目次
1,はじめに
77年発表のピンフロイドの「アニマルズ」は、ジャケットが有名だ。もうすぐ発売から半世紀が過ぎようとしている。
4本の煙突がある要塞のような建造物。それは「バタシー発電所」である。テームズ川のほとりにある。そしていかにも不穏そうな雲がたなびく空。夕闇は迫っている。4つの煙突のあいだを不釣り合いに不思議なピンクのブタが飛んでいるというものだ。得意のピプノシスの作かと想いきや、メンバーのロジャーウォータースの発案だそうだ。実際にブタの風船をあげて撮影されたが、ヒースローの飛行コースに侵入したり、農場に不時着して本当に羊を脅かしたりと、すったもんだがあったという。
現在発電所は閉鎖され、建物の外観が生かされ、さまざまな店舗がはいる一大ショッピングセンターとなっている。
ピンクフロイドの「アニマルズ」。ジャケットはこのように有名なのだが、中身は「ジョージオーウェル『動物農場』のように、現代社会構造の各層に属する人々を、ブタ、犬、羊という動物に例えた風刺である」と簡単に捕らえられ、それで十分わかった気になってしまい。中身を細かく理解されていないように思える。
そこで今回改めて聞き直して解釈を深めてみたいと試みた次第である。
オーウェルの『動物農場』は、社会主義革命の風刺であり、牧場主である人間が資本家、ブタが革命の指導者(スノーボールとナポレオン=トロツキースターリン)、犬は秘密警察、その他の動物は革命に翻弄される労働者であり、その中でも羊は簡単に、口車に乗っせられて、洗脳されてしまうという設定になっている。さらに最後にはスノーボールは二本足で立って人間のように行動するまでになっていく(=つまり共産主義は見かけだけで、資本家を手を組み私腹を肥やすのだ)。
ピンク・フロイドのアニマルズの設定は現代社会=77年当時である。近未来のディストピアではない。まだ冷戦のなかであるが、西側資本主義陣営は、資本主義の合理的で永続的な発展を疑うこともなく推し進め、個々の人間性や内面的豊かさなどが置き去りにされてきていた。音楽業界で言えば、「産業ロック」とよばれるような耳障りのよいヒットが生まれ、60年代から続く反体制のロックグループが次から次へとハードポップ路線かディスコ調に倉代わりしていた。その反動としてパンクが誕生したのもこの時期である。
そんな高度資本主義時代の初期時代に将来を案じて揶揄したのがこの「アニマルズ」である。
2025年の現代ではない。1977年にはフォークランド紛争も起こっていない。その後サッチャー政権による新自由主義政策がより推し進められ、ベルリンの壁が崩壊、ソ連も解体。資本主義はより高度になり、グローバル経済になっていく。階級の分断はより進み、コロナのパンデミック、更にはウクライナ戦争も勃発、欧州では極右政権が幅をきかせる事態となる。イギリスもEUから離脱。そして米国ではトランプが関税を武器にやりたい邦題をする状況である。
このレコードが出た当時はまだまだ序の口でしかない。
ここでは、シープは洗脳され搾取されているのを知らずにいる労働者階級、ドックはホワイトカラーのエリートビジネスマン。そしてピックが支配層である。B面の一曲目にあるように、このドック=支配層は3つのタイプがあり、「金銭財力で支配する者」、「政治力や権力で支配する者」、「旧来の道徳や倫理を掲げて支配する者」とされている。支配層が3種に分類されているところが味噌である。
(今や、トランプなどは、この3つの力をすべて兼ね備えてしまっている。)
これだけの設定でも十分に風刺が効いているのが、それだけに終わらないのが、ロジャーウォータース、だてに馬面なだけではない。
実は、この3階層の関係性が微妙で複雑であり、ドッグやシープはその立場の非合理さにもすでに気付き始めているという設定なのだ。はたして「革命」は起きるのだろうか?
2,一曲目 “Pigs on the Wing (Part One)”
"Pigs on the Wing (Part One)" If you didn't care what happened to me, And I didn't care for you We would zig-zag our way through the boredom and pain Occasionally glancing up through the rain Wondering which of the buggers to blame And watching for pigs on the wing 私の身の上を気にしないなら 君らのことも気にしない 私達はジグザクに道を行く 退屈と苦痛を乗り越えて 時々は雨を見上げながら 誰のせいにしようかと想いながら 空とぶ豚を見ながら
わたしたち一般の人たちは、時にはそれに服従し、時には恩恵をうけながら、時には安穏とし、そして時には抵抗も試みる、最終的にはそんな支配層はもう空高く絶対に手のとどかない高いところに在る。空とぶブタとはそういうことだ。われわれ、被支配層はそれをただただ少しばかりの憧れや羨ましさをもって見上げるだけである。私達は、その状況を受けいれていくことしまないのだ。
ロジャーウォータースの弾き語りで始まる。この独白はドック階層のものであろうと思われる。物語の導入であり、ナレーション的に聞こえる。またこのアルバム最後にこの曲が登場して幕を閉じる。
豚とは、裕福な資産家であり政治家であり、一般人から富や安定、安心や夢や希望などを搾取する支配層である。
3,2曲目 ”Dogs”
典型的なホワイトカラーのモーレツビジネスマンの一生が描かれる。
曲はギターのカッティングから整然とはじまる。まるで朝の通勤ラッシュのようである。人々はみな無言で歩道をあるき、エスカレーターで地下鉄の駅に吸い込まれていくようだ。
"Dogs" You gotta be crazy, you gotta have a real need You gotta sleep on your toes, and when you're on the street You gotta be able to pick out the easy meat with your eyes closed And then moving in silently, down wind and out of sight You gotta strike when the moment is right without thinking. 必要なものを手に入れるにはクレージーにならなきゃ 路上ではつま先立ちで寝るまでだ 眼を閉じ、簡易食を選べきゃならない そして、静かに風下の視界外に移動しなきゃ 時がきたら後先なしに一撃をかまさなきゃ
And after a while, you can work on points for style Like the club tie, and the firm handshake A certain look in the eye, and an easy smile You have to be trusted by the people that you lie to So that when they turn their backs on you You'll get the chance to put the knife in. しばらくすれば クラブのネクタイをして、握手を交わすスタイル 安心の笑顔の見た目でもって働ける 嘘つきからも信頼される必要がある そうすれば やつらが背を向けた時に、ナイフで刺せる好機を得る
高成長の高度資本主義時代のモーレツなビジネスマンの仕事ぶりが描写される。路上でつま先で眠る程に一日24時間緊張を持続させ気が抜けない。まさに「24時間働ますか」の世界だ。食事もインスタントで簡単にすませるしかない。しかも、みんな同じようなダークスーツに袖を通し、個性や野望を隠し、目立たないように気配を消している。そうすれば、上司や同僚を蹴落とす昇進のチャンスがきっとくる。それを静かにまってなければならない。
いまや働き方改革など言われているが、当時はこれが当たり前だった。
自分をだまし、ペルソナを作る。ビジネスの世界は、まさに丁々発止、騙し騙されの取引、虎の目を抜く先陣争い、出世争いの世界である。「家をでれば7人の敵」
そして曲はだんだん激しくなる。次から次へ案件を処理しまくるドッグ達の職場の姿の描写のようである。
You gotta keep one eye looking over your shoulder You know it's going to get harder, and harder, and harder as you get older And in the end you'll pack up, fly down south Hide your head in the sand Just another sad old man All alone and dying of cancer. 肩越しに片目を留めて置かなきゃならない 年を取るほど、どんどんキツくなるのはわかってる そして、最後。荷物をまとめて南へ逃げる それは頭を砂に隠すだけ、ただの悲しい老人だ 一人ぼっちで、癌で死ぬ
そのままいつかの引退を考えながらも会社に貢献する。フロリダへリタイヤしても、最後はビーチでの孤独な老後、癌でなくなるだけなんだ
先行きを案じての喪失感なのか、ここで虚空に一人とりのこされたような間奏がはいる。
しかし、また曲調は一時変わって、ギルモアのギターには時より希望も感じられるような一瞬もみせる。
だが、さらに進むと、犬の遠吠えを境に、また曲調は変わり、上層からの圧力で抑え込まれたように陰鬱になる。ギルモアのギターはなにかから逃れようとしてもがき苦しむようだ。
And when you lose control, you'll reap the harvest you have sown And as the fear grows, the bad blood slows and turns to stone And it's too late to lose the weight you used to need to throw around So have a good drown, as you go down alone Dragged down by the stone.ーーー 自制心が失せた時、巻いた種のしっぺ返しが来る 恐怖が増すにつれ悪意は溜まり石と化す 以前は投げ出せた石も、今では重すぎる だから沈む、一人で沈む 石の重みに引きずられ (石、石 石)
ストーンと言う言葉だけが繰り返すエコーでの音響処理は、まるで海の奥底の引きづりこまれるようである。
そして犬がまた吠え始める。
弱いものほど吠えるんだ。痛々しいまでの犬の鳴き声である。断末魔の叫びにすら聞こえてくる。
しかし、アコースティックギターとともに徐々に自分をとり戻し、すこしでも前をむこうと試みる
I gotta admit that I'm a little bit confused Sometimes it seems to me as if I'm just being used Gotta stay awake, gotta try and shake of this creeping malaise If I don't stand my own ground, how can I find my way out of this maze? 正直言えば、少々の混乱が在る 時より、利用されてるだけと感じる 目を覚まし、這い寄る倦怠感を振り払えるんだ 地に足をつけないと、この迷路から抜け出せない Deaf, dumb, and blind, you just keep on pretending That everyone's expendable and no-one had a real friend And it seems to you the thing to do would be to isolate the winner Everything's done under the sun And you believe at heart, everyone's a killer. 聾でおしで盲(めしい)となり、 誰もが使いすてられ、真の友などいないと思いこむ 勝者を寂しくさせることがすべてと思ってる 全ては白日にさらされ 心の底では誰もが、殺人者だと思ってる
間奏ではギルモア怒りのギターが爆発する
最後の抵抗がなされる。攻防が繰り返される。攻防と言っても相手を実際に攻撃するまでにいたっていなく、自分というものを失わないように地に足をつけようと踏ん張るという、自分自身との攻防なのだ。
どうやら戦いは終わったようだ、勝ったのはどっちだ。しかし、結果は最初から当然自明のことである。
Who was born in a house full of pain Who was trained not to spit in the fan Who was told what to do by the man Who was broken by trained personnel Who was fitted with collar and chain Who was given a pat on the back Who was breaking away from the pack Who was only a stranger at home Who was ground down in the end Who was found dead on the phone Who was dragged down by the stone. 苦しみ溢れる家に生まれたのは誰だ? ファンに唾を吐かないよう仕込まれたのは誰だ? 訓練生に躾けられたのは誰だ? 首輪と鎖をつけられたのは誰だ? 背中を押されたのは誰だ? 集団から逸脱したのは誰だ? 家の中のよそ者は誰だ? 最後に打ちのめされたのは誰だ? 電話の最中に発見された死体は誰だ? 石に引きずられて沈んだのは誰だ?
キュプラーロスの理論によれば、死を宣告は、「否認」→「怒り」→「取引」→「抑うつ」→「受容」という5段階をへて受容されるのだという。
ドックへの死は宣告されているようだが、ドッグは、怒りや、取引、憂鬱の間をジグザクに行きつ戻りつしている段階のようである。
4,3曲目 ”Pigs (Three Different Ones)”
リック・ライトのミステリアス的に繰り返す不穏なフレーズに乗せて、ウォータースが奏でるベースのベタに大げさなパッセイジが聴かれる。すこし悲しげでもある。
そして歌になると、パンクっぽく激しく攻撃敵で、シニカルで汚いことばが、次々に投つけられるようにくり出される。
1番 裕福で金の力に任せて支配し牛耳るタイプ
Big man, pig man, ha ha, charade you are You well heeled big wheel, ha ha, charade you are 太っちょのブタ野郎 ははは 茶番だぜ 金回りが良さそうだな ははは 茶番だぜ You're nearly a good laugh Almost a joker With your head down in the pig bin Saying "keep on digging" Pig stain on your fat chin What do you hope to find? When you're down in the pig mine You're nearly a laugh You're nearly a laugh But you're really a cry. 大笑いしかけてやがる とんだ食わせ者だぜ 頭を豚小屋に突っ込んでも 「ほりつづけろ」だってよ 越えた顎にブタの泥 何をもっと掘れだって 大笑いはしかけてるが 本当は泣きそうなんだろ
財力で支配するものはどこにでも居る。
2番 政治権力で牛耳るタイプ
Bus stop rat bag, ha ha, charade you are You fucked up old hag, ha ha, charade you are You radiate cold shafts of broken glass バス停のうざいやつ ははは、とんだ食わせもんだぜ あんたはクソババア ははは とんだ食わせもんだぜ 割れたガラスの冷たい矢を放つ You're nearly a good laugh Almost worth a quick grin You like the feel of steel You're hot stuff with a hat pin And good fun with a hand gun You're nearly a laugh You're nearly a laugh But you're really a cry. 笑いかけてやがる もうすぐニヤリだ 鉄の感じがお好き 帽子のピン付きのめっけ物 手に拳銃がお楽しみ 笑いかけてるが 本当は泣きそうなんだろ
ロジャーウォータースによれば、このオバサンは当時は野党だった保守党党首で「鉄の女」とよばれたサッチャーである。まだ首相になる前だった。
バス停の鼠害虫野郎やOLDHAGなど汚い言葉がどんどん出てくる
「割れたガラスの冷たい矢」とは、周りに暖かな気配りをしないで、冷たくあしらっている様であろう。「帽子のピン」は取るに足りないものたとえかもしれない。
そして長い間奏が入る。ギルモアがトーキングモジュレーターをつかって、犬語で何かを訴えてくる。
3番 道徳や規範を盾に牛耳るタイプ。
Hey you Whitehouse, ha ha, charade you are You house proud town mouse, ha ha, charade you are You're trying to keep your feelings off the street メアリーホワイトハウス ははは、食わせもんだぜ ご自慢の街のねず公 ははは 食わせもんだぜ 外では感情をおしころしてやがる You're nearly a real treat All tight lips and cold feet And do you feel abused? You gotta stem the evil tide And keep it all on the inside Mary you're nearly a treat Mary you're nearly a treat But you're really a cry. あんたが大将 口びる閉ざした冷たい足 いじめられるとでもと思うのか 悪の波を止めなきゃな 全てを内に秘めなきゃな メアリーあんたは大将 でもほんとは泣いてんでしょ
ここでのホワイトハウスは、米国のホワイトハウスではなく、英国の厳格な保守主義者のメアリーホワイトハウス女史のことである。最後にファーストネームもでてきるから間違いない。でも個人名で非難をしていいのかどうかとも思ってしまう。(Mary Whitehouse (1910ー2001)性的表現やLGBTなどは真っ向から反対し、芸術活動にも全く理解をしめざず、BBCなどへも訴訟を繰り返した。)
「口びる閉ざした冷たい足」とは、性的な嫌がらせの言葉であろう。
いまや放送やネットや公的な場の言動でも、ちょっとでもイイ方を間違えると、厳格なポリコレの攻撃対象になり、誹謗中傷や炎上の餌食になってしまう。ホワイトはウス女史が幅を利かせた当時よりも今のほうが自由度は格段に狭くなっているのではないかと思われる。
ピンク・フロイドはこの3タイプを力による支配を強要するタイプと言っているが、現在はこの複合技で圧力をかけてくる。
その最たるものは、今のアメリカだ、すばてが一体化している。つまり金持ちと政治力と宗教と組んで、キリスト原理主義的な価値観を強要するという状況にすらなっているのである。
イーロン・マスク、トランプ、福音派などだ。
5,4曲目 “Sheep”
イントロは羊の鳴き声に平穏で日常的なリック・ライトのフェンダーローズのつまびきではじまる。しかし、気づけばいつしか根底に「呼べよ嵐、吹けよ風」のような不穏なベース音が鳴り響いている。その不穏な状況は歌が始まると言葉となって明確になる
Harmlessly passing your time in the grassland awayーーーーーー Only dimly aware of a certain unease in the airーーーーーーー You better watch out There may be dogs about I've looked over Jordan and I have seen Things are not what they seem. 草原で平穏に時をすごすが かすかに不穏な兆しを感じる 警戒すべきだ 犬らかもしれない ヨルダン川を見渡し確認できた 物事は見た目とは違う
シープは一般平民、波風をたてず大人しく従順だが、警戒心も高い。
ブルーカラーの労働者階級にとっては、ホワイトカラーのドックは支配階級になる。ドッグは立場が違えばシープを誑かし、その労働力を搾取している。ヨルダン川はパレスチナとヨルダンを分かつ河で聖書にも登場する。境界線や国境のたとえであろう
What do you get for pretending the danger's not realーーーーー Meek and obedient you follow the leader Down well trodden corridors into the valley of steelーーーーーー What a surprise! A look of terminal shock in your eyes Now things are really what they seem No, this is no bad dream. dream. 危険を非現実と見立てて得るものがあるというのか 温和で従順な者はリーダーに従う 踏み固められた通路を抜けて鋼鉄の谷へ なんて驚きだ 眼には致命的な衝撃が見て取れる 百聞は一見にしかず 夢ではない
間奏は大混乱である。
それをおさめるように、静かに聖書の祈りが読み聞かせられる。
The Lord is my shepherd, I shall not want He makes me down to lie Through pastures green he leadeth me the silent waters by With bright knives he releaseth my soul He maketh me to hang on hooks in high places He converteth me to lamb cutlets For lo, he hath great power and great hunger When cometh the day we lowly ones Through quiet reflection and great dedication Master the art of karate Lo, we shall rise up And then we'll make the bugger's eyes water. 主たるは羊飼い。それ以上は望むべくもない 我々を伏せさせ 緑野を抜け水辺へと誘(いざな)う 偉大な力と空腹の時 輝く短剣は我が魂を蘇られ 高みに我が身を引き吊るす 子羊のカツレツへと昇華させる 静寂なる内省と大いなる献身により 芸術的なカラテを会得し 我々は蜂起する そして賊おば涙目に
聖書のお言葉もなぜか途中から逸脱している。羊たちは盲目的に羊飼いを神として崇めて、神への献身としてラムチョップになって身を捧げるという崇高な時をまっている。神のために羊ながらに、身を鍛え蜂起するのだと妄想している。これらすべては宗教の宗教性を利用し、ドックが作り上げた周到なシープの管理システムなのだろう。ドッグはピッグに対しての来るべき蜂起の日のために、シープを完全に手懐けてしまっていいたのだ。
Blasting and bubbling I fell on his neck with a screamーーーーーー Wave upon wave of demented avengers March cheerfully out of obscurity into the dream.ーーーーーー 爆発と膨張、叫びと共に敵の首根に倒れ込む 狂気の復習者の波は押し寄せ 闇から夢へと進軍する
これはドッグがシープに刷り込まされた妄想にすぎない。そこまでもシープたちは妄想を信じ込んでしまっているのである。
Have you heard the news? The dogs are dead! You better stay home And do as you're told Get out of the road if you want to grow old. 知らせをお聞きか? 犬は死んだ! 家にいた方がいい 言われた通りに 年をかさねたければ道を外れろ(長生きして老後をすごせ)
この部分は真の神からのお告げなのかもしれない。もしくはさらに上層階級のピッグからの直接の「おことば」かもしれない。リーダーたるドッグは死んだ(奥底に石の重みで沈み込んで身動きできできず、気力を失い、もう死んだも同然)ので、神の掟である蜂起はおこせないのだ。
6,5曲目 “Pigs on the Wing (Part Two)”
PIGS ON THE WING (PART 2) You know that I care what happens to you And I know that you care for me too So I don't feel alone Of the weight of the stone Now that I've found somewhere safe To bury my bone And any fool knows a dog needs a home And shelter from pigs on the wing 私の身の上を気にしないなら 君らのことも気にしない 私は石の荷重の孤独は感じない 骨を埋める安全な居場所を見つけた 犬にも犬小屋は必要さ 空とぶ豚から見を守るのさ
豚=支配層のことなんて気にしないで、ドッグ=である私も、シープから深むやみに搾取するなんてことをしないで、波風をたてずに平穏にくらすんだ。
そんな立場立場で諦めで、傷を舐めあった終わり方になっている。結果はピッグの一人勝ち。
なんとも悲しい風刺であるが、まさにそのとおりではある。オーウェルの『動物農場』のような革命はおこらない。なぜなら、空の上のブタは遠くまであがってしまい。ドッグの手には届かない。ドッグも自分の身をまもるのに精一杯であこがれを持って雲の上のピッグを見上げるばかりなのだ。
7,まとめ、その後
現在のバタシー発電所は、巨大な商業施設になっている。2020年に開業した。テナントにはアップルストアも入っている。
資本主義時代のの階級闘争の批判の象徴でもあった、バタシー発電所に、高額な資本が投入され、現在消費社会を背景にした、巨大な商業施設として現在稼働しているという現実である。まさに現時代のアイコンになっている。これはもはや皮肉であるとしか言う言葉がない。
ーー聖地であったはずなのに
まさしくピックの完全勝利であり、羽の付いたブタは更に加速しより高く高く飛んでいる。格差は広がるばかりである。
ー追記
2008年発売の「アニマルズ」リミックス版のジャケットは、まさしく改装中の「バタシー発電所」の写真が採用されている。だたし、葬式の遺影のように白黒である。
歌詞はネット上に公開済みのものから引用
訳は全て筆者による