夏のツアー 同一カード2連戦の功罪

毎週末、熱戦つづきで寝不足を引き置きしてくれた2024年夏の欧州列強国の遠征がほぼ終息を迎えつつ有る。

イタリアはジャパン戦を残しているし、スコットランドはまだまだ米大陸のチリ、ウルグアイの南米ツアーが残っている、とは言っても下記のように主要国はほぼ戦いを終えた状態である。

アイルランドの南ア遠征は1勝1敗
イングランドのニュージーランド遠征は2連敗
ウェールズのオーストラリア遠征も2連敗
フランスのアルゼンチン遠征は1勝1敗

主要国はこのような同一カード2連戦を行うことになった。

昨年まではツアーといえば、テストマッチ3試合ほどが組まれて、その間に各国のクラブチームとのゲームも入れるようなのんびりしたスケジュールであったが、この夏はちょっと違っている。

この「2連戦」というが、コアなラグビーファンには、なんともビミョーに面白いのだ。

2つのゲームの間は、たった1週間。
この短い時間に両チームの間で、見えないところで、見えるところで、濃密で知的な戦いが繰り広げられるのだ。

試合数が多いとそうはならない、まだまだ余裕をもって、ゆっくり交流などできる。買い物や観光さえできる。

2試合だからこそ、監督を始めチームスタップは、短時間に評価し、分析し、対応策を絞り、プログラムし、チームに、落とし込み、それを遂行させなけれならない。

しかし、そんな濃密な知的争いであっても、ファンの間では、チームの中でどんな事になっている知ることができない。想像するしかない。

そうなると、コアなファンになればなるほど、まるで自分が監督になったような気分であれこれ考え始める。

前のゲームを見返したり、次の対応策を考え、次のゲームのスターティングメンバーを想像したりする。

そして、PUBにおいてはそんな輩があつまっては自説を語り合う。そこではパインドグラスを間に挟んで、様々な身勝手な見解が飛び交うことになるのだが、その間もその分のビールがそれだけ消費されることになるのだ。どんどん楽しみや期待が盛り上がる。

そして、チームの実際の対応策が垣間見えるのは、キックオフ約48時間前に発表になるメンバー発表である。そこまではあーだこーだが応酬される。しかし、木曜日になり待ちに待ったメンバー発表を受けても、どんなことが落とし込まれたのか実際はわからない。そのことが更に想像力を膨らし、期待を膨らます。

すべてが解るのは2連戦がすべておわったあとである。

1戦目で負けても、勝ってもうまく行かなくても、1週間の対応策がうまくいき、2戦目で盛り返すことに成功したチームこそが、もっとも素晴らしい。そこにチームの知的水準の高さがあるというものだ。

先週末のアイルランドー南アのゲームはそれに当たる。
1戦目と2戦目でそれぞれのチームがどう考えどう対応したかのであろうか。

南アは競り勝った1戦目と全く同じメンバーで2戦目を対応した。アイルランドはハーフをコーナーマレーに替えて来た。南アの前に出る分厚いディフェンスにキックで対応しようする作戦が見え見えである。

しかし、動かないように見えた南アは実は戦い方を変えてきたた。ポラードのPGで確実に点数を重ねるというものである。

実際のゲームはといえば、それぞれの対策はそれぞれ効果的に機能して、やはり拮抗したゲーム展開になる。すさまじい肉弾戦で、流血がおこり、怪我や脳震盪による退場者もでる。

アイルランドにより、コナーマレー先発の作戦も南アのディフェンスを揺るがすことはできても、なかなか破りきれない。そこでアイルランドはBプランであるトライでなく飛び道具の作戦に転じたのだった。

最終的にはドロップゴールで勝敗を分けることになった。

世界ランキング1位と2位の2連戦は、見ごたえがあるゲームだった。

テストマッチではないが、同じ様に今年のマオリ対ジャパンの2連戦のエディチームの対応は素晴らしかった。エディさんはやはり、ラグビーの知的水準群において群を抜く存在であると評価できる。

考えてみれば、エディジャパンは、11年前のウェールズ戦2連戦もそうだっし、その次の年のマオリ戦2連戦も2試合目に勝利を獲得している。

できることなら、今週末がジャパンとジョージア2戦目であったら、どんなだったろう。エディさんは今度はどんな対策を打ってきたであろうか。斉藤や下川がいなくても、確実にジョージアの息の根をとめるようなゲームを見ることができただろうと想像できる。

今後のジャパンのテストマッチはできることなら同一カードの2連戦のスケジュールになることを切に希望する。

今回のテストマッチ2連戦により、もう1試合は、ティア2と呼ばれる国ともゲームを組むような工夫がなされた。
この傾向は世界的なラグビーの普及や発展にも非常に有効なしかけで喜ばしい。

たとえば南アはこのあとポルトガル戦があり、オールブラックスはフィジーを迎えるし、オーストラリアはジョージアを迎える。そして、フランスはアルゼンチン戦の1週間の間になんと隣国のウルグアイとの1試合を消化している。

ハードで充実のスケジュールである。

しかしながら、これでは、昔のようなのんびりしたツアーのような、試合の間の地元との交流やイベントへの参加などを通じた活動ができにくくなっているという弊害が有る。

ますますゲームの勝敗だけにフォーカスし、プロ化がエスカレートしていくことことを危惧する考えもあるだろう。選手やスタップの健康や、心労の負担の大きさを心配する声もあるだろう。勝ち負けにそこまでこだわらくても、交流やチームの結束力や友情が深まればそのほうがよっぽど価値があるという指摘も有るだろう。

ぜひともラグビーのファンを堪能させるピリピリしたテストマッチが終わったあとは、すぐに帰国をするのではなく、ツアーのもつもう一つの価値の部分が発揮させるようにのぞみたい。ツアー先で2−3日の観光や食事、地元の子どもたちとの交流、その土地の文化に触れるなど、リカバリーを兼ねたすこしゆっくりした交流の時間を設けるようにしてもらいたい。

(新幹線のスピードに度肝をぬかれたマオリの面々はラグビー以外でもいい経験をした。ジョージアの面々も渋谷での買い物ができたようである。でも、トムカリーは日本で念願の猫カフェにいけたのであろうか?)

 

 

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