝をついたぜ 神様、どうかお願いだと I went down to the crossroads Tried to flag a ride Down to the crossroads Tried to flag a ride Nobody seemed to know me Everybody passed me by 交差点へ行ったんだ 一旗揚げようとね みんな俺を無視しやがってた
(写真はグーグルマップより)
ロバート・ジョンソンの伝説の当時には、石ころだらけの道で、周りは草はらで何もなったただの物寂しい十字路だったはずだ。
しかし、現在のクロスロードは交通量のものすごく多い、片道何車線もある交差点である。そしてその真中にぽつんと安っぽい記念碑が立ってるだけである。とても悪魔や神様がやってくる雰囲気はない。
おまけ
何しろ、ボブ・ディランのハイウエイ61によれは、61号線はとんでもない路線である。下記「ハイウェイ61」の解釈も再掲載する。
65年発売のアルバム「Highway 61 Revisited」のタイトル曲で、B面の2曲め。1974年のTheバンドとのライブ盤にも収録。その後のライブコンサートでもよく取り上げられている
30周年コンサートでは白人の白子のブルースマン、ジョニー・ウィンターがサンダーバードでスライドをかき鳴らしていた。
映画「名もなき者」では、街角で買ったサイレンのなる笛が登場し、スタジオでメンバーと一発取り。
ハイウェイ61はアメリカ南部をニューオリンズからミネソタまで南北に縦断する路線。途中にメンフィスなどを通る。ディランはミネソダでそだったのでこの61号線はメンフィスやニューオリンズといいた黒人音楽のメッカへへ通じる道という、特別な想いがあるはずだ。
このハイウェイはさまざまな逸話や都市伝説がある。
いちばん有名なのはブルースにまつわる「クロスロード伝説」。この曲はクリーム時代からのクラプトンの十八番だ。この交差点はこの61号線と49号線をまたがる交差点である。ブルースの偉人、ロバート・ジョンソンがこの場所でギターがうまくなるために悪魔に命を売ったとされる。
1930年代にブルースの女王とよばれたベッシー・スミスは、このクロスロード近くの61号線で追突事故にあって救急車で搬送された。しかしどの病院も黒人を受け入れてもらえず、たらし回しにされてしまう。やっとミシシッピーの病院についたときには息絶えていたという。
1968年キング牧師が狙撃され暗殺されたのもこの61号線沿いのロレインモーテル(450 Mulberry St. Memphis, TN. 38103)の306号室のバルコニーだった。
しかし、ディランがこの曲を書いたのは、その3年前の1965年になる。
曲はそんな陰鬱な曲でなく、ナンセンスに韻を踏んだものなので、訳も韻を踏んだものしてみた
1番
一番は、旧約聖書に出てくる「イサクの燔祭」をもじったもの。聖書では神はアブラハムにやっと出来た2人の息子のうちの跡継ぎであるイサクを神に生贄としてささげろを命じるのだが、この歌では生贄の祭壇の場所が61号線になっている。
Oh, God said to Abraham, “Kill me a son" 神がアブラハムに、「息子を生贄に」 Abe said, “Man, you must be puttin’ me on" 「そいつは冗談だに」 God said, “No" Abe say, “What?" 「いいや冗談などではない」 「なんでかに」 God say, “You can do what you want, Abe, but The next time you see me comin’, you better run" 「好きにして良いぞよ、でも次は如何に」 Well, Abe said, “Where do you want this killin’ done?" (了解)「どこで殺ればいいんかに」 God said, “Out on Highway 61" 神が言った「61号線のはずれだぞい」
聖書では最後の最後で神がアムラハムの信仰心を試したことを明かすのだが、堅実世界の61号線ではどうもちがっているようだ。
2番
2番では生活に苦しむジョージアサムの事が歌われる
Well, Georgia Sam, he had a bloody nose ジョージア・サムは鼻血ブー Welfare department, they wouldn’t give him no clothes 福祉局へいっても衣類も貰えずー He asked poor Howard, “Where can I go?" 貧乏ハワードにに聞いた「どこならいいんだ?」 Howard said, “There’s only one place I know" ハワードは「1つだけなら知っているだ」 Sam said, “Tell me quick, man, I got to run" サムは言った「はやく教えてくれよ、もうまてないっす」 Old Howard just pointed with his gun 老練ハワードは 銃を指差す And said, “That way, down Highway 61" 「あっちだ、ハイウェイ61さ」
鼻血ブーのサムは、残念ながらもう生きては無さそうだ。
三番
三番では
不条理な不用品の処分に困っているマックザフィンガーのことが歌われる
Well, Mack the Finger said to Louie the King マック・ザ・フィンガー、尋ねた先はルイの君 "I got forty red, white and blue shoestrings 「赤、白、青の靴ひも、40組」 And a thousand telephones that don’t ring それにイカれた電話、千台のゴミ」 Do you know where I can get rid of these things?" これらをなんとかしたい 処理」 And Louie the King said, "Let me think for a minute, son" キング・ルイは 「ちょっと頭をひねり」 And he said, "Yes, I think it can be easily done! そして言った、「それはいとも簡単なり」 Just take everything down to Highway 61" 「すべてをハイウェイ61に持って行け」
「カラフルな多量の靴紐」や、「千の鳴らない電話」とは、社会における解決の出来ない大量の不条理な問題を暗示していると解釈できる。それらすべて61号線にもっていけばなんとかなるらしい。
4番
4番では複雑な事情を抱える大家族の会話が聞こえてくる。
[Verse 4] Now, the fifth daughter on the twelfth night 五番目の娘が、12日の夜 Told the first father that things weren’t right メインの父親に聞いた 「始末悪(わる)」 "My complexion," she says "is much too white" 「私の肌は白すぎる」 He said, "Come here and step into the light" 彼は言った 明かりの下で見てあげる He says, "Hmm you’re right 彼は言った、「これは確かでござる」 Let me tell the second mother this has been done" サブの母に伝えましょ」 But the second mother was with the seventh son だけども、サブの母、七男防と一緒 And they were both out on Highway 61 二人でねんごろ、ハイウェイ61
もう近親相姦の嵐。夫婦関係、親子関係がめちゃくちゃである。61号線沿いなら人目につかず、何をやっていても判らないのだ。
5番
Now, the roving gambler he was very bored 流浪の賭博師、退屈し Trying to create a next world war 世界大戦、画策す He found a promoter who nearly fell off the floor 見つけた元締め、頼りない He said, “I never engaged in this kind of thing before But yes, I think it can be very easily done やったこた無いけど簡単さ We’ll just put some bleachers out in the sun And have it on Highway 61″ 露天に客席つくるだけ、 そこは61号線
1番から5番まで、多くの人物の固有名詞がでてくる。ディランのことだから名付けに何か意味があるのかもしれないが、今の私にはまだ不明である。
(歌詞はネットから引用、訳は正田が担当)