日本経済、主要産業の推移とラグビー

東芝が英国のファンドに買い取られ、上場を取り消す方向にあるとの報道が流れました。今季トップリーグでもなかなか結果を残せないブレイブルーパスがどうなるかも心配です。

東芝は数年前の経営難からでざまざまな事業を切り売りしており、寂しいことです。前回の経営難の時に、ブレイブルーパスも一度は解散かとの噂も流れましたが、ドラマノーサイドゲームのモデルとなるほどに持ち直していました。しかしラグビーの方も一昨年から満足のいく結果も出せていなく、今季も2勝4敗とかつての力強い姿は見られません。

親会社の経営状態次第で、チームの力が変わってしまうのは常ですが、親会社の経営状態も、所属する産業そのものの浮き沈みに左右されてしまいます。

そこで、戦後から日本の経済発展を支えた産業と社会人ラグビーの浮き沈みを見返してみました。

1、戦後復興は「傾斜生産方式」で鉄と石炭

戦後の復興期は炭鉱が花形産業でした。
昭和24年の第一回社会人大会は、わずか3チームの出場で、九州の配炭公団が優勝しています。他の2チームは近鉄となんと東芝です。
北海道の住友奔別などの炭鉱チームも社会人大会に参加しています。

続いてしばらくは鉄の時代が訪れます。鉄は高度経済成長を支えた基盤でした。八幡製鉄が、昭和26年から昭和41年までに12回優勝しています。新日鐵室蘭、釜石の前身の富士鉄、九州の日新製鋼なども常連です。新日鐵室蘭もありました、

戦後復興の政策「傾斜生産方式」の採用で、石炭と鉄に重点的に資金の投入ななされました。

2、鉄道からモータリゼーション

その頃の八幡製鉄のライバルは近鉄でした。この頃近鉄だけでなく大鉄東横盛鉄などの多くの鉄道会社も社会人大会に参加しています。

その後日本も鉄道からモータリゼーションの波が訪れます。トヨタ自工三菱自工京都が69年から78年の10年間に、それぞれ2度優勝をしています。その頃は三菱水島本田技研東洋工業(マツダ)も全国大会に出ています。オフィスでは複写機が導入され始めリコーは当時は最先端のオフィスオートメーションの会社でした。早稲田や法政からのスター選手を集めて2連覇も果たしています。

そのころは、公務員のチームもたくさんありました。全国からたくさんの自衛隊のチームがありました、中でも松戸自衛隊は常連でした京都市役所大阪府警もそうです。警視庁も全国大会に出ています。大阪府警は昭和から平成になっても社会人大会の常連でした、秋田市役所も昭和の終わり頃まで強豪でした。日本代表梶原のいた山梨教員も忘れてはなりません。関東社会人では習志野自衛隊も覚えています

3、時代の流れに逆らい続けた釜石

鉄の時代はその後、昭和54年ごろから新日鐵釜石に受け継がれます。新日鐵釜石は鉄の時代の衰退の流れに逆らって結果を残し続けた特別な存在です。ラグビーは北の港町の希望の光でした。鉄鋼の高炉の火が消えても、ラグビーの火をたやしませんでした。

この頃頭角を表してきたのが、電機メーカー東京三洋と、東芝府中でした。横河電機日本電気も参入してきます。東芝は東芝青梅もラグビー チームがありました。日本は電化製品で暮らしは豊かになったのです。時代は鉄鋼の時代を終えて、既に電気産業の時代に変わっていました。

3、バブルと新しい会社の姿、神戸製鋼

そして昭和の鉄の時代は平成の神戸製鋼に引き継がれます。鉄といっても、神戸製鋼は鉄鋼の比率が最も低い鉄鋼会社であることが、今でも順調な経営を続けている理由です。
このライバルが常に東京三洋(現在のパナソニック)でした。何度も神戸に挑戦し名勝負を繰り広げますが、跳ね返されています。

その間に日本はバブルの絶頂を迎えます。バブルと言えばファッションです。ファッション関連ワールドが関西の勇として頭角を表しました。伊勢丹が89年に一部昇格して社会人大会をかき回したのもこの時代でした。大スターの吉田義人も伊勢丹でした。バブル崩壊後もワールドや伊勢丹のラグビーは何年かは力を継続しました。

4、トップリーグ 生き残ったTOPの者のリーグ

その後オープン化の時代となりトップリーグ が開幕します。
初年度は鉄鋼で生き残った神戸製鋼が優勝しましたが、その後は東芝三洋電機サントリーが常に上位を争っています。三洋電機は電気業界の不況で途中からパナソニックに買収さてジャージは赤から青に変わりましたが、現在ではその力はより向上しています。業界でうまく生き残るのはそのトップの企業だけという訳なのでしょうか。その意味では三洋電機はパナソニックに買収されて大正解でした。

同じように自動車業界のトップのトヨタは現在まで元気一杯で、関連会社でトヨタの車も製造している豊田自動織機も同様に今季トップチャレンジ優勝を果たしました。一方、自動車業界3位のホンダは入れ替え戦をうろうろしています。

5、IT産業の重心が通信へ移行

パソコン時代の流れからNECの他にもIBMがトップリーグ参入を果たしたことがあります。IBMのパソコンはレノボになり、NECとも合併し、現在では富士通とも合併しています。IBMのラグビー部は親会社が変わり現在はビックブルーでトップイースト所属です。一方NECトップリーグに残留していますはこのところ元気がなく今季まだ勝ち星がありません。

東芝は常に優勝を争う力がありましたが、会社の経営が揺らいでからは、9位6位11位と低迷しています。ダイナブックのパソコン部門も切り離されて、それはシャープの傘下にあります。

リコーは以前のライバルの旭光学のペンタックスを買収して、現在のジャージのロゴにはペンタックスとあります。(キャノンとの一戦はOAダービーですが、カメラ業界ダービーでもあります)。でも輝かしい過去の歴史を持つリコーも今季の成績は寂しい限りです。

トップリーグでは長らく低迷していた神戸製鋼が一昨年度復活しました。神戸製鋼は鉄だけに拘らず、企業経営としても多角化でリスク分散している証です。

平成から令和になると花形産業である通信関連のチームが力を伸ばしてきています。NTTCOMと、ドコモです。静かで知的なレイドローと、熱く激しいTJという全く異なった世界的SHを高額でそれぞれ加入させました。特に今季のドコモの躍進は素晴らしいです。TJが火をつけたといって過言ではありません。

6、安定した力の維持の方法

このように主要産業の浮き沈みに影響を受けてきた日本のラグビー界ですが食品業界は景気の動向に左右されない安定感があります。サントリーが常にトップを維持しているのにはそういう訳がありそうです。

もし東芝に何か起きるならば、ぜひサンゴリアスと合併して、府中調布ブレイイブゴリアスになってもらいたいと思います。

地元に根付いて、クラブとして根付くことができれば、安定したチーム経営ができるのではないかと思います。複数のメインスポンサーをつけることも可能になります。その意味では日野、釜石、宗方サニックス、三菱相模原などの取組は交換が持てます。今季絶好調のパナソニックは拠点を熊谷に移して、地元に密着した活動をしています。

産業界の移り変わりだけで説明できないのが、今季のクボタの躍進ぶりです。マルコムマークスなど南アの人材を随所に配置して、チームカラーも変わりました。船橋市と江戸川区に根を張ろうという意思や、オレンジのベースボールシャツの無料配布などファンサービスも充実し、既に時代を先どりしているのかもしれません。

勝手なことを書いていますが、東芝の今後の動向は心配です。東芝は財界では土光敏夫、石橋泰造など名物の経団連トップの財界人を輩出しています。ラグビー界でも町田氏、岡氏などラグビー協会の会長を輩出しています。日本ラグビー界の知の巨人であった大西鐡之助も東芝出身です。現在はリーチマイケルも頑張っています。名門東芝の時代は変わりその火は消えてしまうのでしょうか、

 

 

 

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