トップリーグ ミスマッチの是非

トップリーグ第3節が終わりました
第3節は、なんと13日の土曜日の午後だけで8ゲームが全て消化されました(しかも全てほぼ同時間)。日本列島、北は釜石南は大分までです。
こうなると、いかに最近はスタンダードになった感のあるオンデマンド配信という技術を駆使したとしても、全てをチェックすることは不可能になります。

それでも第3節を終わって、見えてきたことが何点かあります。

一つ目は、上位グループと下位グループの力の差です。30点近くの差がついてしまう、いわゆる「ミスマッチ」が多発しています。ただこれは今期に限ったことではないのですが、今季は特に目立ちます。

第一節では

シャイニングアークス VS  ヒート 41−13
ワイルドナイツ VS ブラックラムズ  55ー14
スピアーズ VS  宗方ブルース 43ー17
相模原ダイナボアーズ VS サンゴリアス 7−75
日野レッドドルフィンズ VS ジュビロ 17ー52

第二節では

ブレイブルーパス VS  ブラックラムス 7−39
ワイルドナイツ VS  日野レッドドルフィンズ 60−12
スティーラーズ VS イーグルス 73−10

第三節では
グリーンロケッツVS ジュビロ 31−59
相模原ダイナボアーズ VS ブレイブルーパス 7−58
サンゴリアス VS   宗方ブルース 75−10
スティーラーズ VS 日野レッドドルフィンズ 52−7
イーグルス VS ワイルドナイツ  0−47
ヴェルブリッツ VS ヒート 45−3

たとえ大差で負けていても、最後まで食らいついてやろうとする気概が感じられ、さらに勝っている方でも「1トライでもさせてたまるものか」と意地を見せる場面もあり、これはこれでラグビー的には意義のあることなのだと思います。熱心なサポーターや目の越えたラグビー通にとっては、そんなゲームでもその中にラグビーの魅力を見つけることはできます。

しかし、一般的には大差のついたゲームは、早々と勝敗が決してしまい、興味を失います。大差での敗戦が続いてしまえば、たとえ贔屓のチームだったとしても応援の甲斐が失せ、潮が引くようにファンの足が遠のいてしまうのも致し方ありません。(同じことは海の向こうの6ネイション、日本の対抗戦大学ラグビーでも起こっています。)

トップリーグのミスマッチが多い原因として、チーム数の肥大化にあるのは間違いありません。チームの親会社の資金力や支援体制の差が歴然となっています。今年はコロナ対策もしなければならず、その差がさらに増長されてしまったのだと思われます。
親企業が資金力があれば、国内海外からのスーパースターを簡単に集められます。世界中から実績のある名コーチ名監督を呼んで来れます。万全なコロナ対策もできます。新卒の有名選手も上位チームへの加入を希望し、ますます上位と下位の実力差が出てきてしまいます。選手層の厚みの違いは歴然です。下位チームは見た目は頭数を揃えた様に見えても毎週ゲームで3節ともなれば、選手層の薄さは隠し様がありません。

インフラ面でも問題があります。
一度に8ゲームも全国で行うには、現在の日本にはインフラが整っていません。

一つがスタジアムの問題です。8ゲームも同時に行うだけのグランドが日本にはまだ揃っていません。秩父宮、花園意外にも、釜石、仙台、熊谷、福岡、磐田、大分など地方に素晴らしいスタジアムはあることはあるのですが8カ所を同時に確保できません。陸上トラックを併設したスタジアムは全くフットボール向きでありません。インゴールが狭すぎです。インゴールの人工芝と背の低いゴールポストはいかにも貧相です。観客とピッチが遠すぎます。またスタンドの傾斜が緩やかで、全体を見渡せる様な席がありません。一部には陸上トラックをシートで覆って隠したり、スポンサーの看板の裏に砂かぶり席を設けるなどの工夫が見受けられ、問題意識を持った関係者の知恵や努力には敬意を評したいとも思います。

もう一つは大会運営のスタップの人材不足です。
レフリングにもばらつきがあります。中の数名のレフリングには素晴らしいものがることは事実ですが、8試合も行うとばらつきの幅が大きくなります。特に違和感を生じさせているのが、TMOの扱いです。アシスタントレフリーやTMO担当に優秀な人材を回せていません。ゲームの流れを阻害する様なTMOの多発は問題です。全員が世界基準のレフリングを理解し、それに慣れている訳ではないので、確認する場所の特定に手間取ってしまいますし、判定にも疑問が残ります。

さらに笑ってしまう様な滑稽さは、ストレッチャーを持ってくる救護班の顔ぶれです。その役はほとんどが60歳以上の協会関係とみられ、コロナ対策で割烹着の様な物を着せられ、100キロを超す大男を運び出す様は、それはそれは痛々しいほどです。(実は、筆者も齢60を越えた身ではありますが、この役が何度か回ってきたことがあります。ゲーム中ずっとフェイスガード、手袋、割烹着姿で最前列に待機していなければならないのは、それは辛いものがあります)

新リーグ構想では上位12チームに絞ることが決まっています。チーム数を絞ることには賛成します。私にはただこれでもまだ多いと思います。
新リーグ構想は暗礁に乗り上げかかってしまっています。清宮副会長がぶち上げたプロリーグ構想は最初は勢いがあったのですが、多くのチームの賛同を得ることが是きず清宮も11月に新リーグ準備室長を辞任、谷口真美氏がその後をついで1月には新リーグの概要が発表されましたが、そこにはプロ化の文字は全く見受けられませんでした。さらに2月になってそのあとを継いだ谷口真美氏も各チームの不満を抑えきれずに、ついに辞任してしまいました。12チーム絞る案に対し多くの反対が出たということです。そして現在はいつも難しい場面で難しいことを押し付けられてしまう岩渕専務理事がその長になりました。

完全プロ化の道、完全フランチャイズの道、ラグビーの健全な発展の道のりはさらに険しくなったと言わざるをえません。

コロナ時代の中でのプロスポーツのあり方もまた、少しは見直す必要があるでしょう。特に1週間に1度だけ、さらに15人(23人)で行うラグビーは他のスポーツと比べても、チームの経営が難しいのは間違いありません。チケットからの収入だけに頼っての経営は成り立ちません。経営を成り立たせるために多くの工夫が必要になってきます。プロ化と言っても7番大切なのが、球団経営のためのプロ化です。

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