目次
1,はじめに
この曲も難解である、聖書やアメリカ建国依頼の歴史上の人物の名が次から次へと出てくる。日本人には馴染みが薄い名前ばかりである。街の内外で起こっていることはどーでもよいナンセンスなことだらけだが、それには全く関係なく、貧乏暮らしは苦しく食べ物にも困っての墓石のブルースを歌っているのだ。
ディランの敬愛するウッディガスリーのレパートリーも登場するので、横道にそれるのを承知で紹介をする。
2,1番 商工会議所長の選挙
これは市の選挙のことだと思われる。
The sweet pretty things are in bed now of course
The city fathers they’re trying to endorse
かわいい物たちはもちろん今ベッドの中
都会の父親たちは宣伝をしようとしてる
The reincarnation of Paul Revere’s horse
But the town has no need to be nervous
ポール・リビアの馬の生まれ代わり
だが街は不安になる必要なんてない
The ghost of Belle Starr she hands down her wits
To Jezebel the nun she violently knits
ベル・スターの亡霊がイザベルに
暴力的な編み物をするように教える
A bald wig for Jack the Ripper who sits
At the head of the chamber of commerce
切り裂きジャックのハゲづらが
商工会議所の長の座に座る
The reincarnation of Paul Revere’s horse
Paul Revereは1774年アメリカ独立戦争のレキシントンの戦いで、夜中に馬に乗って街中えおかけめぐり、英国軍の接近の危機を知らせる活躍を見せた人物。街の父親達は、候補者をその馬の生まれ変わりとして選挙活動をしている。Paul Revere本人の生まれ変わりでなく、その馬の生まれ変わりであるということが、間抜けである。しかも街には英国軍の侵攻のような不安になる要素など何一つないのだ。
The ghost of Belle Starr she hands down her wits
ベル・スターは、西部開拓時代に荒くれものとして名を果した女傑である。最後は南軍に加わって、隠れていたところを北軍にみつけらて惨殺される。さまざまな伝説がある。ウッディガスリーも歌っている。その歌によると8人の無法者らと浮名を流し、その8人もすべて非業の最後を遂げたことになっている。そんなベル・スターが幽霊になってイザベルという修道女に知恵をさづけたので、その教えに従ってイザベルは激しく編み物をするという。
To Jezebel the nun she violently knits
イザベルは旧約聖書にでてくるイスラエルの王妃だが、ユダヤのヤハウエではなく他の信仰を勧めたために、塔から突き落とされ、猛犬の餌食になり死亡する。その後新約のヨハネ黙示録にも、イザベルという名の女性が淫行や偶像崇拝をするようなみだらな女性をして非難されている。このようなみだらな女性の代名詞としてイザベラの名を上げていると思われる。
西武時代のベル・スターが紀元前の王妃の前に幽霊となって現れ、悪いことを教える、とは時代経過が逆転している。また「編み物という静かな作業が荒々しい」というナンセンスなおかしさが在る。
なんでもない平和な街なのに、選挙となって、あえて波風を建てて勢力抗争になっているあり様であると解釈できる。
A bald wig for Jack the Ripper who sits
At the head of the chamber of commerce
そして選挙戦を勝ち抜いた「ハゲ頭の切り裂きジャック」が工会議所のトップの座をしとめる。「切り裂きジャック」とはあだ名だろう。つまり、ロンドンで猟奇的連続殺人を犯すような、酷い人物。しかも禿頭。あたまが固く融通が利かない人なのだろう。うまく宣伝戦をしかけ選挙戦をたたかって、商工会議所のトップになったということだ。
ところで、全く関連がない最初の1行「The sweet pretty things are in bed now of course」はなんのことだろう。これには意味がなく、単なる枕詞(まくらこどば)と思われる。「うつせみの」とか「くさまくら」とかと一緒なのだろう。次に出てくる言葉がfathers (父親)なので「たらちねの」といったところと推測する。
<参考>Woodyガスリー Belle Star
こちらも非常におもしろいので、最初から脱線して全部の歌詞を紹介する。
コーラス Belle Starr, Belle Starr, tell me where you have gone Since old Oklahoma's sandhills you did roam? Is it Heaven's wide streets that you're tying your reins Or singlefooting somewhere below? ベル・スターはどこへ オクラホマの砂丘をさまよってから 天国への広い道に手綱を引くのか もしくは地獄で独り立ち 1番 Eight lovers they say combed your waving black hair Eight men knew the feel of your dark velvet waist Eight men heard the sounds of your tan leather skirt Eight men heard the bark of the guns that you wore. 8人の愛人がその黒髪を梳かし 8人の男がそのベルベットの腰を堪能し 8人の男が褐色の皮のスカートの音を聴き 8人の男はあなたの銃声を聴いた 2番 Cole Younger was your first and the father of your girl And the name that you picked for your daughter was Pearl Cole robbed a bank and he drawed the life line But I heard he was pardoned after Twenty Years time. コールヤンガーが最初の男で娘の父 娘はパールと名付けられ コールは金庫破りで命を断った だけども20年後に恩赦だとさ 3番 Your Cherokee lover, Blue Duck was his name He loved you in the sand hills before your great fame I heard he stopped a bullet in Eighteen Eighty Five And your Blue Duck's no longer alive. チェロキー族の恋人はブルーダック 名を派す前の行為は砂丘で 1885年には銃弾を受けたそうな ブルーダックはお陀仏だ 4番 You took Jim Reed to your warm wedding bed And from out of your love was born the boy, Ed A pal killed Jim Reed by the dark of the moon And your son Ed was blowed down in a drunken saloon. ジムリードとは新婚の床 愛息エドを授かった 新月の闇、友人がジムを殺った エドも酒場で吹き飛ばされた 5番 Then there was Bob Younger you loved him well He rode with the James boys out down the long trail They caught him in Minnesota along with the gang He died down in jail in the cell or the chain. ボブヤンガー、愛してたのに ジェームス兄弟と遠出をし ミネソタで一緒につかまった 牢獄で鎖に繋がれ死んだとさ (ジェームス兄弟は、有名なアウトロー) 6番 You loved Mister William Clarke Quantrill And his Civil War guerrillas in the Missouri hills He hit Lawrence Kansas and fought them still And when he rode out Two Hundred lay killed. ウィリアムクーククワントリルを愛してた 南北戦争のミネソタの丘 カンザスのローレンスを襲撃し進軍したが 撤退時には200名が戦死ときたもんだ 7番 They say could have, they whisper you might Have loved Frank James on a couple of nights He fought the Midland Railroad almost to death Then in Nineteen Fifteen Frank drawed his last breath. もしやそうだと噂だが フランクジェームスとは数夜の逢引 彼はミッドラッド鉄道と戦って 1915年に息絶えた (このフランクジェームスは5番にでてくる無法者ジェイムス兄弟の兄のほう。) 8番 They say it could be, they say maybe so, That you loved Jesse James that desperado, Jesse got married, had a wife and a son, Was shot down at home by the Ford brothers guns. またもやそうだと噂だが 無法者のジェシージェイムスとも恋仲だった ジェシーは妻子もちだったけど 自宅でフォードに撃ち殺された (義族として有名なジェシージェムスは7番のフォードの弟。フォード兄弟に裏切られて撃ち殺される。) コーラス Belle Starr, Belle Starr, your time's getting late, But how is Jim Younger, did you hear his fate?He was jailed and then pardoned for all he had done, And he blowed his own brains out in Nineteen and One. Eight men they say combed that black waving hair Eight men knew the feel of your dark velvet waist Eight men heard the sounds of your tan leather skirt Eight men heard the bark of the guns that you wore. Belle Starr, Belle Starr, tell me where have you gone Since old Oklahoma's sand hills you did roam? Is it Heaven's wide streets that you're tying your reins Or singlefooting somewhere below?
再度本編に戻る
Mama’s in the factory
She ain’t got no shoes
ママは工場で靴がない
Daddy’s in the alley
He’s lookin’ for foods
パパは路地裏で食料を探し
I’m in the kitchen
With the tombstone blues
おれはキッチンで墓石ブルースを歌う
最後のコーラス部は、一家の暮らしはそれどころではなく、父は失業、母は靴も履かずに工場で働き、私は、台所で食べるものもなく嘆くだけで「墓石のブルース」を歌ってるのだ
3,2番 犯された花嫁
2番の舞台はペニー・アーケード、いわゆるピンボールなどがならぶゲームセンターである。そこで、花嫁が、「強姦された」と叫んでる。連れて行かされてた先の医者で助言をうける
The hysterical bride in the penny arcade
Screaming she moans, “I’ve just been made”
ヒスレリー症の花嫁はゲームセンターでうめき叫んでる
「強姦されたの」
Then sends out for the doctor who pulls down the shade
Says, “My advice is to not let the boys in”
連れて行かれた先の医者が影で言った
「忠告だ、ガキとはヤルなってことよ」
Now the medicine man comes and he shuffles inside
He walks with a swagger and he says to the bride
薬屋が中に来て、上から目線で花嫁に近づいて言った
“Stop all this weeping, swallow your pride
You will not die, it’s not poison”
「泣くのはよせ。プライドは飲み下せ。
死にはしない。毒じゃないんだから」
つまり、こうなのだろう。新婦はお高く止まっていて、初夜の昨晩は意に沿わない性行為を新郎にされたことで、自尊心をきずつけられ、ゲームセンターでヒステリーを起こしのだ。新郎はまだオコチャマで、行為にたいして男としての優しさや分別がなかったのだろう。新婦のほうも結婚のイメージが先行し「うぶ」だったに違いない。事件の場所がペニーアーケードという「子供のあそぶ場所」であることが、そんなことをイメージさせる。
医者に担ぎ込まれても、世の中にそんなのに効く薬なんて存在しない。医者や薬屋のアドバイスも、これまた酷いものである。
まさに「どーでもいい話」である。
こんなゴタゴタが街では起こっていても、我が家の貧乏暮らしは関係なくいつものままだ。
Mama’s in the factory
She ain’t got no shoes
ママは工場で靴がない
Daddy’s in the alley
He’s lookin’ for foods
パパは路地裏で食料を探し
I’m in the kitchen
With the tombstone blues
おれはキッチンで墓石ブルースを歌う
4,3番 洗礼者ヨハネと司令官
3番は洗礼者ヨハネと最高司令官との会話である。
洗礼者ヨハネが泥棒を拷問したあとに最高司令官と会話をするのだが、ここに謎がでる。ヨハネは泥棒を拷問することがあったのかどうか、また最高司令官とはだれのことなのか?
Well, John the Baptist after torturing a thief
Looks up at his hero the Commander-in-Chief
さて、洗礼者ヨハネは泥棒を詰問したあとで
彼のヒーローの最高指揮官を見上げ
Saying, “Tell me great hero, but please make it brief
Is there a hole for me to get sick in?”
彼はいった「偉大な英雄よ、教えてくくださされ。
手短に。病気なのだが、穴あるのか」
The Commander-in-Chief answers him while chasing a fly
Saying, “Death to all those who would whimper and cry”
最高司令官はハエを追い払いながらいった
「めそめそ泣くすべてのものは死刑だ」
All dropping a barbell he points to the sky
Saying, “The sun’s not yellow it’s chicken”
彼はすべてのバーベルを落とし空を指差していった
「太陽は黄色ではない、臆病者」
Well, John the Baptist after torturing a thief
ヨハネはキリスト誕生以前から、腐敗するユダヤ教を改革しようと、洗礼という行為をして国中を正して回った。
西洋絵画の題材としてもよく描かれ、ダビンチの「岩窟の聖母」や「洗礼者ヨハネ」にも描かれている。ヨハネのアトリビュートは、杖と毛皮などである。また、モローやクラナッハなどの絵画のように、後にファムファタルのサロメによって殺され、お盆の上の生首として描かれることも多い。
聖書の記述によれば、ヨハネはサロメによってよろされたのでない。(サロメは名前すら出てこない)。ヨハネは、ヘテロ王(キリストの誕生前に2歳以下の赤子をすべて殺したというヘテロ王の息子で2代目の王ヘ)が、兄の妻(ヘロディア)と不倫後結婚したことを(ハムレットにも同様な状況があるが、神の教えに反する行為)を問い詰めたことで捕らえられる。そして、ヘロディアは連れ子の兄の娘であるサロメの踊りの褒美に、ヘテロ王にヨハネの首を所望したとされる。
つまり、ヨハネは、王(=最高司令官)を兄の嫁を盗んだ泥棒として攻め苛んだという話になる。それでは、歌では最高司令官は倫理にする行為をしたのだろう。そしてその会話の中身とはどんなことなのだろう。
この3番と4番はベトナム戦争のことを風刺しているという説が在る。その解釈にしたがって、中身を解釈してみたい。
Is there a hole for me to get sick in?”
「病気になる穴(奥の手)はありませんかね?」
つまり徴兵をさける手立てはないですかと尋ねている。
The Commander-in-Chief answers him while chasing a fly
Saying, “Death to all those who would whimper and cry”
その当時のベトナム戦争の最高司令監はウィリアム・チャイルズ・ウェストモーランド。
後にインタビューにこう答えている。
「ガンガン爆撃をすればベトナム戦争に勝てた。アジア人は子供みたいでどんなに些細な事でも口うるさく問題にする。赤ん坊は歩く前に這うことを学び歩けるようになってから初めて走ることが出来る。ベトナム人は背伸びしたがる子供だ。」「東洋人は西洋ほど、人命を重視しない。東洋では人命は十分にあって、その値段も安い。彼らの価値観として、命は重要ではない」(ウィキペディアより)
while chasing a fly
うるさいハエを追い払いながら=マスコミの取材攻勢を払い避けながら。
Saying, “Death to all those who would whimper and cry”
「弱腰のやつは死刑だ」というのだった。
上記のインタビューを聴けはその発言には納得である
All dropping a barbell he points to the sky
Saying, “The sun’s not yellow it’s chicken”
バーベルを落とすは、爆弾を落とすと解釈できる。当時英国の核爆弾の名前は「yellowSUN」と呼ばれていた。「太陽は黄色ではない」つまり、爆弾は核爆弾でないので弱腰になるなという意味だ。
そんな世界の大問題が起こっているのとは関係なく、我が家の家計は火の車である。
Mama’s in the factory
She ain’t got no shoes
ママは工場で靴がない
Daddy’s in the alley
He’s lookin’ for foods
パパは路地裏で食料を探し
I’m in the kitchen
With the tombstone blues
おれはキッチンで墓石ブルースを歌う
5,4番 ハメルーンとジプシーデイビー
4番も3番と同様にベトナム戦争のこととの解釈がある。
ベリシテの王が出てくる。ハメルーンの笛吹も出てきて若者を戦場に駆り立てるのであった。
The king of the Philistines his soldiers to save
Put jawbones on their tombstones and flatters their graves
ペリシテ人の王は兵士の骸骨を墓石に乗せて魂を救済する
Puts the pied pipers in prison and fattens the slaves
Then sends them out to the jungle
ハーメルンの笛吹を牢屋に入れて
奴隷たちを太らせた後
そいつらをジャングルに送り込む
Gypsy Davey with a blowtorch he burns out their camps
With his faithful slave Pedro behind him he tramps
ジプシー・デイヴィーはバーナーでキャンプを焼き尽くす
忠実な奴隷のペドロを従えうろつきまわる
With a fantastic collection of stamps
To win friends and influence his uncle
すんごいハンコの収集で
友人を得、叔父を誘惑する
The king of the Philistines his soldiers to save
ペリシテ人とは紀元前のカナンの地に住んでいた好戦的な外来の種族。パレスチナの語源とされ、無学で無趣味な人達のたとえとしても使われる。The king of the Philistinesとは南ベトナム解放戦線(ベトコン)のホーチミンのではないだろうか
Put jawbones on their tombstones and flatters their graves
ホーチミンはインドシナ戦争のときのように全面にでてはこないが、死んだ兵士達を憂い、先頭に立つ兵士に激をとばした。骸骨を並べるのは、カンボジアのポルポトとの混同かもしれない。
Puts the pied pipers in prison and fattens the slaves
ハメルーンの笛吹はグリム童話で有名だが、1284年6月26日に実際に起こった出来事である。笛を吹いて130人もの子どもたちをたぶらかし、さらっていった。歌では笛吹き男達(複数形)は牢獄におくりこまれ、奴隷を太らせられる。そしてベトナムのジャングルに兵士として送り込む。つまり、政府や最高司令官たちは戦争に反対する人々を逮捕し、懐柔し、ベトナムに送るこむのだ。
Gypsy Davey with a blowtorch he burns out their camps
ジブシーデイビーはスコットランドの伝説で、裕福な貴婦人が、ジプシーの一段と一緒に生活をすてて逃げていくという話で、バラッドになっている。
さまざまな歌手が取り上げていが、ディランも聴いただろウッディガスリーのバージョンを参考としたい。ディランもファースト・アルバムで取り上げている。
脱線してまた歌詞を紹介する。
It was late last night
When my lord came in
It was late last night
When the boss come home
Askin' 'bout his lady
The only answer that he got
She was gone with the Gypsy Davey
She's a-gone with the Gypsy Dave
昨夜のこと主人が来て
婦人はどこかと尋ねれば
ジプシーデービーと行っちゃった
との返事
Call saddled for me my buck-skin horse
And 100 dollar saddle
Point out to me their wagon tracks
After them I'll travel
And after them I'll ride
馬にバックスキンの蔵をつけ
100ドルの蔵だ
やつらの荷馬車をみつけるため
旅立つんだ
やつらを追いかける
Well he headin' down the road
To the midnight moon
He saw the camp-fire a-gleamin'
He heard thе sound of the big guitar
And voice of the gypsy singin'
That song of thе Gypsy Dave
深夜の月へと向かっていくと
焚き火の火が光ってる
ギターの音や歌が聞こえる
歌ってるのはジプシーデイビー
And it there by the night of the camplin' fire
Saw her fair face beamin'
Her heart in tune to the big guitar
And sound of the gypsy singin'
That song of the Gypsy Dave
焚き火の火に照らされるのは
まさしく彼女の素顔
ギターの音とジプシーの歌に見さられてる
その歌声はジプシーデイビー
Have you forsaken your house and home
Have you forsaken your baby
Have you forsaken your husband dear
To go with the Gypsy Davey
To go with the Gypsy Dave
家と家庭を捨てたのか?
かわいい我が子を捨てたのか
ジプシーデビーと行くために
Yes I've forsaken my husband dear
To go with the Gypsy Davey
And I've forsaken my mansion high
But not my blue-eyed baby
But not my blue-eyed babe
そうよ夫を捨てたのよ
ジプシーデビーと行くために
豪邸さえも捨てたわよ
でも青い目の子は違うわよ
She turned to go away from him
And go with the Gypsy Davey
But the tears come a-tricklin' down her cheeks
To think of her blue-eyed baby
To go with the blue-eyed babe
彼女は彼から逃げ出した
ジブシーデビーと行くために
けれど、涙が頬伝う
青い目の我が子を思うたび
青い目の我が子と行くために
Take off, take off your buck-skin gloves
Made of Spanish leather
And give to me your lilly-white hand
And we'll ride home together
And we'll ride home again
鹿の手袋を脱ぎすてて
スペイン製を脱ぎ捨てて
その百合のごとくに白い手を
携え一緒にいえに帰ろうと
また家に帰ろうと
I'll not take off my buck-skin gloves
Made of Spanish leather
I'll go on my way from day to day
To be with the Gypsy Davey
To go with the Gypsy Dave
Sing with the Gypsy Davey
Go with the Gypsy Dave
いいえ私は脱ぎません
スペイン産を脱ぎません
ジプシーデビーと共に行く
ジプシーデビーと共に歌い
ジプシーデビーと共に行く
Gypsy Davey with a blowtorch he burns out their camps
ジプシーデイビーの歌ではキャンプの炎が重要な役割を果たしているので、それにかけてベトナムの農村で米兵が民家をバーナーで焼きはらうということの歌詞となったのであろう
With his faithful slave Pedro behind him he tramps
ここにペドロが出てくる。ペドロはペーターのポルトガル、スペイン語表記である、奴隷のペドロとは誰のことを指すのだろう。ピーターで思い浮かぶのはPPMのピーターヤーロウだが、戦争反対派である忠実な奴隷ではない。
となると、最初の解釈は間違いだったことに気づく。ジプシーレビィーは自分のキャンプ=米軍の野営地に火を放ったのである。つまり戦争に反対したのである。戦争反対を歌うPPMを後ろ建てとてしている。
With a fantastic collection of stamps
To win friends and influence his uncle
そのながれ素晴らしいスタンプの収集は戦争反対の署名ではないかと思われる。反対の有志を集め、親の世代まで影響をおよぼしている。
街の外ではそんな大問題がおこっているのに、我が家の暮らしは依然としてよくならない。
Mama’s in the factory
She ain’t got no shoes
ママは工場で靴がない
Daddy’s in the alley
He’s lookin’ for foods
パパは路地裏で食料を探し
I’m in the kitchen
With the tombstone blues
おれはキッチンで墓石ブルースを歌う
6,5番 デミル監督の新作提案
旧約聖書の一節で1949年のハリウッド歴史大作映画になった「サムソンとデリラ」のデリラが登場する。そしてその監督セシル・B・デミルの名前も上がっている。またサッチモの歌で有名な、ブラザービルという古い無声映画も登場する。映画関連が主題のようだ。しかしそれらもやはり街でおこっている「どーでもいいこと」である。
The geometry of innocence flesh on the bone
Causes Galileo’s math book to get thrown
無垢な骨つき肉の幾何学のせいで
ガリレオの数学本が投げ捨てられる
At Delilah who sits worthlessly alone
But the tears on her cheeks are from laughter
役立たずで孤独に座るデリラに
だが彼女の頬の涙は笑い泣き
Now I wish I could give Brother Bill his great thrill
I would set him in chains at the top of the hill
今、ブラザー・ビルに素晴らしいスリルを与えられたらなあ
丘の頂上で彼を鎖に繋いでおくつもりだよ
Then send out for some pillars and Cecil B. DeMille
He could die happily ever after
何本かの柱とセシル・B・デミルも取りに行かせて
彼は幸福に末長く死ぬことができたんだ
The geometry of innocence flesh on the bone
Causes Galileo’s math book to get thrown
これは肉屋の店先で起こった事件なのだろうか?それとも無垢な骨付き肉は何かのたとえなのか、なぜ、ガリレオの本が投げ捨てられるのだろうか?ガリレオは地動説を唱えたので有名だが、近代的数理力学を完成した。しかし、ニュートンの運動方程式によって発展的に否定される。しかし、ニュートンも古典的、アインシュタインらの量子力学の世界がひろがっている。
骨付き肉の形状は複雑で計算できにくい形をしているので、古い数学理論では計算不可能である。
At Delilah who sits worthlessly alone
But the tears on her cheeks are from laughter
ガリレオの本の投げ捨てられ先はデリラの元だった。
ここにデリアが登場してくるが、彼女は、旧約聖書にでてくる。ペリシテ人にたぶらかされ、愛人であるサムソンを裏切り、彼の能力の源である髪の毛を剃り、その身をペリシテ人に売り渡す。デリラとの名には、無能で精神的に弱い人という意味が内包されてる。歌詞のデリアとは誰で、なぜ本を投げ捨てられたのか、また座っているだけで泣き笑いをすのもなぜなのだろう。
前の文節からつなげて単純に解釈するとこうなる。
肉屋の店先で、骨付き肉の大きさや価格の件で客が怒り出す、いわば今流行のカスハラだ。その不満を店員である気の弱いデリアにぶちまけたので、意味も分からずデリアはただただ座って笑い泣きをするだけだった。ということないなる。
Now I wish I could give Brother Bill his great thrill
I would set him in chains at the top of the hill
ブラザービルは1913年のアメリカの無声映画で曲は1939年にサッチモことルイアームストロングが作詞作曲、ライブでも演奏され、1960年のピングクロスビーとサッチモの共演アルバムにも収録された。
歌詞のほうはたわいないもので、兄のビルと鹿狩りに言ったが丘の上で熊に出会って逃げ出すというもの。熊が来ても逃げられないようにビル兄さんをくさりで繋いでおけば、その恐怖はいかほどかと思う。
丘の上のスリルの表現は、「悲しみは果てしなく」にも出てくる。性的なニュアンスも含まれていると思われる。
Then send out for some pillars and Cecil B. DeMille
He could die happily ever after
柱は大作主義のデミル監督の画面に出てる、壮大な宮殿の支柱を思い起こさせる。つまり、サッチモの歌のように丘の上で熊に襲われる話をデミル監督に再度メガホンをとってもらって大作映画に作ってもらえば、「みんな末永く幸せにくくらせましたとさ」という終わりかたのかわりに「みんな末永く死にました」とさというナンセンスな映画を期待するということだ。
最初の歌詞の物理学の進歩を匂わす表現からは1913年の無声映画の時代から何年もたって科学が進歩して大作映画となるに違いないというようなニュアンスも感じられる。
サッチモもピンククロスビーもハリウッドも大金を儲けて裕福な暮らしだが、そんなこととは関係なく、我が家の日々の暮らしは悲惨なのだ。
Mama’s in the factory
She ain’t got no shoes
ママは工場で靴がない
Daddy’s in the alley
He’s lookin’ for foods
パパは路地裏で食料を探し
I’m in the kitchen
With the tombstone blues
おれはキッチンで墓石ブルースを歌う
7、6番 シンプルで心にしみる音楽を
6番はこれでと違ってわかりやすい。
ベートーベンや古いブルースシンガーのマレイニーが登場する。音楽に関係しそうは話である。そして国立銀行の財テクプログラムが突如登場するが、そんなものが無くても、俺のシンプルな歌で君の一生をつつがなくすごせるような事になったらすてきなのにという
Where Ma Raney and Beethoven once unwrapped their bed roll
Tuba players now rehearse around the flagpole
マ・レイニーとベートーベンがかつて寝袋を広げ他場所で
チューバ奏者は旗竿付近でリハーサル
And the National Bank at a profit sells road maps for the soul
To the old folks home and the college
国立銀行は魂に向けた工程表を老人ホームと大学に販売し稼いでる
Now I wish I could write you a melody so plain
That could hold you dear lady from going insane
君ためにシンプルなメロディーを書けたらなあ
君を非常識なものからまもってあげられるのに
That could ease you and cool you and cease the pain
Of your useless and pointless knowledge
君を慰め、無益で無意味な知識の苦痛の癒やすようなさ
ベートーベンの曲は複雑で寝袋を持ち込んで徹夜で練習するほど難しい。チューバの音は大きいので外で練習しなければならないほどだ。そんなではなく、シンプルで心に染み入る音楽さえあったら、将来の不安を解消する財テクプランなどいらないはずなのだ。
そんな想いと裏腹に、現実の私はキッチンで「墓場のブルース」を歌ってるだけなんだ。幸せを届け、苦難をしりぞけ、苦痛を癒すシンプルな曲を書いてうたえたらよかったのにと嘆くだけである、
Mama’s in the factory
She ain’t got no shoes
ママは工場で靴がない
Daddy’s in the alley
He’s lookin’ for foods
パパは路地裏で食料を探し
I’m in the kitchen
With the tombstone blues
おれはキッチンで墓石ブルースを歌う