ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ
ラグビーの母国英国では、4年に一回、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドでベントメンバーを組み南半球の3カ国の内一つに遠征します。このチームはブリティッシュ&アイリッシュライオンズと呼ばれ、W杯が始まるは、これが世界のラグビーの最大のイベントでした。何しろ南半球の国にとっては12年に1回しか回ってこないのですから
1974年は南アフリカへ遠征することになっていました。
このころはウェールズが最強で、ガレスエドワーズ、Pベネット、J Jウイリアムス、J P Rウイリアムなど名選手が揃っていました。
南アフリカへの不安
しかし当時の南アフリカはアパルトヘイトの措置から国際ゲームから遠ざかっており全く情報がありません。
ニュージーランドやオーストラリアが遠征したという話はありましたが、彼らは、「非常に体がでかく、フィジカルも強く荒っぽい」という情報だけが流れて来ます。
ライオンズは結成しましたが、急増チームです。南アフリカの怖いイメージがあまりにも強く、練習にもなかなか身が入りません。ついに何名かは命の危険を感じて代表を辞退することになりました。
打開のための奇策
「このままではいかん」
キャプテンのマグブライト主将と副団長のミラーはビールを飲みながら策を練ります。2人は好戦的な北アイルランドベルファストで同じチームでした。スター軍団のウェールズのラグビーは知的で洗練されてはいましたが、弱気な面があるのが2人にはどうしても納得できません。
そしてついにその策を見つけました。
その策をチームのみんなに披露します。それはこういうものでした。
「仲間の一人でも南アの選手から暴力を受けたら、キャプテンがコールをする。そしたら全員が自分の一番近くの南アの選手なら誰でも良いから殴りかかれ。」
「意図することは”one in, all in”だ」
「一人がやられたらみんなで守る。どうだこれで南アなんか怖くないだろう」
そしてそのコールは「99」と決めました。
チームメンバー以外には内緒のサインです。
当時は今のようにビデオレフリーもないので、当然荒っぽいプレーもありました。また全員が同時に殴りかかれば、誰がはじめにやったかも特定できずレフリーも試合を続行するしかないだろうという読みもありました。
いまではコンプライアンス上考えられないような、PTAの親御さんが見たら大問題で糾弾されるようなことが、当時は実際に行われていました。(良い子の皆さん真似だけはしないように、ラグビーは紳士のスポーツです。)
出発前に英国内の秘密練習で何度か練習して見ました。
するとチーム内の士気も上がり、みるみるチーム力は上昇、自信や活力もみなぎって来ます。チームは一丸となって戦う集団に変わって来ました。
遠征と奇策の実行
そして南アフリカに遠征します。
そうすると連戦連勝、2度のテストマッチも難なく勝利し17連勝のライオンズは問題の第三テストを迎えます。
そして問題の第三テストマッチです、この試合で実際に コール99が使われました。前半に1回、後半に1回です。キャプテンが99とコールをすると全員が近くの南アの選手に殴りかかります。
JPRウイリアムスはフルバックだったのでコールがかかった時には密集から遠くにいました。しかし、当初の取り決め通り、仲間のためと思い大急ぎで、相手を見つけます、そして全速力で密集に殴り込みます。この一部始終はいまではYouTubeでも見ることができます。
実際にこのサインを使うまでもなく、士気を高めるためにだけも十分効果のある作戦ではなかったかと思います。
実際にこれが使われたのは残念です。
このツアーはライオンズの最強のツアーと称されますが、一方で、最悪の暴力ツアーだったとも言われています。
この話を信じるか信じないかはあなた次第です。